M-1グランプリ2017感想文

この記事ではM-1グランプリ2017の感想を1組ずつ丁寧に書いていく訳だが当然、シャレにならないくらいネタバレしているので、録画をまだ見ていない人はさっさとブラウザバックしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、12月3日にM-1グランプリ2017の決勝戦が生放送され、M-1グランプリ2017も終結した。キングオブコントの方は2015、2016、2017とレベルが上がっているように見受けられたが、M-1グランプリは2016がかなり高いレベルだったため、昨年ほどではないところに落ち着いた、という印象。面白かったけどね。ただ、敗者復活戦から見た上で、去年は「決勝の奴らは敗者復活戦とはレベルが段違いだな!*1」と思わせたが、今年はそういう「このメンツで間違いないな!」という説得力はなく、極論を言ってしまえば準決勝の順位が霜降り明星辺りより上の組1-2組くらいはこっそり入れ替わって誰かしらストレートで決勝行ってても良かったんじゃないかとすら思った。これに関しては敗者復活戦のレベルが上がっていたっていうのもあるけど。敗者復活戦のレベルはかなり上がった一方で決勝戦のレベルはやや下がるという。いわゆるハイレベルの団子。あとは好み。そんな感じがした。あと、上沼恵美子怖い、超怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一応、もう一回警告しておくけど、この下はM-1グランプリ2017の決勝ネタバレだよ?大丈夫?ブラウザバックする?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずはFirst Roundから

  • ゆにばーす

「ホテル」。ゆにばーすは男女コンビなのに、泊まりの営業でホテルが同じ部屋らしい…。そこからはオーソドックスなホテルの漫才コント。これがまあ、オーソドックスだがめちゃくちゃ笑った。フロントやエレベーターなど叙述トリック的なボケに偏っている印象はあったが、「ほななんで乗ったんや!」、「どんな戦争も嫌じゃ!」、「お前はベランダ上がりやろ!」など的確かつキレ味溢れるツッコミが冴え渡る。何よりブスイジリが控えめで、でも全くないわけじゃないというバランスが素晴らしい。「天井低ない!?」→「二段ベッドやった!」や、伏線を一本だけ回収してバサっと終わらせるあのオチも良い…。トップじゃなければもっともっと良い点が付いたのでは…と思わずにはいられない、いいネタだった。

 

  • カミナリ

「一番強い生物」。一番強い生物は熊、というたくみの仮説にまなぶが突っかかる。まあ、いつものカミナリという感じで面白かったは面白かったが、伏線をかなり張り巡らせたり、一回では分かりにくいボケを泳がせたりと構成がバッキバキに仕上がっていた去年の決勝のネタ(川柳)と比べると、どうしても落ちるな、と。もちろん「崖から熊を落とした奴が一番つええな!」や「警察は全裸のお前に用があるな!」など、そういう要素がなかったわけではないが、2年連続で良いネタを持ってくる難しさを見てしまった気がする…。

 

「旅館」。村田が旅行に行きたいということで、久保田が旅館の女将をやってみる…。序盤、季節感のズレが気になって仕方なかったが、コント入ってからは、とろサーモンらしさ全開。「お前を壊滅的な被害に遭わせるからな」や「お客さんのことをマネーと呼ぶ」などの性格の悪いボケを筆頭に、カマキリの死体の話をダラダラとしたり、ボソっと「日馬富士ですか?」とぶち込んだり。「人と喋るの初めて!?」や「さっきの部屋の奴何してたん!?」など何気に村田のツッコミも素晴らしいのだが、久保田のキャラクターとボケが立ちすぎていて、そう思わせない。そう思わせない凄さっての含めて凄いけど。個人的には好きだったカマキリの話がウケてないのと、元々の芸風からあまり評価されるタイプではないと決め込んでいたので、正直この高得点には少しびっくりした。いつも通りのことをいつも通りやって暫定一位って…かっこいいよねえ…。というかこんなに高評価されるんだったらもっと早く決勝に上げぇ!

