恋する小惑星をダイレクトマーケティングして、技術大国ニッポンを取り戻したいんじゃ!(後編)

  • まえがき

以前の記事の後編です。恋する小惑星を視聴し、科学的に正しい知識と思考を身につけ、ウィルスの影響でトイレットペーパーがなくなるとかいうクソみたいな*1デマに流される*2ような、つまらない*3人間にならないようにしましょう。そして、若い我々の力で日本を今以上の技術大国、ものつくり大国にしていきましょう。大丈夫、筆者は君たちの仲間だ。筆者も君たちと同じく、「造幣局」と「不法投棄」をゾロリで覚えたタイプの人間だ。

ちなみに中編は、恋する小惑星の作品情報が電GO!2(あるいはプロ1)みたいに出るだけの記事なので読まなくても支障ないです。

恋する小惑星ダイレクトマーケティングして、技術大国ニッポンを取り戻したいんじゃ!(前編) - オルソンブログ http://orsonblog.hatenablog.com/entry/2020/03/04/203716

恋する小惑星ダイレクトマーケティングして、技術大国ニッポンを取り戻したいんじゃ!(中編) - 旭駅本屋 http://ithikawa.hatenablog.com/entry/2020/03/07/002520

 

  • OP

・夏の星座

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第9話のOPのロゴ背景から、夏の星座が登場。中央に鎮座する三角形は「君の知らない物語」でもお馴染みの夏の大三角である。こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブからなり、上がこと座、左下がはくちょう座、右下がわし座である。また、ベガは「織姫」、アルタイルは「彦星」である。七夕伝説に基づくと、当然ベガとアルタイルの間に天の川があるはずだが、描かれてはいない。

そのほかの星座はあまりしっかりと描かれていないという非常に思い切った構成のOP背景である。まあ、夏の星座で有名なのはこの3つを除くとさそり座(前編のアイキャッチ参照)くらいだが、高度がまるで違うので…。

水着回である第5話や、作中で夏の星座が扱われる第7話で出すべき映像なのだが、そうなっていなかったことや、第6.5話の存在などから察するに、おそらくあの頃作画が本格的にヤバかった可能性が浮上してくる。

 

前編でも書いたように、アイキャッチには、引き続き黄道十二星座(星占いの星座)が採用されている。

・おひつじ座(第7話:3/21〜4/19)

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おひつじ座は、前編OP映像の「秋の星座」でも紹介したが、ペガスス座に隣接している星座である。ペガスス座同様、秋に南の空に上がる星座だが、最も明るい星が2等星であるため、視認は困難。

 

うお座(第8話:2/19〜3/20)

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うお座ペガスス座の下にある星座であり、もちろん秋に南の空に見える星座である。この絵でも示唆されているように、うお座は一匹の魚ではなく、紐で縛られた二匹の魚の両端を表しており、より厳密にいうと、テュフォーンという怪物から逃げるために魚に変身した女神アフロディーテとその息子エロスを表しているという。

 

みずがめ座(第9話:1/20〜2/18)

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みずがめ座ペガスス座の下部に見える星座。ペガスス座がわかってしまえば、位置自体はわかりやすいのだが、最も明るい星でも約2.9等星なのでやはり視認が困難な星座である。よく見える季節は、ペガスス座同様に秋。

 

・てんびん座(第10話:9/23〜10/23)

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てんびん座はさそり座と近い位置に見える星座。そのため、かつて一部の星がさそり座側だったという過去を持つ。この星座にも2等級以上に明るい星はない。

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ちなみに、てんびん座の絵は「天秤を持つ人」ではなく、てんびんそのものを表しているのだが、星座にしたっていくらなんでも絵が自由すぎる、訴訟。

 

 

・おうし座(第11話:4/20〜5/20)

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おうし座は後述する冬のダイヤモンドの一部である、アルデバランという一等星を含む星座。冬の星座として見るにはやや西側に位置する星座で、ペガスス座とも近い。

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また、第9話でみらとあおが読んでいる雑誌の表紙にも「アルデバラン」の文字がある。

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OP映像が秋の星座だった時には、おうし座、うお座、おひつじ座、みずがめ座全て映っていた。探してみよう!

 

・やぎ座(第12話:12/22〜1/19)

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やぎ座は秋頃よく見える星座。周囲に目立つ星座がなく、1等星どころか2等星すら含まないため面積の割に見つけにくい星座である。

やぎ座は絵にもあるように半分魚である。これは、パーンという上半身が人間で下半身がヤギの神様が、テュフォーンという怪物に襲われた際*4に魚に変身して逃げようとしたら、上半身がヤギで下半身が魚になってしまった時の姿がパンティみたいで面白いから星座にしたから、という神話がある。

 

・マグカップ(8話〜9話)

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8話と9話には星座があしらわれたマグカップが登場するが、この星座は今回紹介した黄道十二星である。どの星座なのか探してみよう!

 

  • 第7話

・星空はタイムマシン

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人間は物体から発せられる(反射を含む)光が目に入ることで物体を視認する。光は秒速300000kmで通るが、宇宙はそれにしても広い。なので、光が星から出てから人間の目に入るまで時間がかかるのはありがちなことである。

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上図のように太陽の場合ですら光が届くのに500秒(8分20秒)かかるため、自分たちが見える太陽は8分20秒前の姿である。

ところで、光が1年で進むくらいの長さを1光年と呼ぶ。ニビジムの短パン小僧に告ぐが、間違っても速さの単位ではない。そして、地球と星座を構成する恒星の距離は光年単位のものがほとんどである。例えば、スピカ(おとめ座の一等星)は250光年離れているため今見えている姿は250年前のものである。このように、地球上から見える星には非常に遠いものもあり、そのような星は地球上では過去の姿を見ることになる。そういった星の中には、地球上からは見えるが実際にはすでに消滅している星もあると言われている。

 

アイピース

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接眼レンズのこと。望遠鏡や顕微鏡によって小さいものが大きく見える仕組みには最低2枚の凸レンズが関わっている。

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このうち、眼に接する方を接眼レンズ、観察物と対峙する方を対物レンズと呼ぶ。望遠鏡や顕微鏡の倍率は、接眼レンズ(アイピース)の倍率と対物レンズの倍率の積である。

 

土星

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土星は地球の9倍の直径を持つ惑星。木星同様(第1話「木星」の項目を参照)、水素やヘリウムなどのガスが大部分を占め、このような惑星を木星型惑星と呼ぶ。水素やヘリウムは気体の中でも密度の低さがトップクラスであるため、木星型惑星は大きくはなるが、密度は低くなる傾向にある。作中で言われている「水に浮いちゃうと言われている」も、まあそういうことであると言える。

 

アンドロメダ銀河

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アンドロメダ銀河は地球から250万光年の位置にあり、肉眼でもみることが可能な銀河。その名の通りアンドロメダ座の近くに見える………何?アンドロメダ座がわからない?確かにその通りだな?この企画に出てきた星座だとペガスス座カシオペア座(カシオペア座は後述)が近いぞ!

銀河の渦の直径は22〜26万光年で、我々が住む銀河系(第6話参照)と比べてもはるかに大きい。

 

夏の大三角

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詳しくは、OPの「夏の星座」の項を参照しよう。このアニメでは星座を線でつないだ絵はアイキャッチやOPでしか出ず、本編はあくまでリアルな見え方を追求しているため、教材としての見やすさはOPやアイキャッチの方が優れている。

見やすい季節はもちろん夏だが、全編のOPの星座早見の項でも書いたように、星は1ヶ月に30度回転するので、秋頃には西の低い空に、春頃には東の低い空にて見ることができる。

 

カシオペア座f:id:EF_510_514:20200322202040p:image

カシオペア座はW字に見え、北の空を北極星を軸に回転して見える星である。当たり前だが季節によってはM字に見える。北斗七星とは北極星についてほぼ対称な位置にあり、カシオペア座のWの真ん中の星とW字を延長した交点を1:5に

外分した点に北極星がある。また、見やすい季節も北斗七星とは逆に秋である。

 

・スペクトル分析

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「赤いトマトはなぜ赤く見えるのか?」という問いに対して、生物科としてか物理科としてかで2パターンの答えがある。生物科としては「リコピンという色素が含まれているから」であり、リコピンがどういう経緯でトマトの体内でできるかや、ヒトの体内での働きなどを調べるのが生物科の仕事である。一方、物理科としての答え、それは「トマトは赤い光のみを反射するから」あるいは「トマトは赤以外の光を吸収するから」である。

この話から何が言いたいかというと「星が何色に見えるか調べたら星が何でできてるかわかる」という考え方であり、この考え方を元に光や電磁波(光も電磁波の一種だが)を解析しているのが「スペクトル分析」である。星から放射される光などの波長を見ることで、その波長を放出する物質が星に含まれていることがわかる、という風な分析である。

スペクトル分析という考え方や実験手法そのものは中学どころか高校でも扱わない領域であるが、「恒星は表面温度によってある程度色が決まる」という話になると中学理科の範囲に落ち着く。表面温度の低い星は赤く見え、表面温度の高い星は青く見える。これは物質が高温で燃焼すると光の波長が短くなるからであり、赤い光は波長が短くて青い光は波長が長いからである。

また、先述の「星空はタイムマシン」の項目の通り、地球上に見える星は様々な年代の光である。そのため、それらの光を分析することで、その時代の宇宙の様子を推し量ることができる。

 

オリオン座流星群

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こんな形のからいっぱい流れ星が出てくるよ!(オリオン座がわからない人は第1話のオリオン座の項目を、流星群がわからない人は第2話のこと座流星群の項目を参考にして、あとは自分で考えよう!)

