数字を目指しすぎたコンテンツはなぜつまらなくなるのか

数字、それは視聴率や閲覧数を指すことが多い。というかこの記事では指すことにする。

数字が多い、というのは多くの人が見ているということでありそこに広告を出せば儲かるじゃん!いいじゃん!という発想がTVCMやウェブサイトのアフィリエイトという奴である。しかし、数字が大きいバラエティ番組(当然WEBサイトにも当てはまってくるけど)が面白いかはまた別の話…というのは過去にも散々考察してきた通りである。詳しくは過去記事を読んでいただきたい*1が、面白い番組ほど意外と録画しがち、コンプラ意識しすぎなどを理由に挙げている。そして、過去記事に合わせてすでにTV局が数字を取るために行なっている策略をなぞると

  • 一回当たって、認知の広がったコンテンツをもう一回やって当てに行く
  • 面白すぎず、何かしら作業しながらダラーっと見れるくらいの番組を作る。

をすれば数字が取れるということになる。今回は数字の大きいものがつまらなくなる理由としてもう一つ足したいものがある。それが

  • 世の中には色々な人がいて全員に好かれるのは無理だから。

だ。

そしてこんな仮説が出てきたのはフジテレビが原因であった。

フジテレビというとめちゃイケとんねるずのみなさんのおかげでしたが定期的にネットで炎上しており、その過程でメインMC的ポジションの芸人Oが「嫌なら見るな」という格言を残した結果、本当に視聴率が低迷し、来年3月に2つ揃って終了することが決まったという大変ざまあねえTV局というイメージを持つ者も多いだろうが、IPPONグランプリやすべらない話、ENGEIグランドスラムといった芸人の地力を出した番組を多数放映してくれるという点で個人的に大変お世話になっているTV局でもある。また、フジテレビというとめちゃイケに始まり、現在もスカッとJAPANなどに悪い意味で長々と受け継がれるテロップモリモリバラエティの雄というイメージも少なくない…と思う。大丈夫?大丈夫だよねえ?結構な数がそのイメージ持ってるよねえ?

しかし、ENGEIグランドスラムなど先述において個人的にお世話になっている番組はそういった「演出の主張しすぎ」が皆無である。全く演出がないわけでないが、その演出が自然というか量が適切というか。それに、世にも奇妙な物語という短編ドラマを5本程度流してくれる番組は特番として長寿番組であるし、深夜で不定期放送されておりFODプレミアムで配信された「放送禁止」というフェイクドキュメンタリーも個人的に大変良かった。

とにかく、フジテレビは演出を淡白に抑えた面白い番組も作ろうと思えば作れるにも関わらず、過剰演出で面白さを強引に引き延ばそうとするウンコみたいなバラエティを作っているのである。その目的は何か?答えは簡単、こっちにとってはウンコみたいでも好きな人は好きだから、である。もちろん、一見ウンコみたいに面白くない方が数字を取りやすいという現象があるのは過去記事にも書いたし、数字がないことにはスポンサーがつかない、というのもTV局の仕組みを語る上で欠かせない要素である。そんな中、私は先日フジテレビで、あるとても尖った特番を発見してしまったのである。

http://www.fujitv.co.jp/kayokyoku/

 

三宅裕司春風亭昇太のサンキュー歌謡曲一座

(2017年11月12日 19時から放送)

 

それがこちら。三宅裕司春風亭昇太が司会で、昔の歌謡曲を特集するという番組。当然、個人の独断に言わせれば「ウンコみたいな番組」に入るのだが、ここまで変な番組だと逆にちょっとだけ見てしまった。一人暮らしだったらありえない采配だったと思う。ちらっと見た時には60年代のグループサウンズをVTRで振り返っており、堺正章*2以外知ってる人はいなかった。が、ここで気づく。この番組は自分ではない誰かに向けられている、そしてその「誰か」とは、60年代のJ-POPが世代だった高齢者に他ならない…と。そこから考えられるフジテレビがこんな番組を日曜日のゴールデンタイムに流す理由はこうだ。今の若者はTVを「つまらないから」と言って、TVを見ずにネットに噛り付いている。これに対し、TV局は面白いTV番組を作ってネットに噛り付く若者を引き剥がす…というのがある種真っ当な発想であるが、面白いからと言って見てくれるかは別である。ならどうするか?若者がTVを見てくれずとも高齢者がTVを見てくれているなら、その高齢者が見そうなTVを作れば良い、となる。その考察の産物が春風亭昇太三宅裕司がMCの歌謡曲番組でないかと…。

この作戦には大きな穴がある。それは絶対に視聴率100%は取れない、ということだ。だって若者が「より」見ないんだから。しかし、今の日本は少子高齢化社会で5人が1人は高齢者となっているので、高齢者全員が先述の高齢者向け番組を見れば視聴率20%も取れるのである。一方、視聴率100%となると難しい。視聴率100%取るほどに目につく面白い番組を作る、面白い芸人を出すにしても、どうしたってアンチやクレームは出てくる。しかし、クレームに耳を傾けて萎縮すると面白さも削がれてしまう事案が出てくる。そして、多種多様な人間がいる、というのはいわゆる偏差値やリテラシーの観点だけでなく年齢や性別などもそうだ。例えば、日本人の半分は女性なので女性に嫌われると視聴率は50%以上取れなくなるのである(当然だが、男性に嫌われた場合も然り)。

つまり、この記事で言いたいのは闇雲に数字を目指さない方がいい、ということそして、ターゲットをきっちり決めてターゲット以外から引き込もうと数字を欲張らないこと、これが面白いコンテンツ作りに重要な点である。数字を目指さない方が数字を取れる…取れなかったとしてもユーザー満足度が段違いになる…というお話。

そして、リテラシー・年齢などの観点から様々な番組を作れるJOCXの振れ幅は舌を巻くものがある。この「振れ幅」に関する話をするとJOCXよりNTVの方が心配になってくるのである……………

 

(おしまい)

 

 

 

 

 

*1:http://orsonblog.hatenablog.com/entry/2017/09/24/212600

*2:今でこそ、テーブルクロス引いたり星三つって叫んだりしてるが、最初はザスパイダーズっていうGSバンドのボーカルだったのだ。