 

「合コン」。田中が開いた合コンにオカマがいたらしい、ということで田中に再現してもらうことに。去年や一昨年と同じく、田中だけがコントに入る漫才。ボケとツッコミの間や強弱などの技術はいつも通りかそれ以上で、「去年や一昨年より若干ボケやオチのバラシが弱い」くらいしか目立った問題点の見当たらない漫才。やっぱり「もう一人乗ってたん!?」の時優勝すべきだったんだって!ここもカミナリ同様、強いネタを作り続ける苦労が伺えてしまった。

 

「怖い話」。怖い話を聞くとゾッとする濱家。それに対して山内は怖い話を聞くとイラッとするらしい…。「トイレの花子さん」「メリーさん」など、普通の怪談をする濱家に山内が突っかかっていくいわば「ボヤき漫才」。キングオブコント優勝直後のワイドナショーでCDショップのネタを見た時から思っていたが、やはり二人とも演技が上手くなったと思う。「怪談の変なところに突っかかる」だけじゃ飽きるところを、トイレに引き込むくだりによる動きの笑いや、「ムキムキでスキンヘッドで卍のタトゥーの入った大男」の繰り返しといった構成で魅せているネタ。笑う以上に漫才の技術や構成が上手くて、これは高得点だろうな、と。二冠も目前だと思ったけど、とろサーモンのセンスと和牛のより仕上がった構成には一歩及ばずといったところだったか…。

 

「野田ミュージカル」。野田が「野田ミュージカル」なるものをやってみる。「変な動きしてる野田が野田ミュージカルなのかと思ったら変な客だった」というボケ一本のネタ。個人的にはかなり笑ったが…なるほど、客ウケが他のコンビほど良くないねえ…。「壮大なテーマと見せかけてその場に座る」→「普通に客っぽい奴」→「普通の客の友達」→「た〜ち〜み〜♪」の辺りなんか圧巻じゃないですか…。でも、ネタ順的に、色んなボケの中で卍を繰り返しに織り込んでいたかまいたちの直後にただただ繰り返しのネタだったというのも良くなかったのかもしれない。あとは、もっと野田の動きボケがマヂカルラブリーの芸風として認知されればもっとウケたんじゃないかとは思う。

まあ、こういうボケ一本のネタは上沼恵美子がブチギレてた通り「好きか嫌いか」に過ぎないのでは。仕方ないね(超適当)。

 

「歌のお兄さん」。歌のお兄さんをやってみたいという石井。しかし、新山は歌のお兄さんを知らないらしい…。「いい年こいた大人である新山が今更歌のお兄さんにハマる」というギャップと新山のハイテンションだけで乗り切っている漫才。1回見た時はあまりにもダイアンすぎる導入が気になってハマらなかったが、2回見るとハイテンションな勢いの割に「将来の夢は歌のお兄さんです!」、「おもんな〜!」というスカし、「オイッ!オイッ!」の被せなど、(ベタとはいえ)意外と構成がしっかりしたネタ。勢いだけの力技ゆえ、個人的には2周してもやっぱりハマりきらなかったが、その設定には興味深いものがあった。というのも、「コンビの片方が初めてだから練習のためにやってみる」という漫才コントの入りは多くあれど、「コンビの片方が初めてだから知らない」という設定を下地にした漫才コントって意外にないのよねえ…*2

 

  • ミキ

「漢字がわからない」。鈴木という男に手紙を書こうとする亜生だったが、「鈴木」の書き方が分からないので昂生に聞くことに…。申し訳ないこというとねえ、ミキは一回もハマったことないんだわ…。速いだけで「知ったかぶりっ子」とか「見失った!」とか、ボケが薄くないっすか?後半、昂生がヒートアップすると速すぎて何言ってるかわかりにくくなるし…。「これがミキの芸風だ!」って言われたら、まあそうかって言うしかないけど、そうだとしたら僕は全く好きじゃないな…。申し訳ないけど…。かまいたちかスーマラを最終決戦に出せぇ!(石直球)

 