 

・リゲルとベテルギウス

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ともにオリオン座の一等星の名前。オリオン座の見つけやすさは前編第1話の項目にて書いたが、「一等星が2つある」というのも見つけやすさの理由と言えるだろう。3つ並んだ星の左上に赤く光るのがベテルギウス、右下に光るのがリゲルである。

 

平塚雷鳥

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平塚雷鳥は、大正から昭和にかけて男女平等や女性の参政権付与などを訴えた、女性解放運動家。本名は平塚明(ひらつかはる)。

1911年に青鞜という、女性向け雑誌を創刊。創刊号に寄稿した文章の冒頭「君は僕の太陽!早く元気になって僕のことを照らしておくれ!」だったか「元始、女性は太陽であった。今女性は月である。」だったかそんな感じの名言は、本人も自伝のタイトルにするほどで、「他によって生き、他の光によって輝く、病人のように蒼白い顔の月である」と続くこと含めてあまりに有名である。

 

池乃めだか

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池乃めだか吉本興業所属の芸人であり、1966年デビュー、1976年吉本新喜劇入団という、吉本興業ならびによしもと新喜劇の重鎮である。本名は中井昭彦。芸名からもわかるように身長の低さがトレードマークで、パンチしようとする→手で頭を抑えられる→パンチが届かなくなる→しかし、本人は満足げに「今日はこれくらいにしといたる」、という流れがとりわけ有名。そのほかにも「プロフィールでは身長149cmだが、これすらも鯖を読んでいて実際の身長は145cm」、「闇営業問題で記者に『吉本に何か言うことは?』と聞かれ、『吉本興業に言うことは、背高くなる薬開発してくれと…』と答えた」など身長の低さだけをとってもエピソードやギャグが無限にある、まさに天性の芸人である。

 

・ISO

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ISOは「International Organization for Standardization」の略。和訳すると「国際標準化機構」。その名の通り、国際的な数値基準を定めることを目的とした機関である。

知名度が高いのは環境マネジメントシステム(工場が提示しがちな、ISO9001とかISO14001とか)と今回出てくる「写真フィルム感度」である。

写真フィルム感度は写真フィルムが光を感知する度合いである。ISO感度が高いフィルムほど、弱い光も感じられる…つまり暗いところでも明るく映る。しかし、ISO感度が高いフィルムは光を感じる粒子が荒くザラつくという難点がある。

なおISO感度はフィルムの感度を表す指標だったが、デジカメにおいてもISO感度という基準は採用されている。また、デジカメの画素においても「高感度ほどザラつく」という現象自体は起こる。

 

・絞り

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カメラの内部に入る光の量を絞る機構のこと。カメラのレンズの内部にあり、穴の大きさを変えるという極めて原始的だが確実な方法で光量を調節している。

光が入らなさすぎると暗い写真となり、光が入りすぎると「白飛び」という輪郭を中心に真っ白になってやっぱり何も見えない写真ができあがってしまう。

写真の明るさは先述のISO感度や露出補正のほかに、シャッタースピードとレンズの倍率も重要な要素となる。

シャッタースピードはカメラ内部に光を入れる時間を表している。例えば、シャッタースピード1/100秒で撮った写真はシャッタースピード1/200秒で撮った写真の2倍の時間、シャッターを開けてカメラ内部に光を入れたので2倍明るくなる。しかし、カメラがわずかにでも動いたことによって起こる「手ブレ」や、被写体が動くことに関する「ブレ」に関して考えると、シャッタースピード1/100秒で撮った写真はシャッタースピード1/200秒の2倍カメラが動くため2倍ブレてしまう。シャッタースピードが速い方がブレないが、シャッタースピードが遅い方が明るい写真になる。シャッタースピードが速くて明るい写真を撮りたい場合は…ISO感度や絞りをいじくると良い。

 

・露出補正

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露出は、(ここでは)フィルムなどに光を当てて写真を作ることそのものや、その時に当てる光の量を表す。光の量は先述の通り、絞りとシャッター速度とISO感度によって決まるが、露出値というと絞りとシャッター速度によって決まる。カメラの露出値をイジる場合、通常は絞り値が変化する(絞りが開いたり閉じたりする)ことで明るさを変化させている。

 

・半押し

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半押しとは、デジタルカメラのシャッターボタンを半分だけ押すこと。シャッターボタンを全部押すと、シャッターが切れて写真が撮れるが、半押しをするとAF(自動で空気を読んでピントを合わせてくれる機能)が発動し、ピントを合わせてくれる。デジカメを使う場合、MF(撮影者が自力でピントを合わせる場所を決めること)でなければ、半押しでピントを合わせてから撮るというのが基本中の基本である。

ちなみに、写真を撮る時は、脇は閉めて、カメラと肩の距離は出来る限り近づけた方が腕の先端が動きにくくなり、手ブレを防ぐことができる。

 

・レタッチソフト

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レタッチとは、写真を編集すること。断じて、桜ねねがレタスを呼ぶときの言い方ではない。

レタッチソフトは、機能が単一のものから、複合的に様々な機能が付いたものまで、多くの種類があり、大体後者は体験版でないと有料かつ、体験版は機能縮小されがちである。具体的には、明るさ、ブレ、傾きなど写真の失敗を後から直す機能のほか、合成したり映す価値なしの被写体を消したりもできる。

 

  • 第8話

・冬のダイヤモンド

冬のダイヤモンドとは、冬の大六角形とも呼ばれ、おおいぬ座シリウス、オリオン座のリゲル、 おうし座のアルデバランぎょしゃ座のカペラ、ふたご座のポルックスこいぬ座プロキオンという6個の一等星を結んでできる六角形である。一等星というのは実は21個しかなく、そのうちの6個が近接して揃うというのは希少なことである。

ここにもう一個星をつなぐと「グレートG」と、みらは言っていたが………調べても出ないのでそんなものはないのかもしれないし、あるいは政府が機密事項を隠すために情報統制をしているのかもしれない。信じるか信じないかはあなた次第です。

 

・地学オリンピック

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地学オリンピックとは中高生を対象にした地学の大会で毎年開催。国内の予選本選を突破した生徒から国際大会に出場できる代表が選抜される。国際大会の会場はタイ。………と、桜先輩が本編にて説明。なお、会場は毎年変わり、タイが会場だったのは2018年のことである。2016年には日本で行われ、2012年には日本に誘致したが東日本大震災でお流れになった過去がある。また、今年開催された第12回地学オリンピックも予選は行なったが、本選およびロシアで行われる予定だった世界大会はコロナウィルスの影響で中止や延期となった。

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なお、そんな第12回地学オリンピック予選参加者全員に対して、恋する小惑星クリアファイルを配布するキャンペーンを行っていた模様。このアニメと地学オリンピック、ズブのズブである。

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というわけで、第8話冒頭から極めて丁寧な地学オリンピックの解説をかました桜先輩、スポンサーに気を遣いま賞受賞おめでとうございます。

 

・きっと昔は川だったはず

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小さな川を埋め立てて作った路地や道という例は全国的にあるようで、「暗渠」という名前が付いている。暗渠の見分け方として、「不自然に曲がっていたり高低差がある」、「明らかに何かにコンクリの蓋をしただけの道だ」、「車止めがあり自動車通行止になっている(重い自動車が入ってくると道が落ちちゃうから)」、「橋や水門など明らかに””そう””な形跡が残っている」、「もともと川なのでその道に面した家の入り口がない」などがある……………どれにも該当してなくない?

