どうも、GWも暇で仕方ないオルソンです。
今日は、「結城友奈は勇者である〜勇者の章〜」より暇つぶしのネタを拝借することにした。それが、「1/6切れのケーキを5等分する」である。
1/6切れのケーキを5等分にする、とは
勇者部に手作りのホールケーキを持ってきた犬吠埼樹。部員は5人しかいないにも関わらず、なぜか6等分してしまう…。仕方ないので余った1切れを上の画像のように5等分する乃木園子であった…。
というわけで、今回考察するのはこちらの分割を考察する。
- 中学数学どころか中学入試算数にしかすぎない話
まず、途中までは算数レベルでクリアできる。どういうことかというと…
5個中4個の図形は三角形である。そして三角形の面積を半分に分けるのは非常に簡単だ。
と、いうのも三角形の面積は底辺×高さ÷2で出るので、底辺の中点と頂点を結べば簡単に2分割できる。
じゃあ、上の四角形を公平に4分割するには?
はい、三角形を2回2分割しただけ。これで良い。
ここまでは、中学数学の範疇であると同時に、小学生でも理解できる範囲である。ここからは大人の時間だ。三角比とかめっちゃ出てくるから子供はもう寝なさい*1、おやすみ。
- あと1切れは三角比を使うしかなかった
と、いうわけで先に結論を見据えると、こうなれば良いことがわかる。一個だけ三角形ではない斜線部をどうやって出すか?がミソだ。
弦を補助線として引いて「三角形+扇の切れ端」と捉えるのが一般的な解き方であるように思う。まず扇の切れ端の面積を求めよう。
1/6切れなので弦を引くと正三角形ができる。計算が楽でありがたい限りですね。計算が楽でありがたいついでに、扇の切れ端に対する扇(1/6切れのケーキ)全体の割合を関数電卓で出すと…
1/5(=0.2)にそこそこ近い!でもちょっと少ない!
というわけで、乃木園子の作図通り、「扇の切れ端だけでなく少しだけ抉る」が正解なのは間違いない。どれくらい抉るかは…今から計算するんだよ!
三角形ABCと角度θを設定、あと少しで方程式が立つのでそれを解くだけですね。
というわけで、tanθやAHが出たわけですが…関数電卓でθを算出すると…
θは3.235756761…°だそうです。少な!あと、どうやって分度器で測るんだ!いい加減にしろ!
とにかく、結論をまとめると…
・角度からアプローチする場合
→くぼんでいる部分(上の解法では角BACにあたる)は約173.5284865°になる。お使いの分度器に有効数字をお合わせください。
・長さからアプローチする場合
OAの長さは三角形OBC(正三角形だったところ)の高さからAHを引いたものなので、OA=4π/15となる。ただしこれは扇の半径を1とした時の割合である点に注意。具体的には中心角の二等分線をを2π/15:2π/15:(15-2π)/15に分けて切ればOK。
- 一般化してみよう
皆さんも、ケーキをn分割しようとしたら、n-1人しかいなかったなんてことあると思う。これは、ある1人が壁の向こうへ行って生贄になってしまった場合だけでなく、風邪などによる欠席者がいた場合にも起こる問題、すなわち、神世紀ではなく西暦を生きる我々にとっても身近な問題であるはずだ。というわけで、一般化した問題、つまり「1/2nに切った扇型ホールケーキを2n-1等分するにはどう切れば良いのか?」を考えよう。あ、そうそう東京ダイナマイトばりに遅れた紹介になるけど、nは自然数です。
しつこいようだが、三角形のパートは簡単なんだよ。そこはもうこの程度の解説でいいんだよ。というわけで問題はここから…
といってもnになったから何かが変わるでもない。解き方はさっきと同様。「弦で分割したら面積出せるっしょ」だし、弦で分割した三角形側の頂点をθと置くし。
唯一異なるのは三角形OBCが二等辺三角形になってしまうことです。だり〜。だりだり〜ん、見えるでしょ〜う〜♪
あとは方程式を立てて解くだけ………すんげえ変な式になったゾ………すんげえ変な式になったけどn=3を代入して検算したら合っていたので終わりで〜す(cv.小宮浩信)。
- もう少し考察しよう
AHの長さを一般化できたので、もう少し考察しよう。具体的には以下のメニューでお送りする。
・AHは常に正なのか?
