紙ストローで炭酸飲料は飲みづらいのか?

  • まえがき

どうも、オルソンです。

先日、このようなツイートを見かけた。

そこで、今回、紙ストローで炭酸飲料は飲みづらいのか?ということを徹底検証していく

 

  • 実験1

まず、フードコート内のマクドナルドへ行き、飲み物だけ頼むのも何かアレなので、フィレオフィッシュセットを注文。ドリンクは「スプライト」を選択した。

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紙ストローとご対面。外袋の注意事項によると特性上、長時間使用したり、飲み物をかき回した場合に折れや曲がりが生じることがあるそうです。やめちまえ。

そんな紙ストローですが、一旦無視して、家から持ってきたプラストローでスプライトを飲むことにする。理由は、プラストローの場合でも飲みにくい場合はストローのせいではなくなるので、その可能性を潰すためである。

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うん、普通に飲みやすい。あと、フィレオフィッシュってひさびさに食うと美味いっすね。タルタルがとにかく美味い。マックポークビッグマックもタレがとにかく美味いんだよマックは。

このあと、紙ストローをスプライトに挿し、写真を撮ることもなく早急に飲む。すると………え?は?マックシェイクにすり替えられたんかというくらい啜りづらい。たしかに、すすれどすすれど液体が上がってこない。まあ、マックシェイクってちょうど母乳が出てくる速度になるようにしているらしいので、スプライトを母乳の速度で飲みたいという方には好評かも知れませんが…驚いてストローを抜いたところ、ストローの中に入っていたスプライトが噴出して手が少し汚れちまう始末。ということで、実は自前のプラストローの方が紙ストローより細いにも関わらず、そんなハンデをものともせず紙ストローで炭酸飲料を飲むと、非常に飲みづらいことがわかった。ただし、一度ストローを抜いた後、再度ストローを挿してスプライトを啜ると、プラストローくらい飲みやすくはなった。

と、ここで実験を終わるわけにはいかない。

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お茶である。そう、プラストローより紙ストローの方が啜りにくくなる現象が、非炭酸飲料で発生しないのかどうかという対照実験を行う。

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「なんで急に飲みかけ?」「そもそも他人の飲みかけなんかあげんなバカ」という皆さん、落ち着いてください。これは飲みかけではございません。お茶をコップに少量入れてそこそこ振ってから飲むことで、コップ中のスプライト成分を除去し、お茶の成分を増やす共洗いという工程でございます。

共洗いが無事終わったので紙ストローとプラストローで飲み比べる。この辺りですでに、紙ストローの飲み口がヘナヘナしかけていたものの、啜りやすさにおいて差は皆無であった。

 

  • ここまでの結論

・紙ストローはプラストローと比べて、耐水性が低く、折れたり破れたりする危険性が高い。そして、これはマクドナルドが公式に認めている事実である。

・紙ストローはプラストローと比べて、非炭酸飲料の啜りやすさは変わらない

・紙ストローはプラストローと比べて、明らかに炭酸飲料が啜りにくくなる。

→ただし、一度抜いて挿すだけで大きな改善が見られる。

・紙ストローは紙の味がして何か不快だが、プラストローは無味で飲み物を邪魔しないと思う。ただ、これは極めて主観的な感想であるため科学的レポートに書くのはあまりに不適当であると同時に、ネット上には「紙ストローの味に不快感を感じない声」も相応にあるため、そういった方々へ反逆を表明する必要性も皆無である。

 

  • 実験2〜なぜ、紙ストローで炭酸飲料は飲みづらいのか?〜

ここからは、タイトル通り、紙ストローで炭酸飲料が飲みにくい理由を考えていく。正直、実験する前から仮説というかそういうアテはあったし、一度抜いて挿すだけで改善が見られたとき、その仮説は確信に変わった。

と、その前にストローの仕組みを説明しよう。ストローは、①ストローの中の空気を吸う→②ストローの中の気圧が下がる→③水面を押す気圧>ストローの中の気圧、という状態になる→④飲み物がストローへ入るという仕組みになっている。気圧というのは、空気の重さがかかることによって生じる力なので空気の量が多ければ気圧が大きく、空気の量が少なければ気圧が小さいと思ってもらえれば、この記事の理解くらいなら乗り切れる。

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ちなみに、紙パックなどある程度密閉された容器の場合、ストローで息を吹き込んでも飲み物が上がってくる。これは、①ストローから紙パックへ空気を入れる→紙パック中の空気が水面を押す気圧が上がる→③水面を押す気圧>ストローの中の気圧、という状態になる→④飲み物がストローへ入るという仕組みで起こる現象である。

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つまるところ、伝えたいのは、ストローで水が上がるのはストローの内部と外部の圧力の「差」によって起こるということである。もちろん、差を大きくすればするほどストローで液体を吸い上げる効率は上がる。逆に言うと、ストロー外部に空気がない宇宙空間においてストローを使って液体を吸うことはできない。

