この記事では2019年11月3日にNHKで放送された「コントの日」の感想を1本ずつ丁寧に書いていく訳だが当然、シャレにならないくらいネタバレしているので、録画やNHKオンデマンドをまだ見ていない人はさっさとブラウザバックしましょう。
もう一度警告するけど、この下はコントの日のネタバレだよ?大丈夫?マジ大丈夫?いや君らがいいならええんやけど?
- クイズバッチリ当てまショー
ビートたけしの有名キャラである「鬼瓦権三」出演コント。NHKのコント番組らしいガチガチのセットで、いい意味でベタかつ動きの強いボケをスコーンと入れられると笑ってしまう。番組全体のオープニングコントとしてかなり絶妙なコント。
- 南米でスリを捕まえたことのある中堅俳優
バラエティの打ち合わせ。戸倉さんなる俳優はスタッフに推されている「南米でスリを捕まえた話」を頑なに話そうとしない。
「テレビ」というテーマを掲げた上で最初のコント。確かに「バラエティに出ているイメージがドラマにつきまとって侵食してしまう俳優」というのはいる。大泉洋とかトリビアMCとか。いる割には、意外とコント化されていなかった着眼点かもしれない。
このコントではさらに、「一個のエピソードを12年引っ張らされる」という絶妙にない設定が乗っかった結果、より前述の着眼点が光る形に。ブラジル料理の特集すら呼ばれる戸倉さん、役者仕事にも南スリが侵食してくる戸倉さん、でも収録では楽しそうに話す戸倉さん………なかなか良いコントだった。「南スリ」ってワードセンスもいい。
- 建築現場
建築現場を見に来た依頼主。工事が遅々として進んでいないことに気づくが、そこには意外な理由が…。
コントの設定としては既視感がないこともないのだが、「建築現場」という設定で絵に力が出ている。絵に力が出ている、といえば終盤の秋山の図面を食べる件も最高だったな。
絵力や勢いもある一方で、会話の妙がかなり光ったコントでもあり、「足場を崩したらチームの足場が固まった」「捗りませんよ!」「何とかお店を完成させない方向で…」などキラーフレーズも多かった。
- 最後尾
ラーメン屋の行列の最後尾に並ぶ中岡。次の客にメニューを渡すため、店員からメニューを預かることに…。
ちょっとした気遣いのはずが、なぜか店の運営に巻き込まれていくという中岡らしさが存分に出たコント。斉藤演じる店主が少しずつ接し方を客から社員にシフトさせる演技も上手い。さまざまなパターンに合わせて細かい指示が後から少しずつ出てくるのって仕事の研修だとあるあるだよなあ。オチで悲壮感を断ち切る気遣いも地味に嬉しい配慮。
- 高級食パン
食パン専門店。売られているパンは一斤6000円!その秘密は…。
秋山が何かを作っている人になると、どうしても「クリエイターズファイル」が頭をよぎる…が、「普通の食パンをボっている」というわかりやすい設定が用意されているのが上手い。オチのフワッと感だけはどうにかならなかったか、と思わないでもなかったが。
「どんなパンでも焼き立てが一番うまいということにこだわった極めて普通のパン屋」はこの番組随一の名フレーズと言えるだろう。
- クイズバッチリ当てまショー
オープニング前のコント同様、鬼瓦権三出演のクイズ番組。
先ほど同様、「解答方法」が主なボケだが、先ほどのものより幾分かシュールなボケ。個人的には「伝えてピカッち」を思い出した。あれもお題によって難易度が意外と不公平だった記憶が…。
スタジオコントだからできるカメラワークを利用したボケ、ガッチリしたセットにあのガッチリした小道具。NHKの大金が遺憾なく無駄なく注ぎ込まれた良作である。
- 編集の殺し屋
戸倉さん出演の街ブラロケ番組。しかし、その戸倉さんがやらかしてしまい番組の危機に…。
いわゆる「山口メンバーのメントレG」や、最近では「アメトーークでの宮迫」のような「編集で演者を消す技」をコントにしたもの。ネットで話題になったものをそのままコントにしてしまう時代性の高さよ…。ただ、「冠番組はさすがに即終了だろ…」という悪い意味での設定の粗さは、去年のコントの日を受け継いでしまった感。
しかし、一番自分が声出して笑ったコントはこれかもしれない。あんなにロゴがウニョウニョ動いたら笑うしかないし、「殺し屋」と絡めたボケがあるのも良い。
ところで、「おくすり製薬」「たてもの建設」という雑すぎる社名も妙にツボだったのは自分だけか。
- セットドリンク
ランチセットのドリンクをアイスコーヒーからカフェラテにしたい男。できるかどうか聞いただけなのにどんどん事が大きくなって…これは悪い意味で「去年っぽい」コントかなあ…。個人的に「本部案件です!」が刺さらなかった。最初から大事になり過ぎてるというか…最後に角田が「お引き取りを!」の勢いで誤魔化していた感も「去年ぽかった」。
- 終電間際の渋谷駅
終電間際の渋谷駅でイチャついているカップル…。以上のことは特に起きないコント。確かにこういうカップルいるけど!そこから展開らしい展開もない幕間みたいなコントなので「いるけど!」以上の感想が出ない。
ただ、あのタイムフライヤー歌っていた歌手、あれは誰なんだ?
