続・キングオブコント〜ルールと審査の歴史〜

どうも、こんばんは、オルソンです。

 

明日はいよいよキングオブコント2018の決勝だが、昨年こんな記事を書いた。

キングオブコント〜ルールと審査の歴史〜 - オルソンブログ http://orsonblog.hatenablog.com/entry/2017/10/01/000218

その一年後、キングオブコントのルールがまた変更された。まさかすぎる展開である。今1番ルールが迷走しているお笑い賞レースは間違いなくキングオブコントである。迷走ぶりが運営のツイッターアカウントにも滲み出てますからね。あんな垢ならない方がマシ。

そんなルール変更の詳細を語って補完しておくのがこの記事の目的である。

 

2017年は決勝のルールは2016年と変わっていない。以下の通りだ。

・審査員は松本人志バナナマンさまぁ〜ずの5名。

・決勝進出者は10組。1本目のネタで高得点ベスト5が最終決戦に進出し、もう1本ネタをやり、2本の合計が一番高い者が優勝。

・ネタは4分という制限時間アリ。

前回の記事では審査員が5人て少なすぎるとか、準決勝敗退芸人100人がいないのが単純に寂しいとか、観客がボケに対して悲鳴を上げがちになったのでめちゃくちゃ気が散るとか、そういう問題を取り扱ったが、審査員5名体制になって3度目のこのキングオブコントでは新たな問題が浮き彫りになっていたと思う。

それは審査員がずっと同じという問題だ。キングオブコント2017の決勝進出者を最終結果の順位順に並べると

1、かまいたち

2、にゃんこスター

3、さらば青春の光

4、ジャングルポケット

5、アンガールズ

(最終決戦進出の境界)

6、わらふぢなるお

7、アキナ※

8、ゾフィー

9、パーパー

10、GAG少年楽団

表にある※は「キングオブコント2015、2016」での決勝進出者、つまり2017年以外で1回以上レジェンド審査員に審査されたことがあることを意味する。そしてジャングルポケットに対する大竹の審査コメントは「ジャングルポケット、好きなんだよねえ…」、さらば青春の光の2本目に対する三村の審査コメントは「さらば青春の光の見方を変える…良さでしたね」。実は、お笑いでは、新しい芸人を見ると最初は笑い方がわからなくなるので、そこそこ認知した方が笑いやすいという現象がある。つまり、売れていない芸人がコントの面白さで優勝という名誉と賞金を獲得できるイベントであるはずのキングオブコントでも、結局はそこそこ認知がある芸人の方が客ウケが良くなる。もちろん客ウケだけが審査員の基準ではないし、プロの芸人なら自分たちの中で「何が面白いのか?」をしっかり持って審査をしているはずではある。でも、決勝進出やアンガールズのように一回売れることで審査員に認知がある方が笑い方がわかる、というブレは(素人審査より小さいにせよ)存在する、ということが審査コメントから見えたと思う。もっともにゃんこスターが準優勝してることを考えると「甘えるな!」の一言で一蹴できそうな問題なのかもしれないが…。

さて、決勝ではルール変更のなかったキングオブコント2017だが、準決勝の方では変更があった。それは準々決勝の追加と準決勝でネタ2本やること、の2つである。まず、準決勝は今までは「2日間でネタは1組1本」を「2日間でネタは1組2本(1日1本)」にしたため、単純に準決勝進出者を半分に減らすための処置だろう。問題点ではないが、このルール変更により天竺鼠ジグザグジギーなど、歴代決勝進出者がバサバサ落とされた事象は記録しておきたい*1。そして、準決勝でさせるネタを2本にするのは、1本目で優勝候補に躍り出た芸人が最終決戦で失速するようなことを避ける効果があると見込んでのことだろう。ただ、その効果があったのかは結構疑わしい。というのも、準決勝に行った人によると、2日ともトップクラスにウケた人、というのはなかなかいなかったらしい。優勝したかまいたちでさえ、1日目*2はさほどウケず、2日目*3に爆発的にウケて決勝進出を決めたという。客も変わる中で2日ともウケるというのはなかなかに無理なのだ。また、ネタが2本揃ってないと準決勝の段階で落とされる、というシステムもにゃんこスターが決勝進出してる辺り機能しているか疑わしい。多分準決勝の審査員もにゃんこスターには頭抱えさせられただろうけど。コントの自由さは常にキングオブコントの審査ルールの穴を突いてくるコンビの出現を促す、そんな気がする。

