15の具体例で、中間値の定理を理解しよう!

  • まえがき

みなさまは、「中間値の定理」という定理をご存知でしょうか?

指導要領上では、高校3年生の数学で、それも理系選択者しか習わない定理ですので、存じ得ないとしても無理はありません。

中間値の定理とは以下のような定理です。

関数f(x)が閉区間[a,b]ついて連続ならば、閉区間[f(a),f(b)]中にある実数cについて、

 

f(t)=c

 

となる、実数tが閉区間[a,b]中に1つ以上存在する

な〜にを言っているんだ、と思うかもしれませんが、以下のように細かく分けて考えれば難しくありません。

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難しくありません、とはいうものの「閉区間[a,b]」も高校数学範囲なんですよね。aからbという意味です。

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「じゃあa≦x≦bでいいじゃん」と思う方も多いと思いますが[a,b]という書き方をすると、aとbの大小関係がどっちでも良くなるという長所があります。それを活かして、f(a)>f(b)にしています。

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このとき、[f(a),f(b)]中にcがあったらそりゃf(x)のグラフがcのとこ通るわな、つまりf(x)=cになるわな、ということ、これが中間値の定理です。

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ただし、このようにf(x)のグラフがワープした場合cを通らないこともあります。だから、定理でf(x)は連続、としているわけです*1

ね?簡単でしょう?

 

そうでもない、という方も多いでしょうし、私がピンクの裏紙に書いてしまったために何かエッチな気分になって終わったという読者の方もいるでしょう。ということで、そんな皆様のために、今日は中間値の定理を理解しやすくする例を15個持ってきました。15個もあれば1個くらいしっくりくるはずですね。是非とも、皆様の中間値の定理ライフに貢献できれば、と思います。

 

 

というわけで、以下本編です。

  • 赤道上に、「地球の裏側と気温が等しい点」が存在する

中間値の定理の応用として、中間値の定理界ではそこそこ有名な例です。下の図をもとに考えましょう。

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まず、赤道上にテキトーに点Aを取ります。そして、Aの裏側をBとします。

このとき、点AとBの温度が等しければ、話は早いのですが、まあそうはいかないでしょう。いかないことにします。

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その上でAを動かしてみます。Bは「Aの裏」と定義したので、Bも動きます。

このとき、動かす前のAの気温をa℃、動かす前のBの気温をb℃とすると、動かす前のAとBの気温差はa−b℃となります。

そのうえで、Aが半周すると、AとBの位置が逆転します。このとき、AとBの気温差はb−a℃です。a−bとb−aの間に確実に「0」はあります。つまり、ある地点とその裏側で気温差が0になる点はどっかにあります。

これが、中間値の定理です。

 

  • 白い碁石180個と黒い碁石181個が一列に並んでいるとき、ある黒の碁石とそれより右にある碁石を全て除くと、残っている白い碁石と黒い碁石が同数になるような黒の碁石が最低1つ存在している

こちらも有名な問題、というか東大で出題されたことのある問題です。中間値の定理を使う前に多少場合わけがいるので、少しお付き合いください。

まず、361個の碁石を並べたとき、左端と右端の碁石は以下の4パターンがあります。

①左白右白

②左白右黒

③左黒右白

④左黒右黒

このうち、左黒、つまり、一番左が黒いときは、その碁石とそれより右の碁石を取り除くと白い碁石も黒い碁石も0個となるので碁石の数が同数となります。

次に、右黒、つまり、一番右が黒いときは、その碁石を除くと「白い碁石180個と黒い碁石181個」から、「白い碁石180個と黒い碁石180個」になるので碁石の数が同数となります。

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よって、我々が気にすべきは、左白右白、つまり両端が白いときのみと分かります。

そして、ここで「左から碁石の個数を数えて、白い碁石の個数から黒い碁石の個数を引いたもの」を関数として考えます。一番左の白い碁石の場合、それより右に白い碁石180個と黒い碁石181個があるので、180−181=-1個と分かります。同様に一番右の白い碁石の場合、それより右に碁石はないので、その碁石自身が白いことから、白引く黒は1個となります。

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つまり、一番左から順に計算すると、-1から1へ個数の差が変化するのですが、このとき、碁石の個数の差に2以上の飛び級がないというのがポイントです。つまり、どこかで絶対白と黒の差が0になるはず!-1と1のまさに中間値の定理ですね!