- いかがわしい店
仕事はあるわ妻に家事をやらされるわでストレスの溜まっている男二人が来た「いかがわしい店」でのコースは、食器洗いコース…。
フリの長さに一抹の「去年っぽさ」を覚えてしまうも、設定の着眼は結構いい。結構いいのだが、なぜか良さがスッと入ってこなかったんだよなあ…何でだろ?
そういう意味では一通りコースが終わった後の秋山と劇団ひとりの会話の方が面白かったかもしれない「おさわり」とか「宅配」とか…あの部分の尺がもう少し長くても良かったような。
- フリー〜背中を押さないで〜
ある局アナがフリーになった妄想を事あるごとに抱く、というコント。
何でしょう。いや、わかるよ?こういう女はいるっていうお笑いはわかるよ?その上でよ?その上で刺さらない。何か、こう、「女に毒を吐く」みたいなコントが、この番組の苦手分野かもしれない。俺は2年連続で見ているから詳しいんだ。ちなみに、前回はそういうのが苦手分野の割にそういうコントが5本くらいあって、全部これくらいかそれ未満のクオリティだった、といえば去年のヤバさがお分かりいただけるだろうか。
- 終電間際の渋谷駅
終電間際の渋谷駅。前作から30分近く経ったはずなのにまだイチャついているカップルを描いたコント。変化のなさがボケなので変化がなく、感想が乏しい。
あ、ただ、あのタイムフライヤー。あれは誰が歌t(ry
- タバコをやめた男
禁煙をした男。あまりにも禁煙を盲信し過ぎていて…。
ある事柄を誇張するというコントの制作方式をしっかりなぞって作られたコント。ただ、どんどん誇張するという一本道感もなくはなく、最後は「俺はぁ!タバコをやめた男だぞ!」とデカい声出す劇団ひとりの力技が面白いだけのコントになってしまうのは、この番組の悪癖が出てると言わざるを得ない。いい設定が作れて、「タバコやめたからさ、死なないじゃん」なんてフレーズも作れるようになって、意外とダレがちなつかみに「例の食パン」を持ってくる工夫まで見えているだけに惜しいんだよ!惜しいんだよなあ!ただ、オチは結構面白い。チンピラなのにそうなんだっていうのもある。
- アーカイブスの日(私たち付き合ってるんだよね?)
MHKの「つぶやけ、アーカイブス」のように実在する映像を使うのかと思いきやそんなことはなく、新規に偽番組作っていた。「ぷらちなロンドンブーツ」など実際の番組で時代背景を固め、「わたツキポイント」などの偽番組なのに90年代丸出しな演出、「ピッチ(PHS)」や「アンテナを長くする」などしっかりした作り込みは感じたが、どうにも面白さがわからない。90年代感を面白がればいいのか、長田演じる彼氏のキャラクターを面白がればいいのか、あるいは…。
ただ、「だんご三兄弟の間にナタデココ挟んで食べたい」は笑った。時代背景の作り方の粗さで、フェイクとして冷ます事なくフェイク感をきっちり強調する名セリフ。
- 終電間際の渋谷駅
最終回。終電間際どころか完全に終電が行ってしまった渋谷駅でのあのカップルを描く。
駅員が出てきてシャッターを閉めるという展開があるがやっぱり幕間程度のものでしかないか。ところで、あのタイムf(ry
- お坊さん
寺にいるめちゃくちゃ態度の悪いお坊さん。実はお坊さんではなく…。
どこからこのコントの作成が始まったか、その答えはやはり「チョコプラ松尾を坊さんにしたい」だと思う。そして、そこからコントにするにあたって出した解が「お坊さんではなくただのファン」だと思う。
「坊さんじゃないんかい!!!」の笑いはアリだし、実は逆説的に松尾の坊主頭を活かしている。ここまでは良い。一方で「ただのファン」というのは………もう少しハマる設定なかったのかなあ、とは………思わなくもないかなあ………。
警官のファンが出てくる展開は結構アリだが、せっかく芸人をたくさん使えるならもっといろいろなファンを出すのもありだった気がする。惜しいんだよ!ちょうど「凡の凡」なのよ!出来が!