 

・クリノメーター

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クリノメーターは、傾斜を測るための振り子と、走向を測るための方位磁針を組み合わせたものである。実際には方位磁針と振り子が入っている部分には目盛りがついており、傾斜とは傾きのことであり、走向とは地層の層理面と水平面に平行な平面の交線の向きのことである。………何?傾斜はともかく走向の解説の意味がわからない?バッカお前…画像と解説がついてるだろ?

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地層の層理面とは積み重なる地層の色や成分が変わる境界面のこと。

交線とは平面や曲面が交わってできる線のこと。平面同士の交線はただ一つの直線であることが知られている。

上図では赤い平面と青い平面が交わってできる直線が交線であり、赤い平面は水平面に平行な平面、青い平面は崖である。崖のうち、赤い平面の高さに層理面がある場合、上図にある交線が「走向」となる。

クリノメーターは傾斜を測るときはクリノメーターの長辺を斜面になぞるように置いて振り子の角度を読み、走向を測るときはクリノメーターの長辺を地層の層理面に添え、クリノメーター自体を水平にする。

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走向を表す方位磁針は右(北が上だとすると東)に傾けると、走向を表す線は方位磁針の西側(SとWの間)に伸びる。そのため、クリノメーターは東西が逆になっている。よって、問題の答えは2番の「N60°E」となる。

 

・地層累重の法則

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地層は下から上に堆積する、というプリント類を片付けずに仕事や勉強を進める人であれば身をもって体感しているであろう当たり前すぎる説。もし、整理整頓できているがゆえに身をもって感じられない人は2段重ねの海苔弁を作りたかったらどうするかを想像してみよう!………な?当たり前だろ?

というわけで、この問題の「1番」と「3番」は正しいことがわかる。「4番」は知らないからこの記事のために後で調べるとして、「2番」が正しくないことはわかる。断層は地層が強い力を受けて割れ、上下に動いてしまったものを指し、褶曲は「しゅうきょく」と読むので前編第4話参照とする。そして、下図は断層と褶曲がある地層である。層中の番号は堆積した順を指す。

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この時、点Aでボーリングすると「4→3→2→1」と正しい順に地層が出てくるが、断層の真上である点Bでボーリングすると「4→3→2→3→2→1」の順に、しゅう曲の真上である点Cでボーリングすると「4→3→2→1→2→3→4→3→2→1」の順に地層が出てきてしまう。このように、複数の地点でボーリングせずに地層塁重の法則を使うと時系列が正しくならない場合がある。

 

・ウィリアムスミス

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ウィリアムスミス(1769-1839)はイギリスの土木技師であると同時に、「地層塁重の法則」と「地層同定の法則」を提唱し、世界で初めて地質図を作るなど、地質学の基礎を築いた人物である。

地層塁重の法則は前述の通りとして、地層同定の法則は「違う場所の地層で、同じ古代生物の化石が出てきたらその地層が堆積したのは同じ時代」というこれまた今となっては当たり前の法則である。

ウィリアムスミスはこの2つの法則を提唱すると同時に、その法則を実際に活用するために実際に地質調査を行い、地質図を作成。1799年にパース(イギリスの都市)、1815年にイギリス全土の地質図を完成させた。

 

示準化石

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その化石が埋まっていた地層の時代を表す化石。最も有名な例は恐竜であり、言うまでもなく恐竜の化石が出る地層は恐竜時代(正式な用語では中生代)に堆積したことがわかる。示準化石は世界中幅広く出土する方が時代を決定しやすく、またあまり長い時代を生きていると時代を絞りにくくなるため、「生育していた時代の短さ」と「生息地の広さ」が示準化石に求められる条件である。

また、第5話の解説通り、アンモナイト中生代の代表的な示準化石だが、中生代の中で細かく姿を変えていたため、中生代の中でさらに細かい時代を決定できる示準化石の一つとなっている。

なお、画像の問題だが、まず化石A、Bはそれぞれビカリアとクサリサンゴである。ビカリアは画像通り巻貝の一種であり、新生代に繁栄した生物である。また、クサリサンゴは紐のような鎖のようなものが絡み合うような形をしたサンゴで、古生代に繁栄した生物である。よって、答えは「4ビカリア→3新生代→8クサリサンゴ→1古生代」となる。

他の選択肢について、カヘイ石、三葉虫、べレムナイトはそれぞれ新生代古生代中生代示準化石である。一方、選択肢には「シジミ」と「造礁サンゴ*5」というバリバリ現役の生物がある。これらの化石は、地層が堆積した当時の環境を示唆するもので示相化石と呼ばれる。例えば、造礁サンゴの化石が発掘された場所は、その当時沖縄などのような暖かく浅い海だったことがわかる。示相化石に使われる生物の条件は「今も現存すること」と「生育環境が狭いこと」である。なお、シジミは「淡水の河口や湖」を表す示相化石である。

 

・地質断面図

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地面を切った断面の地質を表す図。つまり露頭でない部分を切って露頭にした時の図である。画像では左の図である。

問題文が見えないが、この図や記号から察するに「どの順番で起きたでしょうクイズ」は出題されているだろう。せっかくだから考えてみよう!

以下の出来事を起きた順に並び替えよ

ア、A層の堆積

イ、A層とB層の間の不整合(風や波による侵食で、層と層の境界が直線でなくなること)の形成

ウ、断層(強い力による層の切れ目)Fの形成

エ、溶岩の貫入(深い地下にあったはずの浅い地下にも出てくること)による火成岩Gの形成

地層累重の法則により、地層は古い方から積もる。これ以外にもこの問題は海苔弁やショートケーキを想像すると解きやすい。イとウの断層や不整合は層が堆積してから形成されることはない。

このことから、アはイとウの前には来ない。イとウではどちらが先か?断層が不整合面を切っていない。ということは断層ができてから不整合になったととらえるべきだろう。また、その逆に考えると火成岩Gは断層Fに切られているから、火成岩Gが形成されてから地層を切る力がかかったことになる。というわけでこの問題の正解は「エ→ウ→イ→ア」である。

 

・火山

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火山はマグマが噴出し、岩が固まってできた山であり、マグマや岩石が噴き出すことを噴火と呼ぶ。なお、この問題は知識問題なのでキッチリやると解説が難航する。

火山砕屑物(1番、4番、5番に登場)とは、火山から噴出した固形物のことを指す。ただし、その実態は溶岩が噴出前に固まったものがほとんどである。軽石(4番に登場)はマグマが固まる際に水分が蒸発し、水蒸気が吹き出るために多くの穴が空き、空洞もでき、名前の通り非常に軽くなった石のことである。なお、この水蒸気の噴出が過剰になると砕け散るため、石よりもさらに小さい粒となるが、この粒の大きさが2mm以下のものを火山灰、2mm以上64mm以下のものを火山礫(5番に登場)と呼ぶ。というわけで、軽石と火山礫は火山噴出物に含まれるため4番は正しく、5番の文章も火山礫の定義として正しい。なお、1番についてだが、溶岩は固まったものについても「溶岩」と呼ぶため(溶岩ヨガ、溶岩焼きなどの用法が身近にある)、これも正しい。

2番の「火山弾」は噴火によって飛んだ溶岩の飛沫が空中で固まったもの。表面張力によって球状になったまま固まった球状火山弾や、球状になったまま飛行中に捻れた紡錘状火山弾、液体のまま地面に落下してから固まったので平たい円盤状になった牛糞状火山弾など、でき方によってさまざまな形がある。

というわけで、残った3番が正解。火山噴出物は火山から噴出した「全ての物質」を指すのに対し、火山砕屑物は「全ての固形物」を指す。3番の文章も「火山噴出物」じゃなくて「火山砕屑物」となっていたら正しかった。

 

・地球規模の気流

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地球規模で見ると空気の対流は常にこの画像の左の図の向きに動いている。気流の動きというのは一般に「風」と呼ばれるが、自然界に現れる風の原理は地球規模にせよ季節風にせよ京葉線などを止める海陸風にせよ、1つの理論に集約して説明できる。

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一般に、物質は温度が上がると質量は変化せずに体積が膨張する。つまり密度が小さくなる(同じ体積あたり質量が小さくなる)。

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このため暖かくなった空気は上昇し、温かい場所付近の空気が減る。

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すると冷たい場所から空気が流れ込んでくる。これが空気の流れ、すなわち風の発生原理である。

このため、風は地表付近では冷たい方から温かい方へ吹く。これにより赤道付近と極付近については説明がつく。冷たい場所から温かい場所へ風が吹くことから、赤道に向けて風が吹き込むことや、極から風が吹き出すことがわかると思う。