そして、白引く黒の値を1増やすのは黒い碁石なので、白と黒の差が0になる黒い碁石が361個の中のどこかにあることがわかります。一見難しそうな、東大の問題も中間値の定理を上手く使うことで要領よく説明できるのです。

 

 

  • 二度漬け禁止の串カツは三度漬けも実質禁止

こちらも非常に数学的な例です。皆さん、2<3という不等式をご存知でしょうか?これは「3は2より大きい」ということを表しています。この不等式を、串カツに応用すると、串カツを3度漬けすると1度漬けと3度漬けの間に、2度漬けの瞬間があることがわかります。もちろん、4度漬けでも5度漬けでも100度漬けでも同様です。ですから、多くの串カツ屋は中間値の定理を応用して、「2度漬け禁止」というルールのみで、3度漬けも4度漬けも100度漬けもすべて禁止しているわけです。「数学なんか何に使うんだ?」とおっしゃる方々に是非とも届いて欲しい例ですね。

 

 

全裸で登場し、股間でお盆を高速で回す裸芸が人気の芸人ことアキラ100%

もちろん、お盆があまりにも速いため、TVを通して彼のチンコがOAされたことはほとんどないのですが、それでも、お盆を裏返している以上、アキラ100%がチンコ丸出しにしているのは間違いないのです。

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「どこか」というのがポイントで、お盆を回していればお盆が縦になった瞬間にチンコを出していると分かりますが、一瞬お盆を高く掲げてから裏返しているとすると、チンコが見える瞬間は「縦になった瞬間」ではありません。中間値の定理では、「条件を満たす値がどこかにある」ことはわかっても、その値は出せないのです。

 

 

  • 魔法少女が変身するとき全裸になっている瞬間がある

中間値の定理は男女問わず平等に発動されます。いわゆる、魔法少女モノの変身のシーン、服を着替えている以上、着ていた服を脱ぐ→裸→新しい服を着るということで全裸になっている瞬間が確実にあります。もちろん、段取りよく着替えれば全裸ではありませんが、それでもおっぱい丸出しせずに、上半身を着替えることはできないのですし、それについては下半身も同様なのです。

アニメでは、この問題を白い光がいい感じに当たることで解決しているようです。結局、現場では丸出しなのです。

 

  • コップにコインを入れるにはコインがコップを貫通しないといけないと思っている

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上図のように、テーブルに逆さにコップを置き、その上にコインを載せる。布をかぶせてから少し操作すると、コップの中にコインが入っている。そんな手品を見たことがありますでしょうか。

この手品のポイント、それはコップを逆さに置くことです。逆さに置かなければ、コインを入れるのが簡単すぎて盛り上がりに欠けます。通るはずのないコップの底面をコインが通るからこの手品は面白いのです。コップにコインが入るには、コインがコップの中にいる時間がある、この考えは中間値の定理そのものです。魔法少女にもマジックにも中間値の定理は息づいているのです。

 

  • バタフリーに「かたくなる」を覚えさせることができる

ポケットモンスター縮めてポケモンの例ですね。より実戦的な使われ方もするワザですが、ここはひとつ、初代ポケモン序盤に出てくるバタフリーで説明いたします。

バタフリーはチョウをモデルにしたポケモンです。青虫をモデルにした「キャタピー」がサナギをモデルにした「トランセル」に進化し、そのトランセルが進化したのがバタフリーです。

この「トランセル」というポケモンがサナギということもあって「かたくなる」しか覚えません。トキワのもりでむしとりしょうねんが出してきたり、野生で出てくるトランセルがかたくなるしかしないのをボコボコにした経験は皆さんあると思います。そんなかたくなるは、キャタピーバタフリーがレベルアップして覚える技に入っていません。しかし、バタフリーキャタピートランセルバタフリーと連続で進化します。キャタピーバタフリーという不連続な進化はできません。

ということは、かたくなるを覚えたトランセルを進化させると、かたくなるを覚えたバタフリーになります。羽化してもなおかたくなるを使うことができる、これも中間値の定理です。

 

  • 誰もが昔は子供だった

ポケモンの話ついでですが、これも中間値の定理です。子供を経ずに大人にはなれませんからね。

偉そうな顔した政治家や目の上ブルーなおばさんも、昔は子供だったんです。皆は忘れているだけなんです。ぜひ、皆さんは少年少女の心を、そして、こち亀のEDにも中間値の定理が根付いていることを忘れないでくださいね。

 

  • 正解は一年後というクイズ番組で、マスパンが出産したニュースによって「マスパン、中出しSEX」が正解扱いとなった回

正解は一年後、という年始のうちに今年起きるニュースを当てて年末に答え合わせしてみよう、というクイズ番組がありまして、「マスパン中出しSEX」というのは有吉弘行の解答でした。

マスパンってのは、正解は一年後のアシスタントの女子アナですけども、もちろん大セクハラだし、そもそもヤッたとしてもニュースにならないだろ、というツッコミもあったわけです。