で、ここからは紙ストローとプラストローの違い、というよりは紙とプラの違いの話になる。私は、紙ストローで炭酸飲料を飲みにくい理由は「紙は多孔質だから」と仮説を立てた。多孔質というのは光学顕微鏡レベルでよくよく見るとちっちゃい穴が無数に開いている物質のこと。紙や布は、どちらも繊維を編んで作っているという共通点があり、「編む」という工法はちっちゃい穴が無数に開くので、液体の保存に不向きであることはさすがに皆さんご存知だと思う。

さて、多孔質をストローにするとどのような不都合が生じるか下の模式図を見てほしい。

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炭酸飲料をストローに入れると、ストローに細かい気泡がつく。そして、ストローが多孔質であるために、穴に気泡が付いてしまった場合、気泡の圧力分だけストロー内部の気圧が上がる、すなわち、ストロー中に入ろうとした液体が押し返されてしまう。きちんと計算する気はあまりおきませんが、気泡が飲料の水圧で割れていないということは飲料の水圧に近い水圧を持っているのではないでしょうか?つまり、炭酸飲料の炭酸がストロー内に入り込むことで、啜りにくくなっている。これが結論ではないかと目論んでいる。

しかし、ここまで力説したものは仮説に過ぎない。今度はこの仮説を検証する必要がある。

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ということで、画鋲を使ってストローに穴を開け、多孔質プラストローを作成した。もっとも、下5cmくらいしか穴は開けていない。

まずはこの多孔質プラストローでお茶を啜ることに。なお、コップは先ほどのマックのコップを使っている。

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結果として、穴と空気が触れるまでは支障なく飲めるという結論になった。穴と空気が触れると、その穴から空気が入って気圧が上がるからこうなるのでしょう。ということは仮説の立証まであと少し。

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今回の実験にはファイブミニを使用。本当はここもスプライトにしたかったけどさ、もうお腹チャッポンチャッポンなんだよ。もうちょっとしかジュース飲みたくねえんだよ。このままだとお腹壊しそうだから食物繊維に全てを任せてもらおうって魂胆なわけよ。

というわけで、多孔質プラストローでファイブミニを飲んでみたところ、常に紙パックジュースを飲み切る寸前の「ジョボボボボボ…」みたいな音を立て、紙ストロー以上に飲みづらくなった。。この「ジョボボボボボ」は、飲み物が少なくなることで、ストローに飲み物と空気が同時に入り込むことで立つ音であるから、画鋲で穴を開けたストローで炭酸飲料を飲むと空気が入っていることは間違いない。また、ストローを一度出して気泡を除去してから飲むと大きな支障がなく飲めるという結果からも、炭酸飲料の気泡が、啜るのを妨げていることがわかる。

 

  • 結果と考察

・紙ストローとプラストローでは、非炭酸飲料の啜りやすさは変わらないが、炭酸飲料は啜りにくくなる。

→これは、ストローに気泡がまとわりつくことと、気泡内の空気圧がストロー内部にかかってしまうという紙の特性によるものである。そのため、一度ストローを取り出し、ストローにまとわりついた気泡を除去すると、紙ストローでも炭酸飲料が飲みやすくなる。

→もちろん、なんでわざわざそんなことしなきゃいけないんだよバカタレと思う方もいらっしゃると思うし、実際私もそう思うが、そういった主観的感情を科学的レポートに書くのは極めて不適切である。

 

というわけで、実験→仮説→実証実験を経て、解決策まで見出せたのでこちらからは以上です。ご清聴ありがとうございました。

 

 

  • ご清聴ありがとうと言っておいてうる星あとがき

今回は「紙ストローで炭酸飲料は飲みづらい」という実験記事をお送りいたしました。この記事のきっかけは先述の通り、私のFF内の方のツイートでした。新しい科学が生まれ、発展するきっかけは何でしょうか?私は、最初のきっかけは観察からだと思っております。

実はこの記事を書く前に「紙ストローだと炭酸飲料が飲みづらいのは何故か?」をネット検索してみました。すると、炭酸飲料に紙ストローを使うと噴き出す可能性があるという話や、炭酸飲料に紙ストローを使うとすぐに気が抜けて不味くなる*1といった話は見られましたが、炭酸飲料が飲みづらいという話はついぞ出ませんでした。つまり、あのツイートが、あの観察がなければこの記事が実験を通して暴いた事実は永遠に世に出なかったということです。

このツイートに改めて感謝を申し上げますとともに、マックの開発部には「もっと観察とか実験とかしろよ」という呪詛を申し上げます。ありがとうございました。

(おしまい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:紙はプラより凹凸が多いために気泡が出来やすいため起こる現象とのこと