R-1ぐらんぷり2020感想文

「恋する小惑星ダイレクトマーケティングして、技術大国ニッポンを取り戻したいんじゃ!」の前編と後編の間から失礼します、オルソンです。この記事はR-1ぐらんぷり2020のネタバレをガッツリ含むので、ネタバレを避けたい人は逃げてください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一度言うけど、この下はR-1ぐらんぷり2020のネタバレだよ?大丈夫?マジ大丈夫?いや君らがいいならええんやけど?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SNS事件簿」。科捜研の女こと、沢口靖子に扮してSNSでのやり取りを捜査していく…切り口が古いというか薄いというか…数年くらい前の鉄板ネタを持ってきたんだろうか。斬るなら斬るで、二言目三言目が大事なのかもしれないがそれもない…本題よりも、ワイドショーでネットの声を読み上げてる時みたいな微妙にクセのある声を演じるのが上手いのが妙にツボだった。あと、オチは声だして笑った「質問箱をやってるやつは…バカ」。

 

「取り調べ」。容疑者として取り調べを受けている男。アリバイを話す口調が完全に落語。落語の口調が上手くないと成立しないコントなのはもちろん、「僕これやる必要あります!?」というツッコミの言い方も上手い。電話でうどんをすする、上着を脱ぐ、重要亭参考人、と天丼の隙間に入れるボケも巧み。でも無観客だとこういうキャラクターショー的な見せ方が刺さりにくかったかな…。

 

  • SAKURAI

「どうしても伝えたいこと」。彼が歌を通してどうしても伝えたいこととは…有ジェネではおなじみのネタ。どこにオチが来るかのわかりやすさと、オチのシュールさというか外し方が絶妙な歌ネタ。そこに芸歴20年の中で培ってきたキャラの表現力などが入ってくるから最強だと思う。「ビーチバレーが根付いてない国〜♪」が特に好きだった、モンゴルとかアイスランドで根付くはずがないから。R-1単体の戦績は芳しくないかもしれないが、その割には売れるんじゃないかな。ブロック分けによっては十分最終決戦も見えていたネタだった。

 

桃鉄」。桃鉄を違法な方法で無料ダウンロードした男が手に入れたゲーム、それは「太ももが鉄のように固い男てつじ」だった…。

ゲームにツッコミを入れるというのは陣内智則っぽくもあるが、明確な個性は、プログラミング含めて自作だという、「桃太郎電鉄」ではない「ももてつ」だろう。謎のゲームのゲーム性や攻略法を野田のプレイを見て、野田本人と一緒に視聴者が理解していく楽しさが、ネタ本来の面白さを底上げしている。「ゲーム実況」の要素が入ったまさに第7世代*1のお笑いと言えるだろう。「すごい違法な方法で桃鉄をダウンロードしたから早速やってみるか」「やりがいしかない。一生やろ」「戻るボタンとかねえし…買うか」「触んなくてもいい!あんなに難しかったのに!」「全普通人間」などワードの強度も凄かった。

 

「缶コーヒー」。バイト先の休憩室に同じ銘柄の缶コーヒーを置いてしまった男。どちらかが自分ので、どちらかが女性のもの…。

彼には珍しく、日常的な小規模なあるあるから入ったコント。そこから小規模な謎解きが始まる…と思いきや、女性側の提案で意外と謎解きはあっけなく終わる。意外かつ膨らましがたい展開だが、そこは彼のセリフ回しのうまさ。「何があったか知らないけど、おっさんの缶コーヒーでは死ねないよ?」などもキレ味抜群だが、「どっちでもいいっていうのは………どっちでもいいってこと?」の間なんか痺れたね。過去のネタでも見受けられたが、小泉進次郎構文を使わせたら彼の右に出るものはいないんじゃないか?でも、多分本当に見せたかったのは、その後の「意外とおっさん側の方が気にする」という終盤の展開だった気がしないでもない。ネタ尺…なんかねえ?

余談だが、最初の方の「こっち………あるいはこっち」のところで笑ってくれたスタッフ。あのスタッフはいい仕事した!この人たちのおかげで無観客R-1が放送事故にならずに済んだんです!ありがたい!