しかし、番組側は「マスパン出産」のニュースを受けて、出産するということはその前に中出しSEXがあったはず、という見解から、見えるはずのない中出しSEXの存在を証明したのです。もちろん、何回でも言いますが、中間値の定理で証明できるのは「少なくとも1回以上」「存在する」ということのみです。

 

  • 長い髭をたくわえていてダンディなおじさんは、髭を蓄える前に無精髭だった瞬間がある

長いヒゲをたくわえた姿がダンディで似合っている方は多数いらっしゃると思いますが、短いヒゲがチクチク生えているのは無精髭と呼ばれます。

勘のいい読者ならもうわかりますね?そうです、ヒゲの長さが不連続関数なはずはなく、少しずつ生えてくるのです。ということは、あのヒゲをたくわえたダンディなおじさんも、そこのヒゲをたくわえたダンディなおじさんも瞬間的には無精髭だったはずなのです。あと、そういうダンディなおじさんも昔は子供だったのです。

 

  • 赤外線センサーを隙間だらけにするくらいならある面に隙間なくつけた方がいい

スパイ映画などでよく、「身体をいい感じで曲げて、赤外線を避けるスパイ」というのを見かけると思います。

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どう考えても「赤外線は赤で書く」くらいの工夫はしたほうがよかった

「建物は入り口を通らないと入れない」というのは窓を割られたり、敷地外から穴を掘られる逆ショーシャンクの空にパターンだったりを想定して塞いだ上であれば、それもまた中間値の定理と言えるわけですから、入り口に赤外線センサーを付けまくること自体は数学的な見地、というか中間値の定理的な見地から見て非常に正しい行いなんです。

しかし、それならなぜあんなにすり抜けられるように赤外線を配置してしまうのかな?と思うのは私だけでしょうか?

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このように配置すれば、赤外線が見えるタイプのスパイはすごすご引き下がるのではないでしょうか?ここを通らないと宝石は取れないとわかった上で、スパイも諦めがつくのではないでしょうか?

 

  • 刺身盛り合わせ、売り切れですか?寿司は売り切れてないのに?

居酒屋とかでたまーにありますよね。切り方が用途によって違うとか、使っている具すら違うとか、マニュアルがあるとか、店側として様々な理由があると思うので深追いするわけにもいかないですが、一方で、寿司は一旦刺身になっているはず、というこの感覚、この感覚こそが中間値の定理なんです。とはいえ、店側に色々言い分はあるはずなので、深追いはしない方がいいですが。

 

  • 自動車で歩道を通行してはならないが、道路に面した施設に出入りするために横切る場合は例外的に通行が認められる

自動車の免許を取ったことがある人はピンとくるでしょう。教本に載っている文章です。ヒトという生き物はこれぐらい長い文章が急に流入すると、脳がフリーズしてしまう生物とされていますが、その実態はとっても簡単という見掛け倒し文章です。そりゃ、車道から駐車場とかファミレス入るとき、一時的に歩道通るよね、つって。歩道通らずに国道沿いのファミレス入れるわけねえだろ、つって。

ここまで読んでくれた皆様には、「自動車で歩道を通行してはならないが、道路に面した施設に出入りするために横切る場合は例外的に通行が認められる」という文章が大したことないということ、そして中間値の定理も同じくらい大したことないということをご理解いただいてほしい所存です。

 

  • スリップ注意の標識のタイヤ痕、そんなわけなさすぎる

自動車ついでにもう一つ。皆さんは、スリップ注意の標識を見たことがありますでしょうか?

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こちらの標識です。ドライバーの目を引く警戒色に、めちゃくちゃスリップしている車ですが、中間値の定理をここまで勉強した皆さんなら分かるでしょう。そうです、このタイヤ痕、変なんです。左タイヤと右タイヤのタイヤ痕が交わるはずがないんです。スリップの途中でタイヤが入れ替わったのかな?だとしたら、一瞬タイヤ取れてますよ?という話ですよね。と、ここまで書いたところで、2014年ごろ、このタイヤ痕を可能にする滑り方が発見されたようなので調べてみてください。(高校範囲の)中間値の定理は平面的なグラフでしか使えないので…

 

  • ここを見てくださっているということは、ここまでお読みくださったということである。

そうですよね!?まさか高速スクロールとかしてないですよね!?ということは、全部読んでくださったんですよね!?ということで、ここまでお読みくださり、ありがとうございました!さようなら!

(おしまい)

*1:連続の定義は「グラフが途切れてワープしないこと」………ではないのですが、誤魔化させてください