M-1グランプリ2019全ネタ感想文

この記事ではM-1グランプリ2019の感想を1組ずつ丁寧に書いていく訳だが当然、シャレにならないくらいネタバレしているので、録画をまだ見ていない人はさっさとブラウザバックしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一応、もう一回警告しておくけど、この下はM-1グランプリ2019の決勝ネタバレだよ?いいんですか、いいんですか?こんなに人を好きになっていいんですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 敗者復活戦

今年はリアタイができず、決勝→敗者復活戦の順に見たが一応。

和牛の復活はあまりに妥当。人気があって技術があって面白いのでそりゃ勝ち上がる。自分に投票権があったとしても結局一票は入れてたかな。

他は昴生ポンコツ感を漫才に取り入れてカオスを作ったミキ、いつにも増して変なことだけして帰ろうという気概を見せつけた天竺鼠たけるが「上手い例えを言う人」から「単なるバカ」になってしまった東京ホテイソン、2人が「め!」と叫ぶだけの時間を作ることでシステムそのままによりカオスな漫才を引っさげてきたトム・ブラウン、ホンモノ感と引き換えにテンポを得ながら元来のセンスを見せつけるセルライトスパが良かった。

個人的には和牛、天竺鼠、トム・ブラウンに入れていた気がする。

 

 

  • ニューヨーク

「ラブソング」。嶋佐が作ってきた曲を屋敷が聞くという、ベーシックな歌ネタ。「My friend Forever」など、しっかり面白いボケをバッサリ的確に処理していく屋敷のツッコミには彼らならではの毒がある。「LINEが既読にならへんとかそういうので大喜びするから!」や、歌い出す前の嶋佐のクセのある歌手っぽい喋り方など……ただ、歌ネタという手数に制約が出やすい設定ゆえ、屋敷の毒が抑えめだったのは寂しいところ。

 

UFJ」。以前の記事でも感想を書いたことあるネタ。その時と印象はほとんど一緒。「USJUFJ」というあまりにもミクロな言い間違いを、正当化して言い張り続けるだけで4分持たせてしまう地力、「パッ!」や「サランヘヨ!」など緩急のついたボケ、「もし俺が謝られてきたとして…」の畳み掛け、全てがM-1用としてあまりに綺麗。これがM-1決勝で見られてよかった!

志らくの得点も95点。ベタな導入でもそれだけでここまで引き延ばす新しさが評価されたか。

 

  • 和牛

「不動産屋」。不動産屋として内見に川西を連れて行く水田、その物件には人が住んでいる…?「お邪魔しました〜」を軸に据えつつ、単なるブリッジではなく展開に合わせてその目線に変化をつけていく。この仕掛けと表現力だけでも十分なのだが、終盤「人が住んでいない物件を渇望しすぎている川西」というWボケまで用意されている。さすが和牛と言わざるを得ない。

ただ、一つだけ気になったのは、その川西の豹変の急さ。もう少しシームレスに豹変できていれば……7〜8分以上の超大作になっちゃうかな?

 

「合コン」。M-1特有の出囃子に合わせて、鼓を叩く。これで彼らの仕事は終了したも同然では。楽しいキャラ漫才である。また、「店の者を呼んで参ろう」、「お菓子の名前を直訳でいう」、「3番の者に越前の領地を授けよう」と一つ一つのボケはベタという、バランス感覚………個人的には、もう少しベタじゃない方が好みかも、とは思ったけど。

 

「教習所」。免許証を燃やしたので教習所に行きたい、という導入こそぶっ飛んでいるが実際は普通の漫才コント。設定においても真新しさはない。しかし、ボケの独創性が高く評価され、M-1準決勝やそろそろにちようチャップリングランドチャンピオン大会に進出しているいわば期待の若手。

彼らはM-1決勝初進出。ではなぜ今年だけ進出できたのか?逆になぜ去年までは進出できなかったのか?その答えは終盤の「教官を轢く」ボケにあるとしか言いようがない。何だあの終わってるスカッとJAPANみたいな展開は。場外ホームラン級のボケ一発で決勝に乗り込んでしまうのがカッコ良い。もちろん「車から降りて自分だけ右折」など、その他のボケも見たことなくて面白い。

 

  • 見取り図

「相方を褒め合う」。正反対の見た目を持つコンビ見取り図が、双方のことを褒めあっていく。

2年連続ファイナリストだが、昨年同様散漫とした印象は変わらず。ただ、「あおり運転の申し子」などを筆頭にパンチのある例えを連発し、質も量も成長した様を感じた。個人的にはやっぱり大きい枠というか設定がもう少し欲しいところだけど、審査員の採点には納得せざるを得ない。「お昼に爆竹食べ過ぎました!」のアドリブも素晴らしかった。

 

  • ミルクボーイ

「コーンフレーク」。オカンの好きな朝ごはんがわからない…コーンフレークか?違うのか?実態はコーンフレークあるあるの羅列にすぎない…のだが、内海のいかにも漫才師という風貌や声や諸々の技術が「ちゃんとした漫才」に見せてしまっている。さらに、あるあるを通り越して、偏見・悪口までぶつけてしまう。この一言ごとの打率の高さ!「あの五角形は自分の得意分野で勝負しているからと踏んでいる!しかも、牛乳の栄養価も入っているからね!」「手軽に腹を満たしたいっていう(中略)煩悩の塊」など内海も酷いが、「誰に感謝していいかわからへんらしい」、コーンフレークじゃないと思う理由に「最後の晩餐もそれでいい、言うてんねん」と、駒場も大概酷い。でも、平和に見せてしまう彼らの雰囲気と技術、凄すぎる。