 

  • ななまがり森下

「乳首隠せない男」。どうしても乳首を隠せない男、というネタ。あらすじが本当にこれだけなのが特徴。なぜ乳首を隠せないのか、横の紙袋は何なのか、乳首を隠せないままどうやって生きてきたのか、そういう小難しい(?)説明は一切ナシ!ただただ乳首の隠せなさだけで乗り切っているネタ。

しかし、貝殻のブラが不良品(シジミ)という道具にも見放される展開や、マグネットシールの裏切りなど見せ方を変えている。くだらないようで意外と練られたボケや出し方。素晴らしかった。イライラ棒が微妙に失敗してたのと、最後手が取れちゃったのが惜しかったかな。

 

「浮気」。プリンを食べられた男。「隠してることない?」とカマをかけてみると、浮気が発覚して…。

「R-1エンジョイ勢」という煽りVTRの影響もあるのか、いや、男女間のいざこざが設定だったからか、「パーパーを1人でやったネタ」という印象はぬぐい切れない。どうしてもそこのガックリ感はある。ただ、パーパーのネタだから面白い、という安定感もあれば、ピンネタだからコンビの時ほど設定をひねりすぎないという策略もある。話を進めるための道理に、「なぜあなたはそんなに正直なのですか?」とツッコミを入れておくのも適切な処理といえる。

彼女側を演じるあいなぷぅがいないことで面白さは半減…と言いたいところだが意外と半分も減ってるというのは言い過ぎ、というちゃんと面白いピンネタだった。それはそれでどうなんだ。

 

「今昔またぎ」。 さまざまなアニメのシーンや歌を跨いで昔風にする。ここもパーパーほしの同様、コンビと芸風は変わらないネタ。しかも、「能っぽい言動」以外の明確なボケ(とツッコミ)を失っているため、こちらはパーパーほしの以上に魅力が減ってしまっている。M-1でのネタバレも悪い方向に出ているか…と思ったが視聴者投票は満票。世の中はわからない。

 

「妖精」。男の精神に直接話しかけてくる妖精。その目的は…。フリップネタではなく1人コントで決勝進出。「受信料を取る」というどこぞの放送局批判にとどまらず、「ゴリゴリ」「フードコートの呼び出し音」「500ルピアが17円」などのボケからは往年の彼のセンスを感じずにはいられない。それでいて「お前、セントニア名人寄席出てるやろ!」「関係ない数字言ってくんな!」といった被せが、単なる大喜利の羅列ではなく、コントを見た満足感を見事に出してくれる。いいネタだった…けどなあ。

 

  • おいでやす小田

「ヤクザ」。ヤクザとして必要なスキルである「巻き舌」を新人に練習させる。一応コントにはなっているが、フリップを使用し、「ら行を巻き舌で読む」という異常にシンプルなネタ。変なネタ(ザコシやアキラなど)に負けないように、自分が変なネタをやるという謎の進化を遂げてしまった。でも、こっちが思ってたんと違うっていうだけでよかったと思う。「殺したろかコラ」で3回巻き舌行くところからガッチリ掴み、オチもコントとして意外と(?)しっかりしている。

 

「フリップ119枚」。スピーディーさをアピールするため、119枚のフリップを3分で使い切る。普段の本人からは想像もつかないような構成のしっかりさ*2が印象的。初めは「あ、これフリップめくらずスカすパターンか」という認識を植え付け、認識が植え付け切れたところでフリップ芸をスタート。フリップの雑な消費を軸としつつ、序盤の話に出てきた北海道の消防士をもう一度出したり、「箸誤射」なんて器用なボケ方をすると思えば、ワタリを探せ!…そして大オチではもっと雑な消費を見せて「時間が余りました!」パワフルとロジカルがあまりにも噛み合ったあまりにも素晴らしいネタだった。

 

  • 大谷健太

「早口言葉」。絵を見せ、それに合わせたオリジナルの早口言葉を披露。

よくわからない絵を見せ、その絵の説明をするという、どんなに面白くても散逸的になりそうなところに「早口言葉」という軸を通す。これにより、軸ができただけでなく「面白い」と「凄い」を絶妙なバランスで配合している。このバランスがすでに絶妙なのだが、散逸的にならない工夫として「被せ」まで用意してくれてるのが素晴らしい。

