- まえがき
この記事は2023年4月25日深夜以降のある件に関するツイートをまとめたものである。
ツイート自体の解説はしますし、ある件と言ってもタイトル通り「ドラえもん」の話なので怖いことは何一つないのですが、Twitterがサービス終了したりはてブと連携切られたりしたらこの記事が虚無になるということは念のため注意しておきたいと思います。
さて、ある件とは何かだけ話して本題に入ろう。ある件とは「ドラえもんの生年月日、当初は2012年9月3日だった説」である。
- 序章〜説のきっかけから結論まで一気に行くぜ〜
きっかけは私のツイートからであった
ドラえもんは未来だろ、って思ったけどY3Kから見たら888年前か… pic.twitter.com/4ssWvHdaP1
— オルソン (@EF_510_514) 2023年4月24日
画像は2023年4月17日のラヴィット!Y3Kファッションというのは西暦3000年に流行るであろうファッションのことらしいが、MCの川島明と田村真子が景気良くゲラゲラ笑っていたので、Y3Kファッション自体がデマの可能性も大いにある。
このツイートにこのような反応が来たのが4月25日の夜中である。
有名な話なのか知らないけど、まさかラヴィット!のなすなかY3Kファッションロケのおかげで「ドラえもんが生まれる西暦2112年は"3000年の888年前"である」ということを初めて意識することになるとは…
— yoshi44 (@yoshi44_snnm) 2023年4月25日
ちょっと調べたけど「元々ドラえもんは2012年生まれ設定だったが、近づいてきたので2112年生まれ設定に変更した」というのが事実であるなら、「3000年の888年前」は偶然っぽいということになるのかな… あと、また2212年生まれ設定に変更される日は来るのかな
— yoshi44 (@yoshi44_snnm) 2023年4月25日
そういうことなので、50年後とかを軽々しく近未来とか言って作品を作らない方がいいっていう話でございます https://t.co/uHl9jJOTB9
— yoshi44 (@yoshi44_snnm) 2023年4月25日
ド初期の水ダウでそういうネタありましたよね(オチは自身が耄碌しているっていうコント書いたダウンタウンが一番見立て甘いっていうオチ)
— オルソン (@EF_510_514) 2023年4月25日
自分自身ガチ勢というほどではないが、ドラえもんは幼少期より好きだったし、ドラえもんは2112年生まれだと知って疑わなかった。しかし、確かにググるとドラえもんは2012年生まれだったが、2012年が意外とすぐ来そうだったので変更された*1という情報は出るのである。
検索ワードは「ドラえもん 生まれ年」。上にも「いつ変わった?」と出ており同様な情報が出ている。
と、ここである異変に気づく。私が、ではなくyoshi44さんが、である。
ドラえもんの生まれ年変更は十分考えられるとはいえ公式ソースが出てこなかったので完全には信じないでおきますが、「129.3縛り」や「最初から設定を後にしすぎるとセワシ等の辻褄が合わなくなる」あたりから信憑性が感じられる話ではありますね、なので数十年後に23世紀生まれになりそう
— yoshi44 (@yoshi44_snnm) 2023年4月25日
いわゆる「いかがでしたかサイト」がいっぱい出てくるんですけど、何で「ドラえもんは当初2012年生まれだった」なんてまあまあ驚くべき情報が「いかがでしたかサイト」にしか載っていないんだ…そのくせ無下にもできない量のいかがでしたかサイトが出てくる……
— オルソン (@EF_510_514) 2023年4月25日
そう、公式の情報ソースが出てこず、実際調べてみると、いかがでしたか?系のサイトが6個くらいとYahoo!知恵袋が出てくる。つまり、情報源が複数あるが、どいつもこいつも細いのである。1本1本は細い糸でも6〜7本集めたら強い紐になるかもね、じゃないんだよ。なにより
ドラえもんが連載開始したのは1969年。この頃から見たら21世紀はかなり先の未来でした。しかし、2012年は読者が経験するかもしれないということで、2112年に誕生日が変更されました。
という表現と理由づけがどのいかがでしたか?サイトでもほぼ同じことから、いかがでしたか?サイト間でコピペが横行している可能性も見逃せない。そもそも、いつ誕生日が変更されたのか書いていないところも怪しい。
と、ここまで読めば胡散臭いデマを延々掴まされているだけにしか見えないだろうが、私にはこの説を捨てきれない理由がある。それは、もし2012年誕生説がデマだった場合「2012年は連載当初から未来だが、意外と長く連載続いたし、読者は経験できてしまいそうだから」という理由がまあまあもっともらしいので、「デマのくせに生意気だ」と言いたくなるのもあるが、そもそもドラえもんが結構設定コロコロ変えていた漫画だということを知っているからである。
