大学入試共通テスト予想問題の出題意図

どうも、こんばんは、オルソンです。

 

先日、こんな記事を書いた。

大学入試共通テスト予想問題を作ってみた(数学IAのみ)

 

https://orsonblog.hatenablog.com/entry/2020/10/06/000649

と、いうことで、解答解説はしないが、出題意図の説明くらいはしておこうと思う。

 

大学入試共通テストとは、大学入試改革の一環として、「自らの力で考えをまとめたり、相手が理解できるように根拠に基づいて論述する思考力・判断力・表現力」や「主体的・対話的で深い学び」などを評価できるテストにすべく、センター試験にとって変わるテストである。これは先ほど貼った予想問題の記事のまえがきにも書いた。そして、これも先ほどの記事のまえがきにも書いたが、会話文形式であることを含め、身近な例を取り扱い、勉強を通して身近な問題を解決する力を育てようとしている。………のだが、共通テストのプレテストを見る限り色々おかしいので、「共通テストにクソぶっかけてやるよ!」という一心で作ったのが先ほどの予想問題の出題意図である。

 

大学入試共通テストプレテストの問題(上が平成29年・下が平成30年)

https://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/pre-test_h29_01.html

https://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/pre-test_h30_1111.html

 

今回取り扱うのは数学である。数学は元々「未知の問題の解決能力も数学力のうち」という部分がある科目であり、それゆえに大きく変わったように見えるが…果たして、どこがどうクソかけ案件なのか、一つ一つ見ていこう。

 

  • 誘導はある。何なら強化されている

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これは、平成30年プレテスト数学ⅡBである。えー、何ですか?この会話?「身近な例」とは言ったけど、これは反則じゃん。こんな反則使ったら、「学校の勉強なんか、学校の先生しか使わないじゃ〜ん」という意見がダメ押しされ続けちゃうだろ。そうならないための大学入試改革じゃないんかい。

あと、「階差数列を考えてみたらどうかな?」っていう会話も気持ち悪いからな。気持ち悪いというかセンター試験時代、めちゃくちゃ目の敵にされてた「誘導」そのものだから。「階差数列を考えてみたらどうかな?」って言われて、階差数列をPnとまで置かれたら、そりゃ階差数列を考えたら上手くいくんでしょうよ。そして、こうなると拡散したい美談を作って、マックで隣の席の女子高生が「………」って言ってて、でくるむのと変わらないから。それは「会話性」に入らないから。なぜなら、こんな会話はないから。文科省は何をやってるんですか?嘘松を作る機関なんですか?マジでしっかりしてくれ…。

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誘導の酷さで言ったら、平成29年数学IA第5問であろう。

そもそも、センター試験数学における誘導は、「解き方を誘導して計算させているだけなので思考力を養えない」というのが大きな批判であったはずだが、共通テストでよく出す(プレテスト2回しかやっていないので、まだ『よく出す』も何もないが)パターンとして、「同じ問題を違う解法で」というものがある。一見画期的だが、その実態は画像の通り。同じ問題を別の道から2回誘導されるだけである。また、2つの解法に誘導するため、一つひとつの誘導はむしろセンター試験より悪質化しているまである。アンチセンター試験が掲げる「誘導によって低下する思考力」は、解き方をゼロから考える力なので、ヒント付きで2個の解き方をやらせても意味がないのである。あと、この問題(正四面体の中点を結ぶと正方形ができることの証明及び、正四面体からどのように条件を緩めても正方形のままキープするか)、普通、ベクトルだからな!ベクトルもなぜか指導要領から消す気らしいけど!

 

  • 有名ネタをこするやつ

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これはそれぞれ平成30年プレテストの第1問と第5問である。どちらも「有名ネタ」という共通点を抱えているが、有名度が違うのでそのぶん問題点も違う。

 

・第1問

これは「正弦定理」の証明である。有名ネタ、というより「教科書にある定理そのもの」である。センター試験では、結構な出題頻度を誇っていた。普通、この定理を使って何かしら*1する流れだが、そうではない。こういった「教科書レベルの公式証明問題」は「東大が加法定理の証明だけで大問1個割いた回」を筆頭に割と例はあるのだが、多くの受験者がいる共通テストにおいて、正弦定理をどう使うか?という問題や、正弦定理を身につけているか?という問題が出せなくなっていることに疑念はないのだろうか?あと、誘導ありで証明させても意味ねえからな!!!!