しかし、これらの風は真っ直ぐに吹き込まない。これは「コリオリの力」という概念によって説明されるが、どうせこの記事で近々解説書くことになりそうだし、書かなかったら書かなかったでめでたしめでたしってなるくらいには書きたくないので、とりあえず「地球が西から東に動いているから空気も西から東に動くよね〜」か「大コリオリ神の御加護を受けし、極付近および赤道付近に吹く風は東から西に動く」のうち好きな考え方を選んでおいてください。そして、大コリオリ神によって東から西に傾く空気の動きに挟まれた、極付近でも赤道付近でもないちょうど真ん中のゾーンでは西から東に空気が動かされ続ける。つまり、一年中西向きの風が吹き続ける。この風を偏西風と呼ぶ。

 

温帯低気圧

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このページの右図にあるのが温帯低気圧の図である。温帯低気圧には4種類全ての前線が関与しており、前線から説明することになるため、説明は長期戦となる。

前線は寒気団と暖気団という2つの気団の衝突によって生じる。気団というのは空気の塊であり、空気がいっぱいあるので高気圧である(寒気団でも暖気団でもそう)。前線のうち暖気の部分はすぐ近くの寒気より温度が高いため、空気の密度が小さくなり、空気が上昇する(地球規模の気流、の項目で書いた風のでき方と同様)。上昇する空気の流れを上昇気流と呼ぶが、高温で空気が上昇するということは水が蒸発しやすいうえに水蒸気が上昇しやすいことを指す。つまり前線付近では雨雲が生じやすい。

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温帯低気圧はまず、同等の規模の寒気団と暖気団が衝突することで停滞前線が生じる。停滞前線は文字通り、寒気と暖気が一歩も引かず停滞する前線であるため、停滞前線がある地域では雨が長引く。梅雨前線と秋雨前線(梅雨と秋の長雨の原因になる前線)はともに停滞前線である。

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気団は高気圧であるため、前線の一部に空気が少ない(気圧が低い)部分が生じるとすぐに低気圧となる。これが温帯低気圧となる。

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低気圧は周囲より空気が少ないので、その部分に渦のように風が吹き込むが、この渦は北半球では反時計回り*6になる。なぜ反時計回りの渦ができるのか。これも大コリオリ神様からの聖なるパワーによるものである。

というわけで寒気団も暖気団も反時計回りに回転しだす。この時、上図の左側のように寒気が暖気を押している前線を寒冷前線、上図の右側のように暖気が寒気を押している前線を温暖前線と呼ぶ。なお、温暖前線寒冷前線より移動が遅いので、上図のような…というより、上図よりさらに極端に温暖前線寒冷前線に追いつかれそうな、この項目で最も上の画像のような状態となる。

寒冷前線温暖前線ではできる雲が異なる。寒冷前線の気団の境界面(前線面と呼ぶ)は寒気が暖気を押すので地面に対して垂直に近くなるが、温暖前線は暖気が寒気より密度が小さいため、暖気が寒気を押そうとすると斜め上に這い上がるようになり、気団の境界面が斜めになる。雲はこの面に沿ってできるため、寒冷前線では地面に垂直な雲ができるが、温暖前線では斜めに雲が伸びる。よって、寒冷前線より温暖前線の方が雲のできる面積が大きくなるが、寒冷前線にできる雲の方が単位面積あたりの降水量が大きくなる。問題用紙中でも「雲域」の広さが変わっているのはその影響である。

というわけで、この問題の答えは「3番」。文章は「温帯低気圧の東側には温暖前線が形成され、その前線付近で上昇流が形成される」となる。

 

エルニーニョ現象

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エルニーニョ現象は太平洋の赤道付近の東部(このデータを参照すると北緯0度東経140度付近にはパプアニューギニアがある)において海水温が1年以上上昇する現象のことを指す。日本の気象にも多大な影響を与え、1993年には大冷夏を、1994年には記録的な猛暑と水不足を引き起こし、こち亀91巻に、平成の米騒動をパロディにして、海外産の水を国産の水とブレンドしたり抱き合わせて売ったり、水を買い占める最悪の水屋が出てきたりする回が掲載されることとなった。

エルニーニョ現象は赤道付近の太平洋上で吹く東風(なぜ常に東風が吹いているかは地球規模の気流の項目を参照)が弱まることにより、赤道付近の太平洋東部で温まった水が西部まで行き渡らずに、東部のみ海水温が上昇する。海水温が上昇すると、風は冷たいところから温かいところに吹く(これも地球規模の気流の項目を参照)ため、西からの風がより強くなり、余計にエルニーニョ現象が強化される。すると地球規模の気流が変わってしまい、世界規模で異常気象を及ぼすことになる。

 

・日食と月食

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地球は太陽の周りを公転し、月は地球の周りを公転している。このことから「月が太陽に被っちゃう時」や「地球の影に月が被っちゃう時」が生じることがあるとわかる(下図参照)。

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そして、月が太陽に被っちゃう瞬間を日食、地球の影に月が被っちゃう瞬間を月食と呼ぶ。太陽や月が全て見えなくなる現象を皆既日食あるいは皆既月食と呼び、一部のみ見えなくなる現象を部分日食あるいは部分月食と呼ぶ。では、画像にある地学オリンピックの問題を考えてみよう。

上の図において「地球の北極」「太陽の北極」「月の北極」はそれぞれ、地球、太陽、月を表す円の中心である。地球の地軸の傾きを配慮していないが、この問題では太陽と月の北極は地球からの見え方で定義されているので大丈夫である。また、前提として大事なのは月の公転と地球の自転は向きが一緒(この図のように北極を見下ろすように地球と月を見ると、月も地球も反時計回りに回っている)という事実である。

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日食は観測者が太陽として見えている視野の中、つまり図中の斜線ゾーンに月が入ると日食として観測できるようになる。月は(この図では)反時計回りに回るので、図の矢印のようにゾーンに入っていく。これを観測者視点で想像すると太陽の右側から月が入ってくるように見えるだろう。

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月食の場合も同様である。月食は地球の影、つまり図中の斜線ゾーンに入ると月が見えなくなる。そして、月は矢印のようにゾーンに入るので、左から月が食べられていくことがわかる。

よってこの問題の答えは「2番」である。

 

火山岩と深成岩

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前編第2話の安山岩の項でも解説したのだが、マグマが固まってできる火成岩のうち、地上浅くで速く冷やされたものを火山岩、地下深くでゆっくり冷やされたものを深成岩と呼ぶ。結晶は核、つまり固まったものが付着する場所を持つと大きいものを形成しやすくなるため、小さい結晶ができた状態でさらにゆっくり冷やされると小さい結晶を核とする大きな結晶が生まれる。よって、火山岩と深成岩はルーペなどを使って結晶の大きさを見ることで簡単に確認できる。

つまり、この問題では火成岩Aが火山岩、Bが深成岩であることがわかる。Bのように結晶の大きさがある程度決まっている組織を等粒状組織と呼び、Aのように目立つ大きさの結晶が斑(まだら)である組織を斑状組織と呼ぶ。

 

・ブレーカー

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電気は基本的に家の外から電線を通って入ってくるが、家電同士の回路のつながりは直列つなぎではなく並列つなぎである。なぜなら、下図の例において家電A、B、Cを直列つなぎすると、家電Aのスイッチを切っただけで家電B、Cにも電気が来なくなるから。

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並列つなぎでは、回路全体に流れる電流の量(上図の赤い場所に流れる電流の量)はそれぞれの家電に流れて消費される電流の量の和と等しい。そのため、家電を使いすぎると上図の赤い点にあたる部分に非常に多くの電気が流れてしまい火災などの危険が生じる。そこで、電力会社は規定量以上の電流が使われた途端に回路を遮断する機構をつける。これがブレーカーである。

一般に電気エネルギーは運動エネルギーや熱エネルギーや光エネルギーなどに変換されるが、最も消費電力が大きいのは熱エネルギーであることはこち亀にも書かれており、本編のように冬場に暖房をつけながら電磁調理器(あるいは、電子レンジやドライヤー)を使った時に、ブレーカーは落ちがちである。

 

・デイサイト質溶結凝灰岩

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「デイサイト質」「溶結凝灰岩」の2つに分けて解説しよう。白色鉱物の主成分となるSiO2(石英など)の含有量が流紋岩安山岩の間の火山岩のこと。第2話の火成岩の項目にあるように、代表的な火山岩として流紋岩安山岩玄武岩があり、「(新幹線は)カリアゲ」という語呂合わせが有名だが、このリアゲの順に白色鉱物の割合が減り、有色鉱物の割合が増えるということも覚えられる。そして、デイサイトはそのリとアの間に入り込んでくる火山岩なのである。