なお、審査員が5名中4名がホリプロコムに偏っているという問題もあるが、それはななめ45°やダブルブッキングや磁石などのホリプロコム所属芸人が決勝進出してから考えればいいんじゃないかな、うん。

 

この年も審査員は松本人志さまぁ〜ずバナナマンの5名…でできるかどうかは、当たり前じゃねえ事態の発生により危ぶまれているが、今のところ変更の発表はない。

この年は運営が相当血迷ったようで様々な変更が行われた。

・ネタ尺が1回戦(2分)→2回戦(4分)→準々決勝(4分)→準決勝(4分)→決勝(4分)から1回戦(2分)→2回戦(2分)→準々決勝(5分)→準決勝(5分)→決勝(5分)に変更。

・最終決戦でネタを披露できる芸人が上位5組から上位3組に変更

・準決勝と決勝は同じネタを披露するというルールが明文化される。
・謎の新システム「決勝進出者完全シークレット」

TVに映るルール変更はやっぱり決勝でのネタ尺が5分になったことだろうか?4分という時間はお笑い賞レースではスタンダードな尺*4だが、芸人にとっては短い、という声はあった。それでもみんな4分にまとめてきてこそプロの芸人ではあるのだが、ここにきて5分になることで1組ごとに1分ぶん濃密にネタを見れることは素直に視聴者が喜ぶべき事象だ。ただ、予選レポによると1分伸びたことで中弛みしたコンビも多くいたらしい…上手くいかないね。また、2回戦のネタ尺は短くなったことにより、ショートネタが苦手な芸人は2回戦で落ちるようになったということもあったという…。決勝でやるネタは長いのに予選でショートネタできず落ちるって…。とにかくこの予選のネタ尺は見直される可能性がある。あと、1組辺りは濃密になるが最終決戦は上位3組のみなので見れるコントの本数は減るようだ。…後述する決勝進出者発表をやめたら、上位5組できるんじゃない???

昨日あたり気づいた変更点が「準決勝と決勝でやるネタは同じであることの明文化」だ。基本的に芸人は予選でも決勝でも一番いいネタをかけてくるのでネタを変える方が不自然なのだが、さらば青春の光は準決勝ではぶどう農家のネタを、決勝ではパワースポットのネタをやっている*5。このネタ変更は本人らの意思なのか、あるいはスポンサーであるグミ会社に配慮したという噂もある。そう考えると、準決勝でスポンサーの都合などの放送コードに引っかかるネタをした芸人は絶対に決勝に上がれない。また、準決勝と決勝では会場も客層も変わるのでネタを変えるという戦略を取るコンビがいたっていい。だからわざわざ縛ることもないのにな…と思ってしまう。

そして一番意味がわからないのはなんと言っても決勝進出者完全シークレットである。これは準決勝当日に審査を終えた後、芸人本人には結果を伝えるが、我々一般視聴者には決勝当日まで情報を伝えないというシステムである。これにより準決勝進出者には守秘義務という斜め上の負担が発生することに。さらに、決勝進出者発表から決勝までの期間で認知を伸ばすこともできず。さらに9月12日の水曜日のダウンタウンのCMで、決勝進出者のシルエットを流し不完全シークレットになる事態も発生。次の日にはめでたく決勝進出者10組が特定された。

なお、準決勝進出者がキングオブコントと被っているライブを休むか否かで決勝進出者が割れるという事態もあったが、そんなことは準決勝当日にあった5chの書き込みと有志によるシルエットクイズの答えが完全に一致していることと比べれば微々たる問題である。

なお、この決勝進出者完全シークレット制度唯一のメリット、それは抽選に当たれば葵わかなとバイきんぐのサイン入りTシャツがもらえることである。

 

(おしまい)

 

 

*1:なお、2018年も準々決勝で落ちている模様

*2:ウェットスーツのネタだったらしい

*3:告白のネタだったらしい

*4:M-1は一貫して4分。今は3分だが2009年当時はR-1も4分だった

*5:もう1本飲の居酒屋は準決勝でも決勝でも披露