・nを無限大に飛ばしてAHの極限を調べる
おまけコーナーなのにだいぶ長くなりそうだがお付き合いいただきたい。
- AHは常に正なのか?
一般に長さは正である。しかし、今回のようにパラメーターを一種類しか取っていない場合、そうとも言い切れないのだ(下画像参照)。
このように、扇の切れ端が扇全体の1/(2n-1)より大きい場合AHは負となりうる。しかし、今回AHを式の形で出したので、本当にAHが正なのかを考察できる………が、式が汚すぎる。汚物か?汚物団のはせがわか?微分をする、階差をとる、数学的帰納法といった案が浮かぶが、どれも全くピンとこない。AHを一般化したら概形の考察ができるなんて幻でした。この世界のように…。大赦はそれをずっと隠していたんだ…。こんな世界滅ぼしてやる!
………ん、待てよ?概形の考察…概形の考察…概形の………あ、そっか!
普通に概形の考察をすればいいのか!というわけで、AHを早々に見捨て「扇の切れ端が扇全体の1/(2n-1)より大きくなることがあるのか?」を調べることにする。なんそれ!!!!!
あまりにもなんそれなので、なんそれと書いてしまうの図
大小関係の証明においては「A>BならばA-B>0」を利用するのが一般的だ。今回もそれに従ってみると…
AHよりはだいぶシンプルな式が出ましたね。これだったら大学入試では数学ⅡBまでしか使わなかったけど、高2までの段階で数学Ⅲの微分まで習っていた自分でも、微分してグラフの概形を書くくらいできそうだ。
……………と、思ったのですが、微分までは行けてもf’(n)=0の解を出せなかったため終了。こんな時はスマホのアプリを入れよう!
グラフの概形はこんな感じ、引きすぎて意味がわからないが、nは自然数なので右側だけ見てくれたらOKだ。
nが3.34付近のf(n)のグラフの様子。基本的にf(n)>0ということで良さそうだが…
y軸付近(nが0付近)でグラフがx軸の下に潜り込んでいるのを確認!アップにしてみると…
n=2.4付近にf(n)の正負が逆転する地点(実数解ともいう)を発見!実際に調べてみるとf(2)<0だった。これは「4等分のケーキ1切れを3等分することになった場合、弦のところで切って三角形を2分割する方法だと、扇の切れ端を食べることになった人は得をする」ということを意味している(下画像参照)。
なお、n=1の場合は「2等分のケーキを1等分」なのでホールケーキ半分を勝手に1人で食えばいいと思う、というお話になる。
実際に調べてみると…
πの近似値が3であるゆとり世代には見えない差だが、そこには確かに差があった。
- nを無限大に飛ばしてAHの極限を調べる
「無限大に飛ばす」って正式な数学用語なんですかね?高校の数学の先生はよく言ってたけど、問題集に載ってるところは一回も見たことない。そんなわけで、もし自分の母校の数学の先生しか使ってない用語だったら最悪なので何をするのか先に示すと、こう言うことをする。
これをすると何がわかるかというと………
nを無限大に飛ばした時の極限の概形が分かるので、どういう形に近づけたらケーキを2n-1等分できるのかが分かる。ではやってみよう!
極限を出す前に同値変形するのは定石。三角関数の同値変形は多いので、極限を出すためにシンプルな同値変形が見つかることがある。また、3行目から4行目にある「sinx/xの極限を適用するためにx側をsinxのsinの中身と同じ形にする強引な通分」も三角関数の極限では定石だ。というわけで、AHはnが大きくなると0に近くなる。
これらからわかる結論はこちら!
・4等分のケーキを3等分する場合
→弦で切って三角形を2分割だと三角形ではない部分を食べた人が得をする。公平に分けるには三角形ではない部分の人からケーキをもらうべきである。
・n≧3のときに2n等分のケーキを2n-1等分する場合
→弦で切って三角形を2n-2分割だと三角形ではない部分を食べた人が少し損をする。どれくらい損をするかというとn=3(6分割)でも3%程度*2にとどまり、nが大きくなるともっと損失を減らせる(AHが短くなるということは増やすべき三角形が小さくなるということだから)。
以上です。皆さんももし、人数よりも一切れ多くケーキを切ってしまった時はこの記事を思い出して関数電卓と合わせて活用してみてください。
僕はロールケーキを食べます。それでは皆さんさようなら。