代表例として「ドラえもんのしっぽを引っ張ると何が起こる?」という問題である。これは第3巻16話「白ゆりのような女の子」では「透明になる機能」として活用されているが、第14巻12話「ぐうたらの日」では「スイッチが切れて動かなくなる」のみとなっている。どちらの機能もストーリーのキーを握っているため、これらの設定は未だ変更されていない。なお、この具体例は漫画版「2112年ドラえもん誕生」*2の藤子F不二雄先生のあとがきにあったもので、透明化する機能を外した理由を「便利すぎるのでやめました」と書いている。あとがきによると、「2112年ドラえもん誕生」を作った理由が「行き当たりばったりで色々な設定を作ったので、設定を固めておきたかったからだという。
また、ドラえもんは多忙な藤子F不二雄先生に代わって「方倉陽二」というチーフアシスタントがコロコロコミックで1977年〜1981年にかけて「ドラえもん百科」というドラえもんの裏設定を連載していた*3こともあり、余計に設定がゴチャゴチャした漫画であることは間違いない。
ちなみに、ドラえもんは身長129.3cm、体重129.3kg、馬力も129.3馬力とあらゆる数字が「129.3」となっているが、これは連載開始当初の1969年の小学4年生の平均身長が129.3cmだったことに由来している。そして、「2112年9月3日生まれ」でも「2012年9月3日生まれ」でも「129.3」の並びは実現するため丸100年変える可能性はないことない。
というわけで、こうなるとデマじゃない証明しんどすぎて爆発コントまたの名を悪魔の証明になる。「2012年生まれである」ではなく「2012年生まれから設定が変更された」というのがミソなので、これはもう初版を当たってみるしかない。
2112年9月3日はドラえもんの誕生日!…のハズなんだけど初期は1970年の111年後、つまり2081年から来たので、もしかすると今のドラえもんは「帰ってきたドラえもん」以降の2代目なのかもしれない…(体型も初期とは明らかに違うしね)
— 時星リウス@妄想自由人 (@TokiBosi20) 2019年9月2日
いや、設定を変えただけですからw pic.twitter.com/LQPKSy0eJp
そんななか混迷をさらに極めるのがこの2081年説。1970年連載開始で、「111年後からきた」とハッキリ言ってしまっているので、たしかに足し算すると2112年に届かない。ちなみに、ドラえもんが2012年生まれだとすると111年前は1901年となり、のび太が日露戦争に巻き込まれてしまう。つまり、「未来の国からはるばると」の初版は少なくとも「ドラえもんが2112年生まれではない」ことの反証には十分使える。
確か初期のドラえもんは21世紀から来たことになっていたはず(初期のフキダシなど)なのでその逆算で2012年誕生と考えられたのでは…?
— 世情 (@s_j_o41) 2023年4月25日
ただ誕生年の設定はもっと後なのではとも思ったり…このへんはドラに詳しいフォロワーさんに聞いてみたい
ほかにも初版では21世紀生まれだったという説はあるにはあるようです。初版から設定が変わるなんてのはどの長寿漫画でもあることですからね。新潟で米でも作ってろ。
そんななか、一応の結論を得られるツイートをしてくださる方もいらっしゃいました。
ドラえもんの誕生年が2012年という設定は藤子ファンの間では一度も聞いたことがないのでおそらくデマだと思います。ちなみに藤子F先生の別作品の21エモンは2010年代をイメージしているのでそっから捏造されたんじゃないかなぁとにらんでます。 https://t.co/SlnSPTwbEz
— 矢島ともあき (@yjmtomoaki) 2023年4月26日
藤子F不二雄先生並びにドラえもんってガチ勢と言いますか、私なんかより詳しい方々が結構多いので、2012年生まれ設定があらゆるガチ勢の調査をすり抜けまくるとはちょっと考えにくいのは、まあ、そう、であります。
F先生は21エモンの舞台を2010年代にしちゃったことを晩年後悔してたので、21エモン以降の作品であるドラえもんに限って3〜40年先の未来にすることは無いと思います。因みにT・Pぼんのリームは2010年代生まれだけど、未来の描写は極力出さないようにしてる。
— 矢島ともあき (@yjmtomoaki) 2023年4月26日
あと、3〜40年後を舞台にしていて公開したのは「21えもん」の方、というデマの反証としていよいよ機能しそうな話もツイートされているため、いよいよデマである可能性が高い。
ということで、一旦ドラえもんの生年月日は最初から2112年で、2012年説など根も葉もないデマということで結論づけますが、もし、ドラえもん第1巻あるいは1970年1月号の雑誌「小学n年生」*4はたまた先述の方倉設定をまとめた「ドラえもん百科」の初版を所有している方がこの記事を読んでいましたら、ぜひご一報ください。そして、ドラえもんが何世紀生まれになっているか教えてください。よろしくお願いします。
あ、あと、
Wikipediaのドラえもん(キャラクター)のページを見るとてんコミ11巻のドラえもん百科が誕生年の初出っぽい?
