【世にも奇妙な物語】偽善鉄

(教室にて)
中田先生「さて、授業終わりだが、何か質問はあるか?」
女子生徒A「はい!あの、チェバの定理って何ですか?」
田中先生「そんなことも知らんのか。お前もう高3だろ?チェバの定理くらい自分で勉強しろ!わざわざ質問するな!」
女子生徒A「はい…」


(廊下にて)
女子生徒B「中田先生ってさ〜偽善鉄だよね〜」
中田先生(?)
女子生徒C「わかる〜。授業の内容もさ、いかにも偽善鉄って感じ〜!」
女子生徒D「そうだよね〜。数学担当ってのも偽善鉄って感じ〜!」
女子生徒B、C、D「「「わかる〜!」」」

 

偽善鉄


(職員室にて)
男性教師A「中田先生!今日、仕事終わったら飲みに行きません?」
中田先生「おっ…でも今日中にプリント作らないといけないし…。遅れてなら行けるかな!」
男性教師A「カーッ!金曜日なのに残業!中田先生も偽善鉄だなあ!」
中田先生「え?あ?あ…ああ?」
中田先生(偽善鉄?偽善鉄って何だ?)
女性教師A「中田先生っ!今日の昼ご飯何頼みます?」
中田先生「あ、俺今日は昼飯いいや。弁当作ってきたからさ!」
女性教師A「へー、自分で朝から早起きして作ったんですか?中田先生も…偽善鉄ですねえ!」
女子生徒A「中田先生…」
田中先生「ん?呼んだか?」
女子生徒A「さっきの授業のあと、チェバの定理を、自分で偽善鉄を使って調べたんですけど、ここがわからなくて」
中田先生「え…?ぎ…ぎぜ…。あ、いやいや、えーとここはね、こう補助線を引いて…」
女子生徒A「なるほど!そこに補助線を引くと偽善鉄になるんですね!ありがとうございます!」
中田先生「いやいや…。あっ、あのさ…偽善t…」
中田先生(いやいや…先生が生徒に質問するなんて恥だ…。絶対に聞くわけにはいかない…)


(居酒屋にて)
中田先生「お疲れ〜」
男性教師A「おっ?偽善鉄は遅れてやってくる!…てか?」
中田先生「なんだなんだ?俺のウワサしてたのか?」
男性教師B「いやいや!中田先生のこと凄いな、ってみんなで話していたんですよ!私も教師になったからには偽善鉄でなくてはならないと思っていたんですけど、中田先生の偽善鉄ぶりには敵わないなあって!」
女性教師A「いや〜でも偽善鉄って憧れますよね〜。私も偽善鉄になりた〜い!」
男性教師A「おいおい、偽善鉄になれないようじゃ教師失格だぞ?そうだろ、中田!」
中田先生「え?……あ…はは…」
女性教師A「ひどーい!でも本当に最近自分が教師向いてないんじゃないかって思うんですよね…。昨日も偽善鉄の女子生徒を泣かせてしまったし…先週なんか生徒が偽善鉄だからって理由で授業放棄してしまったこともあって…」
男性教師B「いやいや、あれは君のせいじゃないよ。教室全体が偽善鉄だと、授業もできないもんな。むしろああいう偽善鉄達にはガツンと言ってやった方がいいんだよ!」
女性教師A「そうですよね…何か愚痴ったら偽善鉄になりました!」
男性教師A「そうか〜偽善鉄になっちゃったか〜?」
男性教師B「じゃあ今夜も飲むぞ〜!」
田中先生(偽善鉄…一体何なんだ…!!??!!?)

(居酒屋の帰り道にて)
中田先生(結局、「偽善鉄」が何なのかは、さっぱりわからなかった。)
男性教師A「お〜し!じゃあもう一軒行くか〜!」
女性教師A「ふふふ!もう、偽善鉄だからって飲み過ぎないでくださいよ!」
男性教師B「本当、あいつはいつもああだからなあ…。偽善鉄は本当に…」
男性教師A「いいだろう!別に減るもんじゃねえし!それよりどうすっか?今日は金曜日だから、公園に屋台出てるぞ!ラーメンの屋台もおでんの屋台も焼き鳥の屋台も、それに、偽善鉄の屋台も出てるぞ!」
中田先生「え?じゃあ偽z…」
男性教師B「あー、今日は偽善鉄って気分でもないんで!〆にラーメン食べて帰りません?」
男性教師A「そうか!君も行くか?」
女性教師A「あ、私は夜食は控えたいので…」
男性教師B「まーたダイエットかぁ?過度のダイエットは、偽善鉄の元だぞ!」
女性教師A「わかってますって!それではお疲れ様です!」
男性教師A「よし!じゃあ気をつけて!中田先生はラーメン、行きますか!」
中田先生「はい!」
男性教師A「そうか!着いてきてくれるか!やっぱり中田先生は偽善鉄だなあ!」