  • 和牛

ウェディングプランナー」。水田がウェディングプランナーをやってみる…というこれまたオーソドックスな漫才コント。ウェディングプランナーというちょっと捻った設定ながら、前半のボケは「M-1決勝ということを考えなければ面白いけど、M-1決勝だと物足りないくらい」で、後半結婚式本番のコントをやって回収というウェディングプランナーという設定の漫才ならではの仕掛けがたまらない。この「前半のボケを後半で回収して被せる」という仕掛け自体はトータルテンボススーパーマラドーナもやっているものだが、「せり上がり」、「回すと伸びる」、「カラオケ音源しかない」、「合図で点火」、「ジョブズスタイル」、そしてオチの「パーンと飛び出す」までほぼ全てのボケを回収するこの無駄のなさ!そのうえで、「ちゃんとやっ点火!」や「愛情をグラフに表したものがこちらになります」など新規の件を盛り込む自然さ!これはもう芸術点だけで最終決戦進出を確信せざるを得ない、秀作だった。前年度決勝進出者3組のうち、前の決勝同様(か、それ以上)にいいネタを持ってこれた唯一の組として素直に褒めるしかないだろう。

 

「おかしな校内放送」。序盤はボケとツッコミを説明するゴリッゴリのメタ漫才かと思ったが、そこからボケとツッコミをゲーム化するという発想が素晴らしい。そのあとはもうそのゲーム一本、ピンポンパン一本で引っ張るという往年のジャルジャルらしさが光るネタ。さらに、「面倒くさいな〜」というボヤき、まさかの逆バージョン、「ピンポイント」、「来ましたよ、誰か」を貯めておく、など小ネタや構成は「ピンポンパン」という狭すぎる範囲でできる笑いを全てやりきったのではと思わせるほど。このストイックさ、余計な肉付きのなさこそがジャルジャルの真骨頂!………真骨頂なんだけど点数が伸びなかった理由も分からなくはない。

 

 

ここから最終決戦。

石焼き芋」。去年あたりの敗者復活戦でやっていた他、何回かTVで見たことあるネタ。要するに去年辺りからずっと勝負ネタなのだろう。だが、「すいもせん」、「あんなゆっくり走った車に轢かれとるやないかい!ただでさえうちの会社、車の事故多いんやからね!」、「良きに計らうがいい」など見たことないボケやツッコミがたくさん。M-1用に手数を多めに仕上げて来たことが伝わってくる。特に長めにボケを貯める新興宗教の件で中盤に「何やねん、それは!」とツッコミを差し込むようにしてダレにくくしたのはめちゃくちゃ素晴らしい改良。「続行!」の別バージョンが見れたのも満足。いやー、いいネタだった。

 

  • ミキ

スターウォーズ」。前述のところでミキのことを大体全部書いた上で、このネタの感想を書くにしても非常に困る。総書記の件なんか1本目からの被せというよりただ単にボケがないからに見えたぞ(去年か一昨年の敗者復活でこのネタを見たからかもしれんが)…。結局、M-1決勝でもミキにハマることはなかった…なかったのである………。

 

  • 和牛

「旅館」。旅館の女将が苦手だという水田のために実際に河西が女将をやってみることに…。河西が女性役、水田が偏屈といった点で去年のM-1を彷彿とさせるネタ。というか去年辺り見たぞ?しかし、一方で「もう一泊してボケを被せる」という今年の一本目と同じ仕掛けを持って来たネタでもある。この仕掛けに関しては以前見た時にはなかったぞ?「臭い、臭い、面倒臭い」の辺りから河西がツッコミを超えて思いっきりボケてるのが痛快。「類は友を呼ぶ」「こうしたら(泡が)できますよ〜」なんか腹抱えて笑った。敗因があったとしたら「コントから出ないうえに場所の動きがない*3」、「ボケツッコミがシームレスすぎる」などコントっぽすぎたのが原因…かもしれない。

 

 

 

総評すると、今年もいろんな漫才が見れたというお得感はあった。確かにあった。そして、今年は審査員が5人から7人に増え、メンツ的にも往年のM-1に近くなった*4わけだが、その結果「色々な漫才が往年のM-1審査員に審査されたらどうなるか?」という実験場になっていた印象も強かった。

