〜派出所にて〜
両津「行け行け行け行け行け!……何落馬してんだ!お前には生活がかかってるんだぞ!立ち上がれバカ!………クソ〜!」
麗子「相変わらずうるさいわね、両ちゃんは」
中川「無観客とはいえ、コロナでも競馬はやってるからね…」
両津「その通り。パチンコ屋もゲームセンターも休みだから仕事中にすることがない」
中川「仕事中には仕事をするべきですが…」
両津「しかし、警察官もテレワークにならないもんかね。前に自販機みたいなのを交番に置くシステムあったろ」
麗子「あれは、両ちゃんが都内じゅうにAVの音声流してメチャクチャにしたんでしょう?(※90巻参照)」
両津「親方日の丸も、マスク2枚配るくらいならこういうところにお金使って欲しいぜ。10万円くらいドーンとバラまくとかよ。」
部長「それなら、もう施行が決定したぞ」
両津「うわ!びっくりした!いるなら言ってくださいよ!今日は帰休でしょう!?」
部長「そうなんだが、見に来ないとどっかのバカが仕事中に競馬でもやるんじゃないかと思ってな」
両津「いやあ……そんなことないですよ…ハハハ…。でも、政府がお金くれるなんていつ決まったんだ?」
中川「ニュースで首相が10万円支給って記者会見をやっていましたけど…」
部長「この男はアニメか競馬くらいしか見ないからな」
両津「く…しかし、10万円突然もらえるとは最高ですね!部長!」
部長「その10万円だが、我々はもらえんぞ」
両津「え!?どうしてですか!?」
部長「公務員がこの国難の時期に10万円をいただくなら、10人で100万円、100人で1000万円、と集めて支給金をコロナ解決に寄付しようと思ってな。葛飾署の方針としてさっき決定したらしい。」
両津「ゲッ!?葛飾署の方針ということは…他の署は…」
部長「まだ分からんが、もらう署員はもらうだろ」
両津「そんなの不公平でしょう!中川も麗子もそう言えよ!」
中川「このような国難から国民を救うのが警察官だと思いますが…」
麗子「両ちゃん、公務員は全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではないのよ」
両津「クソ…金持ちの驕りが…。お前らが率先して寄付した結果、他の国民が寄付しようっていう空気を作ったらどうするんだ!『あそこは寄付してないらしい』って言って石投げる奴とか出てくるぞ!」
中川「それは…」
両津「そうだ、部長!私を葛飾署じゃない署に異動させてくださいよ!可愛い署員から10万円をふんだくらないような警察署の署員に!」
部長「お前だったらいつでも異動させてもいいんだぞ、さいはて署って言う署にな…。そこだったら10万円もらえるだろ」
両津「クソ…と、とにかく政府が俺にくれるんだから俺の金だあああ〜!!!」
中川「教えない方が良かったかな…」
麗子「そう、みたいね…」
〜後日、ニコニコ寮にて〜
屯田「給付金の集金に来たぞ」
モブ署員A「両さんだけまだ起きてないです…」
屯田「全く…あいつは…」
モブ署員B「大変だ!両さんの部屋にこんなものが!」
置き手紙「給付金はワシのものだ!リョーツ」
モブ署員A「昨日の夜遅くまで飲んでいたからそう遠くには行っていないはず…」
モブ署員B「しかし、さすが両さん…給付金のためなら、ここまでやるか…。」
屯田「感心している場合か!全署員で全力で探せ!」
〜インチョキ堂にて〜
両津「と、まあ、給付金持ってかれそうになったから逃げてきたってわけよ」
インチョキ堂の主人「さすが両さんだ…」
両津「ん?あれは…ヤバい!」
部長「あの、すいません。この辺に両津は来ませんでしたか?」
サッとカウンターの下に隠れた両津に銃口を突きつけられているインチョキ堂の主人「いや、来てないですよ」
部長「分かりました、絶対とっ捕まえてやるからな…」
両津「ふー、ありがとな。」