溶結凝灰岩は大量の火山噴出物*7の下層が熱と圧力にさらされた結果圧縮され、気孔が減少する「溶結」が起こることでできた、高密度で硬い堆積岩である。なお、実際は最下層では元々の地面による冷却が起こるため、溶結凝灰岩が得られるのは火山噴出物が作る岩石のうち中央部分のみである。

本編でのセリフにある通り、秋田県男鹿半島にある「鹿落とし」という崖(など)で多く産出される岩であり、そこで取れた溶結凝灰岩を温めたものを鍋に入れて鍋を温めるという、リストランテリンカーンで日村が作っていたシチューのようなシステムの鍋こと、「石焼桶鍋」はこの地域の郷土料理となっている*8

 

・サーマルブランケット

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人工衛星は宇宙という、地球よりも太陽の光と熱をモロに受ける過酷な環境下で機械を稼働させることが求められる。そこで、人工衛星の機械部をサーマルブランケットという断熱材で包み込む。

サーマルブランケットの素材はポリイミド樹脂という樹脂フィルム。下図のような分子構造を持つ。

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この結合が非常に強力であるため、一般的な有機高分子と比べて非常に硬く熱分解もしにくい。この頑丈な樹脂フィルムを空間を作りながら(イメージ的にはふんわりと)重ねることで、断熱効果を作り上げている。そして、表面に銀やアルミニウムをつけることで本編のように金ピカにし、光の反射率を上げて断熱するという、通称水ダウ雪山庄司智春システムも採用されている。

なお、人工衛星の場合、断熱しすぎると機械から発生する熱が内部にこもるため、小規模な人工衛星ではサーマルブランケットで全面を包まず、上手く穴を開けて内部の温度がいい感じになるように*9している。

 

・水晶(紫水晶と紅水晶もここで解説します)

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水晶は第4話の双晶水晶の項目にもあるように二酸化ケイ素を主成分とする透明な石であり、ガラスの主成分である。なお、水晶玉とはガラス玉のことであり、未来が占えるとかでなければ非常にポピュラーな玉でしかない。

一般に水晶は無色透明だが、トパーズ(第5話参照)のように水晶に成分が混入することでカラーバリエーションが生まれる。これが紫水晶と紅水晶である。

紫水晶放射線を受けて4価になった鉄イオンである。解説は割愛するが、鉄イオンは通常2価か3価が相場なので4価というのはめちゃすごな鉄イオンである。不安定なイオンなので熱や紫外線を受けると分解し、退色する。

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なお、紫水晶アメシストとも呼ばれ、怖い人を鎮めるパワーストーンとしても有名である。

紅水晶も「二酸化ケイ素+金属イオン」のセットだが、この金属イオンが何なのかはよくわかっていないらしい。アルミニウム、マンガン、チタンなどによるものとする説が有力視されているようだ。また、こちらも紫外線によって退色する。

他にも、三価の鉄イオンを含むことで黄色くなった黄水晶、表面の鉄分が酸化してオレンジ色になった蜜柑水晶、サメの軟骨を梅肉で和えてできる梅水晶などさまざまな水晶がある。

 

虎目石

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虎目石は虎の目のように黄色くきらめく石であり、クロシドライトという繊維状の石に石英(またも二酸化ケイ素)が染み込んでできた石である。

なお、クロシドライトとは角閃石の一種であり、繊維状の石であることから、防火剤に積極的に使われていたが、吸い込むと肺ガンの原因となることから使用が停止されている。なお、クロシドライトの和名は「青石綿」。

 

・オニキス

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オニキスは瑪瑙同様、二酸化ケイ素が晶洞(前編第5話のジオード参照)に入り込んでできたものであるが、平行な縞模様が見られるものを指す。和名は縞瑪瑙、とあまりにもそのまま。一般に黒色や白色が多い。

 

レッドジャスパー

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ジャスパーとは細かい二酸化ケイ素の破片が集まり、不純物を含むことで何らかの色味を持ち、透明さが皆無となっているものを指す。透明さがなくなるほどの不純物が混入しているので、瑪瑙や後述の翡翠より不純物が多い。

 

翡翠

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ヒスイ、と読む。緑色の鉱石。「翡翠」は、中国では、美しいものとしてヒスイのこともカワセミのことも指していたため、カワセミとヒスイは漢字が一緒である。新潟県糸魚川市が産出地の一つとして有名であり、新潟県内には「日本海ひすいライン」という鉄道路線もある。

ナトリウムが化合した輝石と、カルシウムが化合した角閃石とがあり、前者を硬玉、後者を軟玉と呼ぶ。しかし、あまりにも見た目と性質が似ているため2つの石は区別されることなく「ヒスイ」と総称される。硬玉、軟玉と呼び分けているがモース硬度*10にも大きな差はない。

 

  • 第9話

・チョコレートの作り方

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作中で言われているように、チョコレートはただ単に溶かして固めれば完成するのではなく、美味しいチョコレートにするには固める際の温度管理が必須になる。作中で触れられているのはⅣ型とⅤ型のみだが、Ⅳ型があるということはⅠ〜Ⅲ型もあるし、なんならⅥ型もある。

そもそもⅣ型とかⅤ型とか言われているのが何の型番かというと「カカオバターの結晶」である。チョコはカカオ豆を焙煎してからペーストにしたもの(カカオマスと呼ぶ)に、砂糖やミルクやカカオバターを加えてできた液体を冷やして固めるとできるが、カカオ豆中に、割合にして半分くらい含まれる油脂分のことを「カカオバター」と呼ぶ(ココアバターとも呼ぶ)。なお、チョコレートのベースとなる液体はカカオのペーストにカカオバターを加えているため、カカオバターの割合が非常に高い。

そんなカカオバターも、冷えて固まると結晶を作るが、その構造によってⅠ〜Ⅵ型が割り振られている。番号が若いほど急速に冷やされてできる結晶である。

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ざっくりした原理は第8話の「火山岩と深成岩」の項目で解説した「ゆっくり冷やした方がデカくて規則的な構造の結晶になる」という原理で説明できる。この原理はあらゆる物質の結晶に適用できる。ほら、カップ麺の容器にミョウバンの結晶ぶら下げる実験とか見たことあるでしょう?高校受験組は知らんけど、中学受験経験者なら絶対見たことあるはず!

というわけで、急速に冷やしてできる結晶は小さく、構造が不規則で不安定である。そのためチョコレートが硬度を保つことができず、型抜きチョコを作ろうと型に流し込んでもうまく固まらない。作中ではⅣ型がそれに該当するが、Ⅳ型以上に急速に冷やしてできるⅠ〜Ⅲ型の結晶も同様の問題を抱えている。

では、ゆっくり冷やせば美味いチョコになるのかというとそういうわけにはいかない。なぜなら、一番美味しい結晶はⅤ型だが、あんまりゆっくり冷やすとⅥ型の結晶が現れてしまうからである。Ⅵ型の結晶はゆっくり冷やして作られた大きな結晶なのだが、今度は結晶が大きすぎるため、ザラザラした食感を与えてしまったり、カカオバターの白い結晶が表面に現れて見た目から最悪になったりしてしまう。美味しいチョコを作るためには「ちょうどいい速さで冷やすこと」が必須条件なのだ。

なお、この「ちょうどいい速さ」というのはチョコレートの量にもよるが、数時間かかるものである。しかし、撹拌の仕方によってⅤ型結晶を形成しやすくなることがわかっており、数十分まで短縮することにも成功したという………結局長いな。

 

カッシーニ

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1997年にNASAが打ち上げた土星探査機のこと。2004年6月30日に土星軌道に到達し、同年12月25日に惑星探査機ホイヘンス・プローブを切り離し、翌年1月14日に土星の惑星「タイタン」に着陸し、2015年1月14日には着陸10周年を記念し、タイタンで得られたデータに関するシネマライブが行われた。その結果、地球でいう水のようにメタンやエチレンが液体となり、時に蒸発し、時に雨となって循環していること(液体メタンの海も見つかっている)などが明らかになった。なお、2017年4月に土星土星の輪の間を探査機史上初めて通過し、2017年9月に土星に不法投棄する形*11で運用終了した。

 

・月の成り立ち

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月の成り立ちには、本編で言われているジャイアンインパクト説と捕獲説の他に、親子説や兄弟説などがある。

