キングオブコント2018感想文

この記事ではキングオブコント2018の感想を1組ずつ丁寧に書いていく訳だが当然、シャレにならないくらいネタバレしているので、録画や配信*1をまだ見ていない人はさっさとブラウザバックしましょう。

 

 

 

まず、全体の感想を言うと、現行体制になってからでは一番、審査員と自分の好みが合わなかったな、っていう。コントって漫才より自由だから、見る側も漫才以上に好みが出る。となると、審査員の審査も割れる。今年は客の温まり具合もあって、1本目からドスベリした組はいなかった。なので、松本人志だけ低得点のだーりんず然り三村マサカズだけ低得点のマヂカルラブリー然り、好みが割れ、「この狭い範囲で5分保たせるなんて」とか「この演技は難しい」とかそういう技術点の要素が色濃く出てしまった気がする。1本目にドスベりした組は1組もいなかった、みんな面白かった。だからこそ、思うし声を大にして言う、最終決戦3組は少ないって!!!!!!!2009-2013ルールは厳しいにしてもせめて5組!!!!!!

あ、あと葵わかなのアシスタントが結構巧いのには素直に驚いた。声も聞き取りやすいし。全然来年続投してくれちゃっていいというか、普通に来年続投してくれ〜〜〜い!(2016王者)って感じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一応、もう一回警告しておくけど、この下はキングオブコント2018の決勝ネタバレだよ?大丈夫?コンセント抜く?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「爆弾魔と清掃バイト」会社への復讐のために深夜の社屋に爆弾を仕掛けた男、そこに深夜の清掃バイトが現れて…。個人的に思っているキングオブコントあるあるの一つに「トップバッター選びが絶望的にヘタなくじ引き」がある。シソンヌと巨匠のクズおじさん対決で幕を開けたあの年とかマジで何だったんだ。んで、このネタ。このネタに限らず、彼らのネタはタイ演じる「憎めないヤンキー」のキャラが主軸になっている。このノブ曰く「ちょうどいいキャラクター」が見事に、観客の予想を超えつつ、そのキャラが言いそうなことを見事に言っていく…。が、トップバッターで間を空けるタイプのネタはただでも点数入りにくいのにさらに厳しい。ヤンキーキャラも「ちょうど言いそうなこと」が、このハイレベルな闘いの中だとどこか想定内に収まってしまった感。これだったら、にちようチャップリンでやってた立ち読みおじさんのネタとか構成でも魅せれるネタのが良かったのかなあ…。でもトップバッターな時点でどのみち…。とにかくあのキャラだけでも売れてほしい。売れすぎるとキングオブコント優勝はできなくなるけど。

 

タイムリープ」ビニール傘を探そうとする若者とそれを見て傘を盗んだと決めつけるヤバ目のおじさん。逃げ帰ろうとすると…。「似たような傘から自分の傘を探してたら傘泥棒扱いされる」というあるあるに「タイムリープ」を重ねる発想が素晴らしい。「リープしてない!?」までゆっくり振っているので、少し不安になるが、その後、おじさん側もリープに気づく、おじさんがリープのトリガー、そもそもこの世界はおじさんの夢の中説と大振りの展開が多く挟まったいいコント。こういう訳わからない状況に飲まれた村上の困惑と鋭さを両立したツッコミが大好きなので、村上にはこれからもコントを通して、どんどん訳わからない状況に巻き込まれてほしい*2。オチで大きな動きがあるのも良かった。

 

「犬」飼い主ととても仲の良い犬…以上の情報や展開が皆無なコント。発想としては「バウリンガル」と1ミリも変わらないのでは。それを岡部のコミカルさだけでグイグイ引っ張っているというストロングすぎるコント。このストロングなキャラに引き込まれないと、一生笑えないネタではある。個人的にはそこそこ笑ったが、捻りというか発想の妙みたいなのは欲しかったかな。ただ、飼い主の帰宅が毎回嬉しい、キュッキュ鳴るオモチャにめちゃくちゃ夢中に鳴るなど、細部までの作り込みは感心せざるをえない。「ドッグフードは何が入ってるかわからない」は笑ったなあ。

 