 

 

ここから最終決戦

「モンスト」。野田が入れたアプリ、それは「モンスターストライク」ではなく「悶々とするぜ!ストッキング姉さん!」だった。

ネタの流れは1本目と一緒…だが、課金のところから流れを少しずつ変えている。そもそも、細かい流れ以前にゲーム性も筐体もぜんっぜん違う。この辺りの感覚も絶妙だ。意外とR-1って2本目を1本目からどれくらい変えるかがポイントみたいなとこ、あると思います。

 

「今昔またぎベスト10」。今昔またぎしやすい曲をザ・ベストテン形式で紹介。ザ・ベストテン的な紹介板が出てきたがシステムは結局一緒。1本目でドレミの歌をやってる点からも被ってる感が拭えない。あと、4位くらいからか畳み掛けるためか粗雑になっていた(というより、無観客だから畳み掛けが粗雑に見えた)気がする。3分だから5曲くらいでキッチリやった方が良かったのでは…。

 

  • 大谷健太

「2コマ漫画」。フリップで2コマ漫画を披露。「早口言葉」のネタにあった「凄さ」と「軸」を同時に失ったという意味で、構成面は1本目から大幅に劣化している。もちろん、センスの面はキレッキレで、だからこそ敗因が明確にそこだけなんじゃないかと思える。「サメではない奴」とか「一瞬躊躇する人」とかは面白かったし、「被せ」の仕掛けが健在なのも良かった…良かったんだよ…。

 

  • 総評

今回まず「無観客」ということで。一度は昨年と別方向の放送事故を覚悟しましたが、実際スタッフが笑ってくれたおかげでそんな深刻な地獄にならなかったな、と。このスタッフ笑いには頭が上がりません。去年のみとの比較だと「変な客入れるくらいなら来年もこれでいいよ」と言いたくなるけど、実際は客がいた方がいいです。スタッフの人工笑いじゃ再現しきれない「ジワーッと広がるような笑い」なんかは拾われ損ねたんじゃないかなあ。まあ、誰が悪いって言ったらウィルスのせいでしかないんですが。

また、Twitterの投票機能を使い、視聴者意見を取る方法を2種類用意したのも今年からの特徴。視聴者の意見によって最大6票の格差がつくのは、はっきり言ってどうかしているうえに、割とTwitterdボタンでそうそう差がないので「6票格差パターン」が多かったのと、「同票の場合、視聴者票が多かった方の勝ち」という現場の審査員の声が反映されにくいルール*3なのはいかがなものかと思ったが、ここまでなかなかなルールでも野田クリスタルが視聴者からも審査員からも票を集めて圧勝という、納得の形で終われているのが不思議なところです。意外と優勝者って収束するんだよな、2位以下はともかく。

また、野田クリスタル2本目が炎上しており、その記事を火の玉ストレートでぶっ叩いたワイがヤバん人(やばんちゅ)に絡まれたので絡み返すということもありましたが、まあ、こういう放火魔みたいにネタを炎上させて遊ぶ層は平成末期に現れ、改元に便乗して増え続けているのでなんかもうそういう家専用に、ボートの映像が永遠に流れるようになるチューナーとか販売されないかなと思う今日この頃です。野田クリスタル自身はこんな炎上気にせず、また来年の今頃、勇者ああああでギロチンが出てくる18禁ゲームのプレゼンでもしてくれると嬉しいです。まあM-1の時あれほど怒られても芸風自体を変えることなく自虐ネタにしていたので大丈夫だと思いますが。

最後にR-1直後の自分あるあるを発見したのでそれだけ紹介して終わります。

 

 

R-1直後の俺、保守速報イジリがち

(おわり)

 

*1:マヂラブは芸歴や年齢から見たらおそらく第7世代ではないが、レストランやシャドウのネタ辺りを見るに、趣味やそれをネタに取り入れる点での新しさは第7世代に引けを取らないと思う

*2:作家疑惑が浮上したし自分も思ったが…「119枚のフリップを考えたのは本人です」としつつも、作家がついているかいないかで言ったらついているらしい

*3:これに関しては去年と同様