親子説は、地球の自転や公転の際に一部が遠心力で飛び出し分裂したという説、兄弟説は地球が出来た時と同時期に同様の成分によって月が作られたとする説である。

捕獲説は、その名や本編のセリフ通り地球の引力下に月が引き寄せられたとする説である。一方、ジャイアンインパクト説は地球に隕石が衝突し、破片が地球の引力下で集積されて一つの月になったとする説である。

地球のマントル(地下6〜600kmの部分までを地殻と呼ぶが、その下の部分をマントルと呼ぶ。マグマなどはマントルに貯蔵されている)と月の構成成分がある程度似ていることや、親子説で月ができるほどの遠心力を地球が持っていたかというと甚だ疑問であることから、ジャイアンインパクト説が支持されている。

なお、2017年に、ジャイアンインパクト説では地球のみならず隕石の破片も発生するため、隕石1個だけと考えると月と地球の構成成分はあまりにも類似性が高すぎるという計算結果が生じ、本編の絵のように巨大隕石1発で月ができたのではなく、小さい隕石がいっぱい降ってきて月を作ったという説(複数衝突説)が有力視されている。

 

・東方最大離角

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前編のOPでの「宵の明星」の項目でも出した図だが、内惑星(ある惑星よりインコース側を公転している惑星。地球から見たら水星と金星のこと。)は地球に近すぎても見えないが、当然遠すぎても見えない。そこで、ギリギリ見える最も遠い距離(「角」とつくことからもわかるように、実際には距離ではなく太陽と地球を結んでできる直線と、地球と内惑星を結んでできる直線がなす角が最も大きくなるところ)を「最大離角」と呼ぶ。

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内惑星は最大離角の時に最も見やすくなる。そして、最大離角には東側と西側があり、上図の場合は下側が東方最大離角ということになる(太陽は北半球でも南半球でも東から昇るので)。

 

  • 第10話

赤道儀

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望遠鏡を回転させることで、星の日周運動(前編第2話参照)を打ち消せる装置のこと。使い方としては、極軸(赤道儀の部品の一つ)を地軸に平行になるような高度に傾け、極軸ごと望遠鏡を日周運動に合わせて回すと、星の日周運動を望遠鏡が追いかけることができるようになり、シャッター速度(第7話参照)を長時間にした星の撮影などが可能となる。

なお、せっかくなのでここで「高度」という概念を解説する(後述する環水平アークの解説で出てくるから)。高度というのは星の高さを表す方法である。宇宙には上下がないので、星の高さは地面からの標高と異なる方法で決める必要がある。そこで、角度を使って高さを考えるようになった。これが高度である(下図参照)。

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さて、極軸を地軸と平行になるような高度に傾ける方法を考えてみよう。

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まず、地面は地球の接線という形で表せる。上図は地面に普通に望遠鏡を置いた場合である。「極軸を地軸に平行になるような高度に傾け」ると下図のようになる(便宜上、下図では望遠鏡ごと地軸と平行にしている)。

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すると地軸の延長線上にある星が見えるようになる。北半球において地軸の延長線上にある星とは何か?それは北極星である。北極星は地軸の延長線上にあるため、常に真北に見える。さて、北極星の高度を考えてみよう。

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上図のように北極星の光は地軸の延長線側から、地軸と平行にやってくる。そして、地表と北極星への目線がなす角は上図の赤い部分で表され、これこそが北極星の高度となる。一方、青い部分は観測地点の緯度を表している。また、「観測地点を通り、赤道面に平行な直線」を補助線として上図に追加している。この補助線は赤道面に平行なので、錯角より「角A=緯度」が成立する。また、地軸と赤道面は直交するので90°をなす一方で、円の接線と半径は直交することから、そちらも90°をなす。よって、上図において、A+B=B+北極星の高度=90°が成立する。両辺からBを引くと、北極星の高度=Aとなる。このAは緯度であるから、北極星の高度は緯度に等しい。例えば、北緯30°地点では北極星の高度は30°である。よって、極軸を地軸に平行な向きにする調整には「望遠鏡に北極星を映す」あるいは「観測地点の緯度を調べ、望遠鏡を北に向け、極軸を緯度と同じ高度に傾ける」と成功する。

 

・ジオマンシー占い

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小石や土を一握り持ち、手を離して落とす。この時の小石の散らばり方によって未来を占うもの。本編でも言われているように「土占い」とも言われている。

 

・ブルーレースアゲート

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作中でも言われていた通り、和名は空色縞瑪瑙で、精神的に落ち着かせて無理をさせすぎない効果があるとされている。地下水のあるところで形成されやすく、地下水中に溶け込むほんのわずかな成分によって青色となっており、それ以外の成分は水晶や瑪瑙やジャスパーと全く同じ、すなわちほぼ二酸化ケイ素の塊である。

 

・環水平アーク

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光は透明でも違う物質の内部に入ると屈折する性質がある。しかし、この屈折率は光の色によって異なる。そのため、平行な面からなる立体では屈折前と同じ向きに戻るだけだが、平行ではない2面で屈折が起こる状態を作ると色ごとに光の向きが変化し、わかりやすく分解する。

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プリズムという三角柱のガラスはこの原理を利用して作られており、太陽光を通すと太陽光の白い光は、いろいろな色が混ざってできていることがわかる。上図は屈折率低い赤と屈折率高い青のみで誤魔化しているけども。

プリズムは人工的に虹色の光を作る物質だが、プリズムではない虹も、水滴や氷晶中の平行ではない2面を通って光が屈折してできたものという点で、プリズムから出る光と同様である。

環水平アークは、六角形の氷晶*12によって分解された光が、高度46°の薄雲に投影されて見えるものである。非常に高いところに現れるため、太陽高度が58°以上の時にしか出現しない。

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先ほど同様に太陽高度を考察してみる。観測地点では太陽が南中している。そして、「観測地点を通り、地軸に平行な直線」を引くと先ほどの北極星の図と向きが変わっただけということがわかり、太陽高度は「90-緯度」となる(赤いところが南中高度で、青いところが緯度)が………実は地球の地軸は23.4°傾いている。この傾きによって、夏と冬が存在し、昼と夜の長さが日によって変わる(下図参照)

 

そのため、2個上の図は実態と違うことになる…が、全くの無駄ではない。2個上の図は昼と夜がちょうど12時間ずつの日の太陽高度の考察に使用できるのだ。その日は「春分の日」、「秋分の日」と呼ばれ祝日となっている。

一年で最も地軸が太陽側に傾く日は、最も太陽の南中高度が高く日照時間が長くなる。一方、一年で最も地軸が太陽と逆側に傾く日は、最も太陽の南中高度が低く日照時間が短くなる。この日をそれぞれ夏至冬至と呼ぶ。夏至冬至の太陽高度を考察する際には、春分秋分の日の太陽高度の図を23.4°傾けると良い。

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2つ上の写真が夏至でその下の写真が冬至。地軸および赤道面が、夏至は太陽に近づくように、冬至は太陽から遠ざかるように23.4°傾いている*13

上図ではともに、赤い角度が南中時の太陽高度を表すが、赤道面が太陽の光と平行ではなくなってしまったので、新たに地球の中心を通り、太陽の光と平行な線を引く。

夏至の場合、青い部分の角度+23.4=緯度となるより、青い角度=緯度-23.4となる。そして、同位角より青い角度とAが等しく、太陽高度を表す赤い角度とAの和が90°であることから、赤い角度=90-A=90-(緯度-23.4)=90-緯度+23.4°となる。夏至春分の日より太陽高度が23.4°高くなる。

冬至の場合、青い角度が緯度を表す。Aは緯度ではなく、緯度+23.4と同位角なので、A +赤=90°より、太陽高度=90-A=90-(緯度+23.4)=90-緯度-23.4となる。冬至春分の日より太陽高度が23.4°低くなる。

このことから、緯度が55.4°以上の土地では、夏至だとしても太陽高度が58°以上にならないので環水平アークは見られないことがわかる。さらに、秋分の日になると、太陽高度が「90-緯度」になるため、緯度が32°以上の土地では環水平アークを見ることができない。緯度32°の地点での次回の環水平アークチャンスは春分の日ということになる。なお、東京の緯度は北緯35°であり、北緯32°というのは宮崎市のやや北くらいを指す。つまり、宮崎市春分の日に環水平アークチャンスがあるが、逆にいうと日本のほとんどの地域は春分の日に環水平アークを見ることができない。

冬至の日に環水平アークを見れる条件は緯度が8.6°*14以下であることである。この領域はアフリカ大陸でいうとガーナ、ナイジェリア、エチオピア南部からアンゴラタンザニア北部までくらいを指す。コンゴ民主共和国ですらこの領域から外れる部分が3割程度あるが、ケニアコンゴなどは全土がこの領域に入っている。……………コンゴコンゴ民主共和国って違う国なんですね…。