インチョキ堂の主人「やることが無茶苦茶だ…」
両津「用を済ませてさっさとズラかったほうがいいな…プレミアついてる切手とか硬貨とかないか?」
インチョキ堂の主人「最近入ったんだが、中国の記念切手なんか2000万円で…」
両津「10万円分に決まってるだろ!バカ!」
インチョキ堂の主人「え!?は、はい…」
両津「10万円をそのまま持ち歩くと捕まって終わりだから切手にして隠すんだよ」
インチョキ堂の主人「さすが…汚いな…。ちょうど10万円なんかないぞ、…この印刷ミスの月に雁は30万くらいするし…」
両津「それでいいじゃん、それ10万円で買うよ」
インチョキ堂の主人「いや…これはさすがに…」
両津「わしの情報でどれくらいお馬ちゃんで儲けたんだ?それを考えたら20万円くらい…」
インチョキ堂の主人「わ、わかった!これでいい」
両津「よし!そうと決まれば話が早い!早速拳銃のグリップに隠して、と。あばよ!」
中川「あ!」
両津「げ!」
中川「先輩を発見しました!インチョキ堂の前です!自転車に乗っています!」
両津「クソ、フェラーリだから速い!………あれは!」
直角に曲がって路地へ入っていく両津「また会おう、明智くん!」
中川「路地に入り込まれました!」
両津「下町はわしの庭みたいなもんだからな、ワハハハハ」
(路地の隙間からパトカーや警官が見えまくる)
両津「クソ…さすがに数が多い…となれば………よし、この場所に出ればこっちのものだ」
少し後に同じ場所に来た麗子「これ、両ちゃんの自転車じゃない?」
部長「うむ、そうだが…本人はどこへ消えたんだ…?あっ!このマンホール」
麗子「両ちゃん、まさか…」
部長「あいつならやりかねんぞ…」
〜下水道にて〜
モブ署員Cの声「待て〜!」
両津「まだ追ってくる…たかが10万円でしつこすぎるぞ、全く…」
両津の前から来たモブ署員D「さすがの両さんも、全署員相手じゃ歯が立たないかな?」
両津「くっ…挟まれた…。とでも言うと思ったか?」
モブ署員D「あっ!上に逃げられた!そこのマンホールから出る気か?」
両津「時間もちょうどいいな!よし、あばよ!」
〜下水道から地上に出て〜
モブ署員E「捕まえたぞ!両津!全てのマンホールで張り込みをしていたんだ!」
両津「クソ、離せ!」
モブ署員E「あ、逃げられた!」
踏切に来た電車にジャンプし掴まる両津「さようなら、涙くん!」
両津「このまま掴まっていれば高砂駅だからスカイライナーに乗れば…ん?」
両津「ゲッ!高砂駅が金町線だけ高架化していたのを忘れていた!ホームに署員は…いるな…仕方ない、さらばだ!」
高架線から飛び降りた両津「イテテテテ……とりあえず本線の線路に向かえば…ん?」
部長「捕まえたぞ、両津〜!」
両津「ゲゲッ!中川に部長〜!なぜこんなところに…」
部長「お前の行動などお見通しだ。金町線に乗った時点でここに飛び降りるか高砂駅に向かうかの2択だからな…身体の隅々まで調べろ!」
両津「クソ〜!」
部長「10万円が見当たらない…どういうことだ?」
両津「どっかに落としちゃったかもしれないなあ…」
部長「こいつが金をどっかに落とすなんて考えられん。金か命だったら金を選ぶ男だぞ」
中川「だからって拳銃や無線の中まで見なくても…あ!」
部長「なんだこの切手は?」
両津「あ、それは普通の切手です!何でこんなところに…」
中川「いや、これは月に雁っていう高い切手ですよ。しかも、印刷がズレてるということは…もしかして先輩、10万円でこれを買って隠したのでは…」
部長「なるほど…一件落着だな」
両津「チクショ〜〜〜〜〜〜!!!!」
〜後日、派出所にて〜
麗子「あれ?両ちゃんは?」
窓際でお茶をすする部長「本人の希望通り、さいはて署という署に勤務することになったよ…気になるなら手紙でも送ってあげるといい…この切手でな…」