あと、これは大きなお世話かもしれないが、有名ネタのネタ切れがしないか、も心配なところである。

 

・第5問

これは「フェルマー点」というのをネタに作られた問題である。2013年に東大がモチーフにしたことで若干有名になった。

こういう「教科書にないタイプの有名ネタ」というのは、数学ではよくある。まあ、教科書にもある証明を何の捻りもなくのっけている第2問よりは骨があるし面白い問題ではある。しかし、こういう教科書にないタイプの有名ネタは「塾などで知る人ぞ知る」という教育格差を生み出す問題である。まあ、こういう有名ネタこそ大学入試にも出るから有名ネタなのだが…もう少し何とかしてほしい、というよりセンター試験で良かったんじゃないか?と思うのである。何の数学的背景もない計算問題だけど、それでも学力見えてたからそれで良くない?ダメ?

あと、これは余計なお世話かもしれないが、有名ネタのネタ切れしないか、も心配なところである。

 

 

  • 身近な例、が全然身近じゃない

これについては、先述の、「身近な例」として学校での授業を持ち出す反則技や誘導を会話にした「嘘松も内包している問題点である。

一回提唱した問題点は2度と提唱しないにしてもおかしい問題はチラホラある。「久しぶりに小学校に行くと階段の一段一段の高さが低く感じられることがある」という小学校の先生かヤバい侵入者以外知り得ない小学校あるあるから始まる平成30年数学IA第1問や、こち亀両さんがそろばん会社を救う回のオチで出てきて「見たことあるけど使い方忘れた道具ナンバーワン」と言われているところしか見たことがない計算尺を題材にした平成30年数学ⅡB第1問なども該当するが、この章では一問に絞ってギュッと濃いめにお送りしようと思う。

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というわけで、平成29年数学ⅡB第5問である。大学入試共通テストの登場人物の中で最もヤバい奴の登場だ。

ある工場では,内容量が 100 g と記載されたポップコーンを製造している。のり子さんが,この工場 で製造されたポップコーン 1 袋を購入して調べたところ,内容量は98gであった。のり子さんは「記載された内容量は誤っているのではないか」と考えた。そこで,のり子さんは,この工場で製造されたポップコーンを100袋購入して調べたところ,標本平均は 104 g,標本の標準偏差は 2 gであった。

どうですか?(聞くな)

まず、100gのポップコーンの重さ測ります?98gだったとして気にします?そんで、ポップコーン100袋買います?

完全に、クレーマーのモチベーションでポップコーンを買い占める女、のり子。モチベはクレーマーなのに、工場にとってはポップコーン100袋を買ってくれる優良客となってしまった女、のり子。優良客となった代わりに、1袋100円としても万札1枚吹っ飛ばしてまで、たかだか数gの真実を暴こうとする女、のり子。大学入試共通テストである以上、お買い上げした100袋のポップコーンはあとで美味しくいただいているであろう女、のり子。個人的なことを言えば、予想問題の第2問はのり子にインスパイアされて作ったが、正直足元にも及ばぬ出来となってしまった、俺の「共通テストお笑い」の師匠、のり子。

こんなものを身近な問題解決と言い張らないでいただきたい。なぜなら、こんな女はいないから。それとも女子ってみんなそうなの?女子はみんなポップコーンの重さ気になっちゃうの?そんでポップコーン買い占めちゃう生き物なの?俺が知らないだけ?

 

  • コンピュータソフト頼りすぎ

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(平成29年数学IA第5問再登場)

これは、今までの問題点の中にちょっとずつある共通部分であるが、共通テストはコンピュータソフト使って図形を描画しながら会話させとけばいいと思っているフシがある。

これにより、身近な例を作り出せていない怠慢・嘘松ぶりがまたも炙り出されたが、それとは別に、センター試験が長らく問い続けてきた「文章から図を書く力」を明らかに阻害している。すでに、図が出力されているからね。特に、平成29年数学IA第5問は正四面体をコンピュータソフトで出力しているため、作中の登場人物含め、誰一人正四面体を立体として見ていない始末…。問題解決でも何でもねえよ、こんなの。

 

  • 結論

大学入試共通テストにクソぶっかけてやるよ

 

 

 

 

ただ、罵詈雑言が続いたので、最後に「いい問題もあったよ」ということを言っておきます。

 

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平成29年数学IA第2問です。題材がいいよね。

(おしまい)

 

*1:正弦定理の場合、ほぼ外接円の半径しかないが