 

・コリメート撮影

撮影法の名前だが、本編のように、望遠鏡の接眼レンズにカメラのレンズを押し当てて写真を撮ろうとする手法である。以上。

 

  • 第11話

・石垣青少年館

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厳密には「石垣青少年の家」。リアルすぎるわしの絵が施されたわし座(OP映像の「夏の星座」を参照)の周囲に、うろ覚えの井脇ノブ子のスローガンが書かれたデザインや、きら星チャレンジこそないようだが実際に天体観測系のイベントが多い点など、再現度や一致度は高い。

青少年向けの宿泊施設として、天体観測のみならずBBQやカヌーなど様々なレクリエーションが行える県立施設である。

 

マックスコーヒー

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マックスコーヒーはコカコーラ社が発売するジョージアシリーズのコーヒーでありながら、千葉県や茨城県などでのみ販売されるローカル飲料である。千葉の郷土愛が無駄に出ている作品でおなじみの、やはり俺の青春ラブコメは間違っているの主人公である比企谷八幡の好物として知られるほか、これを愛飲するアニメキャラはなぜか多い。

味は「コーヒーを牛乳ではなく練乳で割ったもの」、「コーヒー風味の練乳」、「全く苦くない」と称されるほどに、とにかく甘い。コーヒー飲料でありながら、小学生でも飲める。またカフェインと糖質を同時に取れる飲料としても有用である。2009年に全国販売されたが、売れ行きが芳しくなかったのか、徐々に販路を縮小し、ローカル飲料に戻りつつあるのだとか。

なお、筆者は一度だけ「マックスコーヒーV」というバニラ風味で7種のビタミンを配合した謎のシリーズを飲んだことがあるが、マックスコーヒーオロナミンCを混ぜたような、ちょっとどうかしている味がする代物であり、たちまち販売中止となった。

 

・VERA

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本編でも言われている通り、宇宙の地図を作るための観測方法。VLBI(前編第4話「つくばVLBIアンテナ」参照)同様、恒星から放たれるメーザー*15を受信する時間を測定することで位置を確認している。

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VLBIの解説に使った画像の使い回し。VLBIではアンテナ同士の距離を測るのに、恒星からの電波を受信するが、VERAでは地球が自転し、アンテナが動くことで生じる受信時間の差で恒星の距離を測定する。え?何を言っているのかわからない?やはり画像使い回しではいかんのか…?

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VERAでは地球が公転することによる星が見える位置のズレ方(年周視差と呼ぶ)や、位置を変えたことによる星が見える位置のズレ方から測量を行う。

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太陽と地球の距離は測定日によって決まっている。さらに、地球と星の向きを2つの日取りや2つの場所で測定すると1つの辺と2つの角度が定まるため、三角形が一つに定まる*16

このような測量方法を「三角測量」といい、山の標高を測る場合などにも使われる非常にポピュラーな測量方法である。

なお、星座を作る星は非常に遠くにあるため、年周視差はさほど大きくない。そのため、肉眼での観測ができないどころか、観測は困難を極め、年周視差が観測されないことが地動説を否定する証拠と言われるほどだった。実際、コペルニクスが地動説を提唱したのは1543年だが、年周視差が初めて観測されたのは1838年のことだった。

 

・むりかぶし望遠鏡

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むりかぶし望遠鏡は、石垣島天文台に備わっている望遠鏡のこと。石垣島は「沖ノ鳥島は島ではなく岩」という考え方に基づくと、日本最南端に近い島であり、位置的には台湾に非常に近い島であるため、南十字星*17など、本州では見られない星が観測でき、88種類のうち84種類が見られる地点である。また、緯度が低いため偏西風(8話「地球規模の気流」参照)を受けづらく、その影響による星の瞬きが少なくなるので、日本で最も天体観測に向いている場所とされている。

そんな石垣島にあるのが「むりかぶし望遠鏡」。むりかぶし、とは沖縄の方言で「星の集まり」を表す単語であり、本編で言われている通り、ここでは「すばる」を表し、かの有名なすばる望遠鏡と同様に「反射望遠鏡」というシステムを採用した望遠鏡である。

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反射望遠鏡とは上の画像のように凹面鏡を2枚(以上)組み合わせて広い視野の光を目に集めて入れることで拡大する望遠鏡である。反射鏡(反射望遠鏡に使う鏡)は大きければ大きいほど視野が広いが、すばる望遠鏡の反射鏡は世界最大で、直径8.2mである。

一方のむりかぶし望遠鏡の反射鏡は105cm。すばるには遠く及ばないが、九州沖縄では最大級を誇る反射鏡を持つ望遠鏡である。

 

ルートビア

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ルートビアアメリカで販売されている飲料。沖縄県は1945年から1972年までアメリカの領土であったため、今でもルートビアが販売・常飲されている。

スパイス、ハーブなどとハチミツやメープルシロップを混合させて作っており、クセの強い香りや味はしばしば湿布に例えられ、コアなファンが多数存在する飲料である。

 

・チンさむロード

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チンさむロードとは、2009年から2012年に放送されていた番組「人志松本の〇〇な話」の人気コーナー。自動車(ロケバス)が段差を通過することで身体が浮き上がり、チンが寒くなるような道を紹介するという、なかなか意味不明なコーナーである。ちなみに、この現象に「チンさむ」と名付けたのは野性爆弾ロッシーである。また、チンさむという名前に反して、番組がゴールデンだった頃は番宣女優がよく登場し、よく揺られていた。

番組が終了した2012年5月に、千葉県松戸市でこのコーナーを真似して、坂道を時速90キロで走り抜けた女性が、チンさむ後にハンドル操作を誤って男子大学生を轢き殺し、同乗者2名にもケガを負わせるという事件が起きており、運転手は危険運転致死傷罪で起訴されている。安易にTV番組を猿真似して遊んではいけない、というお話。

 

・衝の位置

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衝の位置とは、地球から太陽系の惑星を見たときに、その惑星が太陽と正反対にあること…つまり、画像のような位置関係を指す。当然だが、内惑星に衝の位置は存在しない。本編でも解説されている通り、惑星が最も近くなるうえに、地球の真裏、すなわち夜に観測しやすい位置であることから、惑星の観測に最も適している位置関係と言える。

地球は公転しているが、他の惑星も公転しており、その周期*18は惑星によって異なる。そのため、惑星が衝の位置に来ている時期はごく限られている。例えば、地球から最も近い外惑星である火星について。地球の公転周期は365日であるが、火星の公転周期は687日である。これは、地球が1日経つと1/365周公転するが、火星は1/687周しか公転しないことを指す。

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地球と火星は同じ向きに公転するため、衝の位置にあった火星と地球は1日につき(1/365-1/687)=322/250755周ずつ差がつく(上図参照)。よって、地球が火星に一周差をつけ、再び衝の位置となるのは1÷322/250755、つまり250755/322≒779日≒2年2ヶ月後である。一般に遠い惑星ほど公転周期が長くなるため、衝の位置になるのが何日ごとかの周期も長くなる。どうでもいいが、「衝の位置」っていう名前、つけ方が千鳥ノブすぎやしないか?

 

ドクターペッパー

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ドクターペッパーは1885年にアメリカで開発・販売された飲料。コカコーラの1年先輩にあたる。アメリカでは常飲されている、クセがすごいのでコアなファンがいるが嫌いな人もいる、という点がルートビアと共通しているが、ルートビアと異なり、沖縄県以外にも首都圏および静岡県で販売されている。

ドクターペッパーは、ドクターペッパー社から作られるが、独立した瓶詰業者は持たず、日本(などアメリカ以外)では、販売をコカコーラ社に委託している。そのため、日本ではコカコーラ社の赤い自販機によって購入できる(ただし、首都圏、静岡県沖縄県のみ)。

 

  • 第12話

・離心率

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「ある点への距離とある直線への距離の比が常に等しくなる点の軌跡」として曲線が定義されているとき、(ある点への距離)/(ある直線への距離)の値を離心率と呼ぶ。また、この場合のある点を「焦点」、ある直線を「準線」と呼ぶ。焦点が(0,1)、準線がx軸、離心率がeである曲線の式は以下のように求められる。

このことから、以下のようなことがわかる

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e=0のとき、y^2*19の係数が1となるため、離心率0の曲線は焦点を中心とする円となる。