そういう意味で興味深かったのはさや香マヂカルラブリージャルジャル。この3組は漫才の芯がシンプルだった。そうなると、そのシンプルな芯をどう審査するかは審査員次第ということになる。さや香は「客ウケはいいが、勢いだけの力技なので審査員が高い点を入れにくい」、マヂカルラブリーは「客ウケが良くないので審査員が高い点を入れにくい」、そしてジャルジャルは「客ウケはいいので、入れるも入れないも審査員次第の賛否両論」という結果だった。そして、最終的に「7人も審査員がいる場合、ジャルジャルみたいに新しいことすると賛否両論になるので、王道をキッチリやった方が高得点高順位になる」という変な教訓ができてしまった。つまり「M-1って手数論*5使えば優勝できるし、使わないと優勝できないクソゲーなのでは…?」と巷で言われたり言われなかったりした往年のM-1が悪い意味で蘇ってしまったのでは?と思った。ジャルジャルに関しては礼二と渡辺正行が前日に生牡蠣食って大当りしてたらとろサーモンと同率3位*6だったわけで。痛いファンとかそういうことじゃなくて時の運ってそういうことだよなあというお話。あと最終決戦も審査員が去年と同じだったら和牛が勝ってたということでね、審査員が誰なのかという時の運が最後は決着をつけたというお話。あ、ただ時の運とか関係ない話、上沼恵美子はめっちゃ生牡蠣食え。加熱調理用の奴食え。お酢とかもみじおろしとかそういう滅菌作用ありそうな味付けせずそのまま食え。

そんな時の運も実力のうちということで優勝したのがとろサーモン。15年間ずっと苦労していたというか、ここ何年も全く芸風変えてないのに準決勝で落ち続けていた。しかし、いざラストイヤーで決勝上がったらストレートに優勝してしまうという結果に。

 水曜日のダウンタウンの「早弁先生」のとろサーモン久保田が素晴らしすぎた話 - オルソンブログ http://orsonblog.hatenablog.com/entry/2017/05/06/003454

弊ブログでもダイレクトマーケティングした芸人だが、もちろん凄いのは弊ブログではなく、とろサーモン本人ととろサーモンを見出して登用した水曜日のダウンタウンのスタッフの皆さんなのは言うまでもない。というか何年も前から芸風が良くも悪くも変わってないんだから、もっと早くM-1決勝上げても、もっと早く売れてもよかった芸人である。いやー、とろサーモンが王者として評価され、売れることになりそうでよかったよかった。

最後に余談だが、このブログも普段は閲覧数70-90の閲覧数が、M-1終わってから3日連続で何も更新していないのにオーバー200を記録し、12月6日に「今月のPVが1000を達成しました」なる、0の個数を一個間違えてるとしか思えない通知が来るというバブルが起きた。ひとえに上記記事のおかげである。これだからイキリお笑いオタクはやめられない。やめられないので、明日からこのブログはAマッソのことだけを書き続ける「Aマッソに触れな侍ブログ」に改装しようと思います。

(おしまい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(続行!)

最終決戦、個人的にとろサーモンより和牛派だったということはオフレコにしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:和牛は別、と思う一方で和牛の代わりに誰外すかというと難しすぎた。

*2:去年のM-1予選でロングコートダディというコンビがスカイダイビングという題材で「二人ともスカイダイビングを知らないからよくわからない」という漫才コントをやっていた…がそれ以外でそういうネタは知らない

*3:一本目はウェディングプランナーとの打ち合わせ→結婚式本番という動きがあった

*4:春風亭小朝は2001年と2004年のM-1で審査員を担当、渡辺正行は2005年、2006年、2008年、2009年、2010年のM-1で審査員を担当している

*5:ざっくり説明するとフリを短くして高速でボケツッコミしてパンパンにボケを詰め込めばM-1に勝てるという理論。名指しでいうとキングコングNon Styleのような漫才であり、スリムクラブの準優勝とともに崩壊した論理。

*6:詳しいデータと計算は省くがこれは本当。なお、どのみち最終決戦には出られない模様。