 

  • オズワルド

「先輩の誘い」。おぎやはぎを彷彿とさせる低温に、何気ない展開。その何気なさに乗っかっているといつの間にやら「高速寿司捨てマシーン」が登場している。まさにオズワルドの真骨頂。賞レース評価を得るのは難しいかもしれないが、これをきっかけに少しでも「好き」と思える人が増えて欲しいところ。

個人的には「昨日いたかどうかじゃない?」が好きだ。部外者と関係者の判別をこんな言い回ししてしまうところが良い。

 

  • インディアンス

「おっさん女子」。田渕がきむのために「おっさん女子」を彼女とする想定をしてみる。ボケのまくし立てぶりに反して、ボケの種類は多くないような…同じ言葉の連呼みたいな足踏みが多く、きむを置いてボケが進化(?)する感じが少ない…と思ったら、ネタを飛ばしていたらしい。ここは来年リベンジしてほしいところである。

 

  • ぺこぱ

「タクシー」。オーソドックスなタクシーの漫才コント…だが松陰寺太勇の様子が…。あらゆるシュウペイのボケを受け入れてしまう松陰寺のツッコミ自体もまたボケ、という文章にすると複雑だが、実態は「前半でちゃんとツッコミ入れると見せかけて後半で受け入れてしまう」というシンプルなフリとオチ。これだけで乗り切るために松陰寺にキャラがある………という付け焼き刃でキャラをやっていないのはネタや審査コメントで語られている通り。ツカミでスマートにシステムを提示したり、「キャラ芸人になるしかなかった!」「急に正面が変わったのか…?」と、メタや舞台を大きく使った展開まであったり、すごい面白かった。ある意味一番「人を傷つけないお笑い」だと思うんですが、どうでしょう?ねえ?ねえって!!!!

 

  • ぺこぱ

「席を譲る」。1本目とシステムは一緒…だが、審査コメントを通してシュウペイの妙な感じが伝わったのがいい方向に働いたような。シュウペイの妙な感じがあるからこそ、「宇宙人」、「ゴリラ」「イタタタ体育大学主席で卒業!」などのあまりに粗雑なボケが光り続ける。「できない時はできないって言おう!」「いや漫画みたいなボケ方すんな!って思ったけどその漫画って何ですか!?」「さっきと同じボケ…じゃない!」など粗雑なボケの受け入れ方も、もちろん仕上がっている。メタを入れられても嫌らしい感じにも冷める感じにもならない突っ切れ方もすごい。消費されすぎない程度に売れて欲しいなあ。

 

「自慢」。何か自慢できることが欲しい。山内の自慢は「トトロを見ていない」。見ていない自慢寝てない自慢、というベタなあるあるだが、業の深い人の業を煮詰めに煮詰めたネタ。過去のM-1の「ポイントカード」などほど切り口は新しくないが、だからこそ4分伸ばす技量はさすが。でもやっぱりUFJと比べても一枚落ちる感じは少し…。いや、いいんだけどね!いいんだけど、最終決戦だし、かまいたちだから変にハードル上げちゃうよね!

 

  • ミルクボーイ

「最中」。オカンの好きなお菓子は最中か?最中じゃないのか?1本目とシステムは全く同じ。「皮と餡のハーモニーを感じたことない」などどさくさに紛れて酷いこと言ってるのも同じ。「あんなに甘いのに」というフォローや、例えではあるが毒っ気はない家系図など1本目よりはマイルドになっている…と思いきや、「こんなに最中のこと喋ってるのに誰も食べたくなってないからね!」…これはやられた!内海と駒場だけのものだったはずの悪意が突然観客を包み込んでいくあの瞬間!これがバッチリハマったのは大きかった!

 

  • 総評

というわけで、ミルクボーイの優勝。にちチャプやネタパレなどちょこちょこネタ番組が増え、若手芸人がTVに出る間口が広がる昨今において、ここまで「ダークホースの優勝」と呼べる現象はなかったのでは?傍目には「決勝行ってあのスタイルさえ売れたらいい」なんて勝手なこと思っていたが、きっちり優勝。めでたい。あのスタイルじゃないミルクボーイのネタはどうやら存在しないらしい。この後スタイルを突き詰めていくのか、はたまた謎の進化を遂げてしまうのか。そういう意味でも注目したくなる。

審査は、2番手がかまいたちだった結果、客席は温まり、点数はインフレを起こし、ウケも得点も高いということで、見ていて楽しめる感覚が大きかった。やっぱり得点は高い方がテンション上がりますよね、90超えると金ピカになるし。かまいたちの爆発下でぺこぱまで行ったから点数配分がどうこうってのが起こりにくかった気がする。ニューヨークは………少なくとも松本人志はニューヨークに82点付けたことをかまいたちの爆発のショックで忘れていると思います。

笑神籤いる?とかラグビー三銃士いる?とか、敗者復活組の発表がネタ直前はテンポ悪い気がするとか、細かい不満はあるものの、KOCに比べたら、運営面の不満はないも同然です。KOCの運営にはオープニング映像に始まり、不満がこの810倍はある。あ、不満がないも同然って言った直後にアレだけど、どうか来年は審査コメントと見せかけてCDの告知をねじ込んで、自分のリサイタルみたいにするような傲慢な大御所を審査員に入れないようにだけしてほしい。からし蓮根の時、雨降る深夜2時に見たから余計に怖かったわ!

とにかくミルクボーイおめでとう!ぺこぱも売れてほしい!

(おしまい)