「予備校」鉢巻を巻いて予備校の壇上で熱く語る男。しかし彼は先生ではなく「鼓舞する人」で…。「鼓舞する人」という架空の職業を描いたコント。「鼓舞する人が鼓舞→生徒が騒ぐ→鼓舞する人が来る」のループが自然。現行体制の審査員に刺さりがちと言われる繰り返しのコントだ。設定の発想や、森田の演技力、設定バラシまで少し長くとったフリなども言わずもがなだが、中盤の「福沢ゆ吉」のボケが特に素晴らしかった!このボケがこのネタを単なる繰り返しに見せず、ピラミッドのてっぺんに近づける重要なボケだった、と思う。

 

  • だーりんず

「先輩が奢るアレ」居酒屋で偶然後輩に会ったので、先輩がこっそり会計を済ませるアレをやりたい、が店員の察しが悪く…。これまたストロングというか、狭い範囲でちまちまやっているコント。そういう意味では2016年の童貞ネタとあまり変わらないし、5分間レジ前だけで耐え切ろうとするスタンスは嫌いじゃない。嫌いじゃないけど、さすがに少し狭すぎたか。裏で悪口言いまくってる店長や、舟盛りキャンペーンと勘違いしてる見知らぬおっさんなど「いない人」の件が刺さりきってなかったのも…。

 

  • チョコレートプラネット

「監禁」首に謎の装置をつけられて監禁された男。あまりのパニックに彼は話を聞かずに叫び続けてしまう…。これまただーりんず以上にストロングなコント。ここまでストロングなコントだと審査員ウケも良くなるらしい。5分持つと思わないもんなあ。確かに、狭い中でゲームマスター側が「教えろ!」と言いたくなる展開がある構成は堅いし、大竹の言うように、ずーっと少しずつ笑えるという点で良作ではある。個人的には点数は高すぎる気もするけど、持たせる台本力と技術点だと思えば…。

 

「居酒屋」高校生でありながら居酒屋でアルバイトしている坂本。しかも彼には好きな人もいるらしく…。去年のキングオブコントでも、もっと前から彼らがやっているような坂本と宮戸の恋愛劇に福井がツッコミを入れていくスタイル。「校長先生が朝礼で言っていた""断る勇気""」「こいつらオススメの映画絶対おもんない」「切ない恋の砂時計」など、福井のワードのパンチ力は素晴らしい。でも、このネタでは、後半まで福井のワードパンチが出てなかったような…。

 

「バイトの新人」コンビニバイトの新人いしわた君。彼は非常に空質問が多い…。「質問しまくる新人」をテーマにしたコント。Twitterでよく言われる「質問をしたら『自分で考えろ』と言われたので、質問せず仕事したら『何でやる前に質問しないんだ?』と怒られた」を煮詰めに煮詰めるとこのモンスターが誕生するのだろう。もちろん単なるあるあるにとどまらず、「(バイトって)アルバイトですか?」「喧嘩ですか?」「これ店長の背中ですか?」「(伊達公子って)クルムですか?」といったさすがにありえない空質問も多く用意しているのでボケとして笑いやすい。ボケを詰めやすいというか手数を稼ぎやすい設定でもあるよね。オチは意味わからなかったけど。あんなことして間を空けない方が良かったと思うけど。

 

  • ロビンフット

「息子の彼女の年齢」めでたく結婚が決まった息子。しかし、息子の彼女の年齢は「干支が戌」以外の情報を息子も持っていないのだった…。「息子の婚約者の年齢」という真剣な題材ながら、数字当てゲームをやっているかのようなとにかく「年齢」に固執したコント。「ユーミンのことを荒井姓で呼ぶのは48」や「(名前がカタカナでトメは)84や!」などあるあるから偏見まで幅広い推理でネタを魅せている。数字でオチまでハッキリ構成を積み上げていく形は面白いのももちろんだけど、それ以上に楽しいというか疾走感が心地よいコントだった。

 

  • ザ・ギース

サイコメトリーサイコメトリーで事件を解決する高校生。早速凶器の包丁を触ると見えたものは…。最初の設定バラシで南国の鳥みたいな笑い方をしてしまったコント。個人的には一番笑ったけどなあ…。まさかの高佐が犯人、なぜサイコメトリーで変な映像が見えてしまうのか?という理由*3、などドラマティックな展開がコントの面白さを損なうことなく盛り込まれ、その緊張を刀鍛冶のジジイで一気に緩和する被せまである。オチは服の映像が見えないとダメじゃない?とは思ったが、それを差し引いても個人的には一位です。こんなに展開も笑いも詰めて5分に収まってるなんて!もう優勝不可避でしょう!458点!?6位!??いやいやいや…458那由多飛んで6万点の間違いでは!!???!???どうした??!!!?!??!審査員全員、高佐に親を刺された!!?!?!!!????!??