- クイズバッチリ当てまショー
こちらも三部作の最終回。鬼瓦権三出演のクイズ番組の様子を描く。前作が良すぎて期待してしまったせいか、あまりにベタなボケで少しガッカリ。いや悪くなかったんですけどね。「普段からこの格好で?」「はい」
- 三重野P
番組の打ち合わせにくる変なプロデューサー、「見える」「見えない」をしきりに繰り返す…。
小手伸也によるキャラクターショー。ただ小手伸也が悪いのではなく、台本が正直良くない。ここにきて「変なプロデューサー」というのはあまりに着眼点がストレートになりすぎているし、主軸となるワード「見える」「見えない」も結構変なスタッフのエピソードでよく聞くワードな気がして魅力に乏しい。
- アーカイブスの日(世界タピオカ滞在記)
アーカイブスの日の二作目。こちらは、あまりにも明確なパロディ。やりたいお笑いはしっかりと伝わってくるので、自分がこのパロディ元を見ていなかったせいで個人的にあまり笑えなかったのが大変悔やまれる。
それでも歌のサプライズで見送られる件なんかは見覚えあった。本当にフィジーに行ってフィジー人の家族と過ごす力の入れ方が正しいかはわからないが、強引なタピオカのねじ込みや帰国しない女優など、外し方は良かったと思う。
- ニッポンの未来
様々な面白候補者がいることでおなじみ「政見放送」をコントでやるというチャレンジングなコント…だが、実際はビートたけしが今まで通りにバカやってるだけのコントだった。これは去年の新元号の方がキレがあった気がしたかな…。
- 総評
去年*1と比べると、圧倒的に面白かった!これは間違いない。まあ、去年は砂を噛むような、というよりあれを2時間見るくらいなら砂を2時間噛んでた方がマシな番組だったので。感想を活字にしてみると我ながら意外と絶賛している感じだが、「めっちゃくっちゃ面白い!!!!みんな見て!!!!最高!!!!」となるほど大爆笑大絶賛かというとそれもない。「セットドリンク」とか「三重野P」とか「フリー〜背中を押さないで〜」とか結構派手に外してるコントもあったし。
ただ、「コントの骨組みだけ作って飽きて投げたもの」を粗製乱造し全国放送するだけの2時間だった去年のコントの日と比べると、「南スリ」などを筆頭にフレーズによる笑いが増強されていた。思えば、OPのカラオケの意味不明な歌詞がコントタイトルを提示していたり、「戸倉さん」や「食パン」など、一部のコントが無理しない範囲で繋がっていたりと、仕事の形跡というかやる気というか、そう行ったものが見られた。この辺りからして今年は去年とは違いましたよ、ええ。もちろん、まだまだ「ふつうにジャンポケチョコプラ03ロバート劇ピンなどがネタをやる番組より面白いか?」と言われると首を捻らざるを得ない出来ではあるが、ノンストレスで見れてそこそこ笑える出来になっていたのはめでたい。今後もNHK特有の、その気になればフィジーにロケ行ける財力と、その気になれば粘土で本能寺の変を粘土で表現できる人力を活かして頑張っていただきたい。わたツキなんかは個人的にそんな笑ってないし、本文でもそんな褒めてないけど、ああいう形にチャレンジした姿勢自体はめちゃくちゃ褒めておこうと思います。多分だけど自分じゃない誰かにはめちゃくちゃ刺さってる気がする、何となく。
ちょっと去年腐しすぎたので、その分今年を褒めておかないとな、と。それがこの記事を書く動機でした。来年は結構まっすぐ期待したいと思います。
しっかし、「去年のコントの日を外国人に見せる」っていう番宣方法は何だったんでしょう?そんなにハンデを背負いたいか?そんなハンデ背負うからTL視聴率があんな悲しいことになるんだ。多分だけど「ゴチをやりますの次の回のゴチになります」の方がよっぽどTL視聴率高かったぞ!
まあ、でも、2020年は「去年のコントの日が面白い年」になるのでそこも改善されるか。来年こそは、ご期待ください!(ドコドン)
(おしまい)