— 世情 (@s_j_o41) 2023年4月25日
藤子・F・不二雄大全集にも載ってるなら初版の記載があるかもしれない pic.twitter.com/7x3cwxQDaO
初めて具体的な西暦が語られたのは11巻らしいのでこちらの初版も募集しておきます。
- 追記
1970年連載の一話では「111年後から来た」とあり2081年来訪でしたが1975年連載に2112年生まれに更新されます。
— ノキケロ (@nokikero) 2023年4月27日
「初期は21世紀だったが22世紀に変更」の事を「100年の見直しかかった」→「昔は2012年だった」と誤解した人の記事かと
別観点ですが、参考かもの自記事です。https://t.co/GTNBBVvlnM
リプライより情報提供がございました。ありがとうございます。
こちらのサイトによりますと、連載開始から4年間だけドラえもんが21世紀生まれだった時代があるということが分かりました。
第1巻収録の「未来の国からはるばると」はもちろん、「古道具きょう争」という話でも、ドラえもんが21世紀から来たことを示唆するシーンが初版にはある模様*5です。
ただ、22世紀ではなく21世紀だから2112年ではなく2012年というのは些か乱暴な計算でしょう。それこそ2081年だって21世紀なわけですから………………………………………………………………………………………
- 追記2
方倉設定では2012年だったという記述がありましたhttps://t.co/QRwTAsqZBw
— みくろ(三畔) (@guru_micro) 2023年4月26日
先述の方倉設定すなわち、コロコロコミックの連載コーナー「ドラえもん百科」において、「2012年9月3日」を誕生日としていたという記述が発見される。もっとも、この記事も画像はないわけだが、明確な物証を求めるとなると当時のそれこそ40年以上前のコロコロコミックを掘り出すしかないようで、捜査は難航すると言わざるを得ないようです。
とはいえ、どこを当たれば良いのか分かっただけでもだいぶ前進したと言えます。連載開始4年で22世紀生まれになったということは11巻を当たってもあまり意味ないことも分かりましたし…
- 2023年4月28日追記
更に追記です。
— ノキケロ (@nokikero) 2023年4月27日
小学四年生1975年4月「ドラとバケルともうひとつ」が2112設定の初出なのですが、方倉設定にもし2012設定があったとしてもドラえもん百科は1977年連載ですので初期設定でなく誤記の類って事になりますね。所有する4版では2112でした。
そもそもの「ドラバケ」も方倉氏が関わってます。
ノキケロさんより情報をいただきました。重ね重ね御礼申し上げます。
「ドラとバケルともうひとつ」ってのは聞いたことありますね。ドラえもんとバケルくんが出てくる「小学4年生」のコーナーで、第9巻の巻末に「ぼく桃太郎のなんなのさ」というコラボ漫画が載ってまして、子供心に「知らんキャラ載ってんなあ」と思ったものです。「ドラとバケルともうひとつ」ではコラボ漫画以外にも様々な企画があり、その中でドラえもんが2112年生まれと言っているシーンがドラえもん11巻の巻末に載ったようです。
そして、先述のノキケロさんの情報を中心に、年表に整理すると以下のようになります。
1970年1月:ドラえもん連載開始
→「111年後の未来から来た」という発言があり、計算上は2081年生まれとなる時期
1970年7月:「古道具きょう争」発表
→ドラえもんが、自身のいた時代を「21世紀」と評するシーンが出る。もっとも、現在は修正済み。
1975年4月:「ドラとバケルともうひとつ」で初めてドラえもんが「2112年9月3日生まれ」と発表。
1977年:コロコロコミックで「ドラえもん百科」の連載が開始
→2012年9月3日生まれとしている記述はあるらしいが、どの巻かは不明。しかし、ドラとバケルともうひとつより後なのは確定なので、こちらが初期設定と言えないのは、そう。転記ミスや世紀を西暦に直すときの計算ミスかもしれない。
というわけで、一旦情報の公募を締め切らせていただきます。情報提供してくださった皆さん、ありがとうございました。
ちなみに、上記の年表が全て正しいと仮定する場合、「なぜ、いかがでしたか?サイトは誤記の方を拡散しているのか?あるいは21世紀だから100年引いてみただけなのか?」という問題が浮上しますが、さすがにそれは調べる気力が湧きません。さようなら。
(おしまい)