0<e<1のとき、y^2の係数が正となるため、離心率がeが0<e<1となる(焦点からの距離が準線からの距離より小さい)曲線は楕円となる

e=1のとき、y^2の係数が0となるためy^2の項がなくなる。これをyについて解くと二次関数となることから離心率1(焦点からの距離と準線からの距離が等しい)の曲線は放物線となる。

1<eのとき、y^2の係数が負となるため、離心率eが1を超える(焦点からの距離が準線からの距離より大きい)曲線は双曲線となる。

惑星の軌道は楕円ではあるが、放物線や双曲線ではない。なので、惑星の軌道の離心率は0<e<1となる。惑星の軌道の離心率は(惑星の軌道に限らないが)、その軌道がどれほど円から遠い図形になるのかを表す指標となる。

 

・反射スペクトル

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恒星は自ら光を放つ星であるが、惑星は光を放たない。もし地球上から惑星が見えるとしたらそれは太陽光を反射しているだけである。なので、星の光から星の構成成分を見るスペクトル分析は、惑星の場合反射スペクトルとなるが、スペクトル分析自体は7話の項目を参照しよう。

本編で言われていたS型とC型、は小惑星を構成する元素を表している。S型のSは「stony(石っぽい)」あるいは「Silicaceous(ケイ素を含む)」の略称である。石に近いと言う名前や、ここまで解説してきた岩石の成分が二酸化ケイ素を含んでいることから分かるように、比較的地球に近い小惑星である。

一方、C型小惑星のCは「Carbonaceous(炭素を含む)」の略であり、炭素ということから分かるように見た目が黒く、太陽に近い組成を持つ。

また、S型小惑星とC型小惑星ではC型の方が地球から見て遠くの軌道を回転している。

 

はやぶさ

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はやぶさは2003年に小惑星イトカワへ打ち上げられた小惑星探査機。はやぶさ打ち上げは2003年5月に対し、JAXAが2003年10月発足であるため、前編4話のJAXAの項目にて、JAXAが打ち上げた実績の例としてはやぶさ1号を挙げていたのは微妙に間違いであり、この場を借りて深くお詫び申し上げることとなった。

世界で初めて大気圏外からのサンプルリターン(サンプルを採集してリターンすること)に成功した小惑星探査機であると同時に、世界で初めてイオンエンジン という、キセノンの陽イオンを電子の存在下に放出することでキセノンの陽イオンが電子へ向かう運動の反作用で飛行するジェットエンジンの実用化をしたことで知られている。

はやぶさ2小惑星のサンプルリターンやイオンエンジンの試作実験機という位置付けだったはやぶさの後継機であり、実用実験のために作られた探査機である。はやぶさ2は2014年に打ち上げられ、「リュウグウ」という小惑星を目指し2019年にはリュウグウ着陸完了、現在は2020年末の地球帰還を目指して航行中である。なお、探査対象に「リュウグウ」が選ばれた理由は、「C型小惑星であり、水を含んでいると考えられるため、地球での生命誕生の研究の手がかりがつかめる可能性があるから」である。また、はやぶさで故障が起きていたリアクションホイール*20などを改良、探査用小型ロボットも1台ではなく3台搭載することで確実性を向上、2kgの純銅製の衝突体(おもり)を射出して人工的にクレーターを作ることで小惑星の内部からもサンプルを採取できるようにするなど、はやぶさの欠点を潰し、より実用に耐えうる探査機としている。

2019年末現在、はやぶさ2は「人工クレーターの作成」、「同一天体2地点着陸」、「小型探査ロボットによる小天体の探査」など7つの世界初を達成している小惑星探査機となっている。

 

・天の川

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天の川は、星の集まりが川のように見える部分のこと。日本においては、七夕伝説で織姫と彦星の間を流れている川として知られているが、非常に長い川であるため冬の大三角付近にも流れている。

地球がある銀河*21の内部にあるために、その銀河にある星が多く見えるが、実際に宇宙に星が密集している場所があるわけではない。そして、地球が含まれている銀河は「天の川銀河」と呼ばれている。

 

・火星大接近

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前述の通り、火星と地球が衝の位置となるのは2年2ヶ月ごとである。そのため、7月に火星と地球が接近したのは直近だと2018年である。2018年の接近で最も近かった日は7月31日だが、他の日でも-2等級程度の明るさの火星が観測できたのだという。

 

・きららジャンプ

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きららジャンプとは、まんがタイムきらら連載作品をアニメ化した作品のOPやEDの映像でよくある、主要登場人物が手を繋いで横に並んで行うジャンプのこと。あくまで、よくある、というだけで例外は存在し、ゆるキャン△に至ってはOP映像製作者が「きららジャンプ禁止」と太めの釘が刺されたらしい。恋する小惑星もOPやEDできららジャンプしない作品だが、最終回本編にてきららジャンプが行われた。OPやEDできららジャンプしないが、最終回できららジャンプする作品としては、ほかにけいおん!!などが挙げられる。

 

・星の砂

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☆の形をしている砂。バキュロジプシナなど、本当に星の形をしていた有孔虫の化石である。有孔虫やサンゴは炭酸カルシウムを形成して殻や骨のような組織を作るが、その際に二酸化炭素を作る。そのため、有孔虫やサンゴは藻類と共生している*22

なお、サンゴが作った炭酸カルシウムがサンゴ礁と呼ばれるものである。

 

  • あとがき

いかがでしたか?何だかんだいって地学とかいう理科4科史上最もマイナーな科目を勉強できたので筆者としては結構楽しかったです。さすがに、しれっと会話中に出てきた赤道儀だったり、突然7種類の石が現れる天然石みくじはクラっときましたが。9話以降、人間ドラマに重点が置かれるため解説する用語数が露骨に減っているのですが、これほどの知育教材に人間ドラマときらら系特有のコメディが付いてくるってこのアニメおトクすぎやしませんか?*23おトクすぎますよね!?*24おトクすぎてよくね?*25というわけで、皆さんで恋する小惑星をすこりましょう。

それでは最後に、この記事用のスクショで使わなかった没カットを3枚ほど貼ってお別れしましょう。

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それではさようなら。

 

*1:トイレだけに

*2:トイレだけに

*3:トイレだけに

*4:うお座の時と同一事件

*5:厳密な種族名ではなく、サンゴ礁を作るサンゴの総称

*6:低気圧は南半球では時計回りになります。また、言い忘れていましたが、星の見え方や運動などは北半球のものとしています。

*7:例えば、1990年代ごろの雲仙岳の噴火は1千万立方メートル以上の火山噴出物が出たという

*8:相席食堂でも新潟県の粟島という島の郷土料理として「わっぱ煮」という焼いた石で味噌や魚を加熱する料理が紹介されていたが、デイサイト質溶結凝灰岩との関連性は不明

*9:その窓からどれくらい熱が出て行くかという「輻射率」を考慮すると同時に、窓に太陽光が入った場合の吸収率も考慮して計算するらしい

*10:石の硬さを示す指標。お互いをこすって傷がつかなかった方が勝ちという測定方法で調べる。

*11:探査機表面につく微生物の持ち込みを防ぐため。微生物は酸素が少なくても生存できるものもいるため、微生物くらいなら生存している星はハビタブルゾーンの外にも存在する

*12:自然にできたものについては、六角形ではない氷晶は存在しないことが知られている

*13:これも北半球目線。南半球目線だと太陽との位置が真逆になるはずで、このことから北半球が冬至の時南半球は夏至、という「季節の逆転」が起こることがわかる

*14:この記事並びに恋する小惑星は、広島の原爆投下や1940年代に米軍で活躍した飛行機「チョットマッテ号」などとは無関係です。オルソンブログは大量破壊兵器としての核エネルギーの使用の根絶を応援しております

*15:レーザーのように直進する性質を持つようになったマイクロ波

*16:1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいのは、三角形の合同条件だから。実際には正弦定理を使うと導出できる

*17:北半球で南十字星が見える場所は北緯26度以下の場所。なお、石垣島の緯度は24度

*18:ここでは、1周にかかる時間

*19:yの2乗のこと

*20:方向転換のための装置

*21:宇宙の中にある区域。宇宙は無数の銀河が集まって形成されている

*22:寄生ではなく共生なので藻類が二酸化炭素を受け取る代わりに、有孔虫やサンゴは藻類の光合成産物を利用している

*23:http://houbunsha.co.jp/comics/detail.php?p=%CE%F8%A4%B9%A4%EB%BE%AE%CF%C7%C0%B1

*24:https://www.animate-onlineshop.jp/sphone/animetitle/?aid=12643

*25:この記事はオルソンが趣味で書いているものであり、どこぞの轢死したワニとは違い、電通などのブラック広告代理店は一切関与しておりません