中田先生(僕がラーメン屋に行ったのは、ラーメンを食べたかったからじゃない。もし公園に行けば偽善鉄の屋台が見れるかも知れないと思ったからだ…)

(ラーメン屋の屋台にて)
ラーメン屋店主「注文は?」
男性教師A「ラーメンで!みんなもそうだな?」
男性教師B、中田先生「「はい!」」
男性教師A「最近調子はどうだい?」
ラーメン屋店主「いやー、昔は繁盛したんだけどねえ…最近は偽善鉄だからさっぱり…」
男性教師A「そうかあ!でもそんな時こそ店主が偽善鉄じゃねえとな!」
男性教師B「そうですよ!このラーメン屋が偽善鉄をやめたらいよいよこの公園…いやこの街全体が偽善鉄ですって!」
ラーメン屋店主「そうか!そうだな!ガッハッハ!ハーッハッハッハッ!」

(学校にて)
中田先生(あの後も結局、偽善鉄の意味はわからなかった…)
女子生徒B「そろそろ、偽善鉄だから不安でさあ…」
女子生徒C「そうだよねえ…!でも偽善鉄って楽しいけどねえ!」
中田先生(クソッ!偽善鉄、偽善鉄…)
女子生徒D「そうよねえ!私も偽善鉄大好きなんだ!」
中田先生(偽善鉄って…一体何なんだ?)

(職員室にて)
女性教師A「おはようございます」
中田先生「ああ、おはよう!」
女性教師A「そういえば田村先生…今日は偽善鉄だからお休みだそうです」
中田先生「そ…そうか」
女性教師A「そういえば今日発表なんですよね!」
中田先生「何が?」
女性教師A「今日ですよ!我が校が導入する偽善鉄養成プログラム!その全貌とプログラムを遂行するリーダーが発表されるんです!」
中田先生「お?おう…そうだな…?」
女性教師A「いやー、我が校がスペシャル偽善鉄スクールに選ばれて、そのための偽善鉄への道への一歩をやっと踏み出すんですよ!やっぱり偽善鉄になるとこの学校も生徒も変わるんでしょうからね!」
中田先生「あ…ああ…」
校長先生「オホン!今日私が職員室にいる理由は他でもない!我が校がスペシャル偽善鉄スクールに認定されたのが一ヶ月前。そのために私も、そしてみんなも尽力してくれた。みんな偽善鉄のように働き、努力し、その成果がスペシャル偽善鉄スクール認定だと思っておる!しかし、スペシャル偽善鉄スクールに認定されたからと言って、胡座をかいているようではいけない!我々は偽善鉄になるべく、より高く、より深く偽善鉄を追求しなくてはならない!そこで本日、偽善鉄養成プログラムを組んだ!このプログラムは入試の段階から偽善鉄テストを導入することで偽善鉄としての素養を測り、さらに1年の時から偽善鉄合宿に生徒を行かせることで偽善鉄として着実に力をつけてもらい…」
中田先生(畜生!偽善鉄が何なのか全くわからん!とはいえ、俺には関係ない話だろう…)
校長先生「以上が偽善鉄養成プログラムの全体像だ!そしてこのプログラム遂行のリーダーを中田先生にやってもらいたい」
中田先生「え!!!???!????!??」
校長先生「ああ、中田先生なら偽善鉄だから偽善鉄養成プログラムを遂行するリーダーとして適任だろう。」
男性教師B「すごいじゃないですか!偽善鉄養成プログラムのリーダーですよ!」
男性教師A「いやー、中田先生がなるとは思ってましたけど、偽善鉄養成プログラムのリーダーなんてすごいですよ!本当に!」
女性教師A「偽善鉄養成プログラムの遂行、頑張ってくださいね!」
女性教師B「よっ!偽善鉄養成プログラムリーダー!未来の日本の偽善鉄を背負って立つ男!」
中田先生「あ…あ…あ…あのさ…















偽善鉄って何?」

(おしまい)