あ、あと余談だけど返り血を浴びた高佐、で観客が悲鳴あげなかったのは良かった!展開的にもあそこは逆に悲鳴上がっても仕方ないところなのに上がらなかったのは良かった!来年も全く同じ観客であってほしい!

 

 

 

ここから2本目

 

「捕まえてごらん」砂浜で追っかけっこをする一組のカップル…。「カップル同士の砂浜での追っかけっこ」を誇張して引き伸ばしていったコントで、舞台を広く使い、音楽まで流して笑いやすいネタに仕上げてはいる。個人的にはそこまでだったけど、他2組の感じで考えてもここが優勝は妥当。菊田の使い方というか役どころはめっちゃ笑った。

あと、このコント見るとGAGオンバトでやってた円形の公園のネタ思い出すのは俺だけか。

 

「能力者」。わざと肩を当てて金をふんだくろうとする不良。しかし、その相手は能力者で…。「能力者の能力が矮小」という設定は結構ベタ。それぐらい大きい枠で見ると2012年のしずるもやっていたと言えなくもない。そして、その設定であれば、「どう矮小なのか」というボケで勝負することになるが…自分は結構ツボだった。暴走族の元総長にあんなにテレパシーでガンガン悪口言うなんて…。でも、観客は結構ダレてたなあ…。

 

  • チョコレートプラネット

「意識高い棟梁」。大工の棟梁という泥臭い職業に、意識高い、という発想がプラスされたネタ。だが、その実態は長田のキャラクターショーではなく、小道具ショー。松尾が使う普通の工具を長田が意識高い工具に変えていく…というローテーションは、さすがにダレる。ストーリーが蓄積しない散漫さが大きな笑いを取りにくくしているような。「Macを定規に使う」「ちゃんとやれってことですよね?」「ニコニコちゃん」辺りのいい意味でしょーもないボケを混ぜてこれるのはチョコプラの良さだが、それでも主軸が小道具、小道具に頼りすぎ(by松本人志)という印象は変わらず。優勝争いに参加するには決め手の欠けるネタだと思う。ネタによっては優勝もあったと思うのだが…。

 

 

  • 総評

ネタ番組としては、当然面白かった。が、競技としては決勝前から運営がどうかしてることによるモヤモヤがさらに加速する結果になった感は否めない。以下、自身のツイートとともに整理しようと思う

 

  • 最終決戦が3組なことについて

冒頭の繰り返しになるけど、最終決戦3組問題ね。よーく考えると実はM-1もR-1も最終決戦3組なわけ。それでも、キングオブコントの最終決戦3組が少ないと思ってしまう理由は去年5組だったこととの対比…だけではなく、「コントは漫才より自由なぶん、優劣をつけにくい」というこれまた冒頭の繰り返しになると思う。2本目が3組中2組失速して、消去法というのは………うーん…。R-1でもアキラ100%が優勝した時はそんな感じだったなあ…。見れるネタが多い方が番組として良いし、チャンスが多い方が競技として良いので、そこはやっぱり考えてほしいですね。

 

  • 出演者シークレット

意外と支障がなかったのでビックリ。まあ、数字にどう反映されるのか?といったことだが。まあ、目立った支障が「決勝前に優勝予想ができない」「決勝前に知らん芸人の名前見てワクワクできない」なので、決勝本編に支障が出ないのは当然といえば当然なのであった。ただ、ネタバレを阻止するために、ありもしないキングオブコント決勝進出のためにライブの仕事をバラされた芸人もいると聞いているので、もしそれが事実だとしたらそういう形で芸人に負荷をかけるのは2度とやめてほしい。あくまでウワサの範囲だが…。

 

  • 準決勝と決勝が同じネタというルール

まず、わざわざキングオブコントの準決勝にまで顔を出す客というのは大体のネタ番組を把握しているので、旧作を予選にかけると客がみんな知っているのでウケにくいという状況がある。そこで、大体の芸人は新ネタをおろしてくるわけだが、キングオブコントの決勝というのは芸人によっては初めての地上波全国ネットでネタ披露チャンスとなる番組である。だからこそ、決勝では自分たちの代表作をやりたいという芸人がいてもいいはずだし、準決勝と決勝では客層が違うからネタを変える作戦に出たいという芸人もいるはずだ。こういう芸人の自由は、他のTV番組ならともかくお笑い賞レースでは尊重されるべきだと思う。最終決戦3組中2組失速がこのルールと無関係とも思えないし…。

 

  • 客層

「芸人が100人いないのは寂しい」と言われて久しい現行審査体制では、観客は審査する権利を持たない一般人だが、客ウケが審査を一切左右しないとは考えにくいし、番組の空気を数の暴力で左右する大事な存在であることに変わりはない。

現行審査体制から4回目のKOC。2015年から順に笑わなさすぎ、悲鳴上げすぎ、若干悲鳴と問題を抱えていた観客だが今年は現行審査体制史上最高と言っても過言ではない。THE Wのように笑いすぎることもなく「大きいボケで大きくウケて、小さいボケで小さくウケる」という理想的な観客かつ、悲鳴が全く上がらないという千眼美子も大満足の観客だ。ただこの「小さいボケで小さくウケる」が曲者で、上記のツイートで挙げた件で小さくウケるを通り越して無風になるという「笑いの取りこぼし」があったのは少し引っかかった。それでも上記の芸人はまだいい方で、だーりんずやGAGわらふぢなるお2本目は大きめの件を2-3個くらいゴッソリ取りこぼされていた気がする。もちろん、冷静にボケを見極めている客層とも言えるし、「取りこぼされないようなネタを頑張って作りましょーねーワハハハ」で終わる話ではあるが、取りこぼされて無風になるボケの基準がわからないのでトリッキーな観客だったな、と。あ、余談だけど一番傾向がわかりやすかったのはやっぱり2016年の観客ですね。その時の観客が良かった、とは1ミクロンも思いませんが。

 

  • ギースのコントと審査傾向

3個目の「これ」はさらばのネタだが、それはさておき。ザ・ギースのネタ、好きだったけどねえ。リアルタイムで見た後コントだけ全部もう一回見返したけど、1回目も2回目も一番笑ったのはザ・ギースだった。最初の映像で火を映して「放火魔?」とか考えさせる隙を一瞬だけ与える、という映像編集まで最高だった、と思うのよ。あとは感想にも書いた通り。あれ以上尺を伸ばさず展開を詰めるのは無理だし、どこかを切って4分にすることもできないネタだったと思う。個人的には100点中500点あげても足りないくらいのコントだったけど結果は6位なので2017年ルールでも最終決戦行けていなかったんかい!っていう。いやいやいや…評価が低すぎるって…。5分でできる展開をやれるだけやりきってそれは…まあその「展開」が少なくとも三村にはハマらなかった*4ということなのだが…。

 

冒頭でもチラッと言ったように、自分の評価と審査員の審査が合わない、そしてそれが異常にモヤモヤする理由、それはここに集約される気がする。「狭い設定から4分持たせる」より「狭い設定から5分持たせる」方が難しいのは確かにそうだ。でも、当初決勝での尺が1分伸びるメリットは「1分ぶんフリやボケを多くできる」だったはず。そして、決勝進出者は5分に合わせて展開やボケを練ってきたはずなのだ。だから、ザ・ギースやマヂカルラブリーなどの展開が凝ったコントが評価につながらず、ハナコチョコプラのようなシンプルコントが評価される状況に(?????)となってしまう。ただ、シンプルコントが評価されがちなのは今に始まった事ではない。だから、ジャルジャルが決勝に来て欲しい!評価される土壌だけはあるんだから!本人たちがなぜか決勝から遠のいているだけなんだから!2009-2010とレッドシアターがあった頃にしか決勝進出できていないんだから!ロッチもしずるもそのあと2015年と2016年に帰って来ているんだから!M-1進出も十分すごいけどやっぱりジャルジャルコント師なんだから!そのM-1の2015年と2017年の進出のおかげでジャルジャルの面白さがじわりじわりと浸透しつつあるんだから!

 

 

 

 

 

 

………なんでジャルジャルの話してるんですか?

(おしまい)

 

 

 

 

 

 

*1:9/29以降paraviにて独占配信!

*2:彼らの漫才が嫌いなんてことはないけど、コントの方が自由が効くからね、照明とか。

*3:断っておくが「メイドインジャパンだから」ではない

*4:それでも90点付けてるが