こんばんは、オルソンです。
皆さんは「はたらく細胞」というアニメをご存知だろうか?このアニメは赤血球などの細胞を擬人化することにより、その働きをわかりやすく解説したアニメである。その特徴的な設定は「生きているだけで聖地巡礼ができる」とも言われている。
そんなわけで、今回ははたらく細胞の聖地巡礼ガイド記事を書こうと思う。
1、聖地巡礼のルールとマナー
はたらく細胞の聖地である血液及び血液中に含まれる擬人化されていない血球などは肉眼では観察できない。そのため顕微鏡を使うのが基本だ。顕微鏡を使う際はルールとマナーを守って楽しい聖地巡礼を。
1、接眼レンズ(上のレンズ、文字通り目に接するレンズ)と対物レンズ(下のレンズ、文字通り物に対しているレンズ)を取り付ける。なお、ホコリなどの混入防止のため接眼レンズ→対物レンズの順に取り付けること。
2、ステージ(対物レンズの下にある台)にプレパラート(観察対象。作り方は後述)を載せる。
3、まずは対物レンズを低い倍率にしてから接眼レンズを覗いて、観察対象を探す。観察対象が小さいと思ったらレボルバーを回して対物レンズの倍率を上げる(基本的に長いレンズほど倍率が大きい)。
4、ステージを動かしてピントを合わせる。この時まず、プレパラートを横から覗き込んで、ステージを対物レンズに当たらない程度に上げたあとに、接眼レンズを覗いてピントが合うまで下げていく。逆でもいいと思いきや、そうすると対物レンズやプレパラートが損傷する。
5、ステージの下にある反射鏡を回して上手く光を当てれば観察物を明るくてらせる。最近は反射鏡が普通のライトになったものがあるほか、高倍率で暗くなった時用に集光できる凹面鏡のついた顕微鏡もあるぞ!
以上が顕微鏡による聖地巡礼の基本マナーだ。なお、マナーの中に出てきたプレパラートとは
このようにスライドガラス中に観察対象の液体(ここでは血液)を載せ、それをカバーガラスで挟んでできる板である。顕微鏡で液体を観察したいときや観察対象を乾燥させてはいけない時に使うのだ。なお、名前の通りスライドガラスもカバーガラスもガラスなので取り扱いには注意しよう。特にカバーガラスはうっすいガラスなので指でプチッとやると潰せる…が潰すと第2話のようになるリスクがあるので潰さない方が良い。
以上が聖地巡礼の基本的なルールとマナーである。これらを守らないと、はたらく細胞のファン全体が、学力のない人間と取られファン全体のイメージに関わるので確実に守るように!
2、聖地巡礼
2-1、1話
1、動脈
このアニメの主体となる機関は血管である。動脈とは心臓から各種機関に行く血管のことを指す。逆に各種機関から心臓へ行く血管を静脈という。動脈が体表に出ることは少ないが、眼球やその下(あっかんべーする時だけ出てくる場所)は巡礼しやすい聖地と言える。詳しくは8話で解説。
血液は主に下記の4要素によって形成される。
赤血球:このアニメの主人公。血液中でも主人公といえなくもない。人間の細胞としては珍しく、核*1やミトコンドリア*2がなく、ヘモグロビンによる酸素の運搬に全力を注いでいる。このヘモグロビンというのが赤いために血液は赤く見える、と言ったら血液中にいかに赤血球が多いかわかるだろう。ヘモグロビンは下記のような平衡反応をする物質である。
Hb+O2⇄HbO2
これとルシャトリエの原理*3から、「酸素濃度の濃い場所で酸素と結合し、酸素濃度の薄い場所で酸素を離す」という都合良すぎる状態を作ることができる。
溶血、本編では肺炎球菌による攻撃を受けて中身が飛び出す現象として描かれていたが、高校生物序盤では細胞膜が半透性を持つため赤血球が赤血球内部より浸透圧の低い水の中に入ると、赤血球が水をどんどん吸って、ディグダグの敵みたいにパンクする現象として教わりがち。
白血球:体内に異物が入り込んだ時、真っ先にそれを除去撃退してくれるのが白血球である。このアニメでは白血球はナイフを持ってバリバリ戦っていたが、実際は異物を飲み込んで自分も死ぬ、というポケモンのだいばくはつみたいなワイルドな戦法を取る。余談だが、白血球は核がある。
血小板:CV.長縄まりあ。早くステラのまほう2期をやらんかい。赤血球や白血球と比べると大幅に小さい細胞、という描写は事実に忠実なのである。大幅に小さい細胞であるが止血に関わる。止血に関わるので、第2話Bパートでは主役級の役割を果たすことになる。
血しょう:漢字で書くと「血漿」。つまり血小板とは響きが似ている以上の関係はない。ざっくりいうと血液から先述の3つの細胞を除くと残る水分。細胞ではない。糖やアミノ酸、二酸化炭素など水に可溶な物質は血しょうに溶かされて運ばれるのだが、今作はなぜか赤血球が二酸化炭素や栄養素も運んでいるため、血しょうの出番はなく、ゆえにそんな概念はないことにされている。
2、静脈弁
ヒトの場合、全て合わせると約10万キロメートルにもなる血管のポンプは心臓のみ。ということは心臓への帰り道である静脈では失速してしまう…そして、老廃物や二酸化炭素は心臓にたどり着くことなく逆流してしまう…ということがないように、静脈にだけ弁がついている。また、動脈より受ける血圧が弱い分動脈より壁が薄いという特徴もある。なお、静脈は動脈よりは巡礼しやすい。一番利便性の高い聖地はやはり手首である*4。
3、脾臓
脾臓は古くなった(目安として100日)赤血球や白血球や血小板を破壊する臓器である。こいつも近々脾臓に破壊されるのだろう。なお、B細胞などの免疫細胞の産出も行なっている。
また、飯を食べてすぐ走ると痛くなる臓器は脾臓。
4、リンパ管
人体に血管が張り巡らされていることは有名であろうが、もう一つ張り巡らされている管がある。それがリンパ管だ。リンパ管と血管は左鎖骨下静脈で合流する。リンパ管の重要な役目は抗体や抗体産出細胞の産生である。なお、先述の脾臓もリンパ系の器官とされている。
リンパ管に赤血球が入ることは一般にない。一般にないからこそ赤血球がこっぴどく怒られているこのシーンでは、怒っている側がキラーT細胞だったりする。芸が細かい。
余談だが、今回描かれなかったリンパ管の重要な役割に脂質の輸送、というものがある。
5、腎臓
看板にもある通り、血管から尿素*5のような老廃物や過剰な塩分および糖分を除去し、尿とそれ以外に分ける器官である。なお、好きな時に好きなものを食べられない時代の方が長かった人類は、尿に糖分が入ることはないのだが黒川明人*6のように、あまりにも過剰に糖質を取ると尿に糖が混ざることがある。これを糖尿病という。
なお、写真に写っている看板はマジな腎臓の形。よくソラマメ型、と例えられる。
6、樹状細胞
体内に異物が入ってきた時、その異物を取り込んでT細胞(後述するが、免疫機構に重要な作用を及ぼす)の活性化を促す細胞。鼻腔、肺、胃腸など外界と触れる部分に存在している。
7、血餅
血小板によって餅のように固められた血のこと。血小板は血管が損傷するとまずこの血餅を作って血を固め、損傷部から血液が流出するのを止める。その仕組みは第2話で詳しく取り扱われることになる…。
8、細胞性免疫
細胞性免疫…という単語がアニメ本編に出ていたかは覚えてないが、1話のモデルがこの細胞性免疫であることは揺るぎない事実である。そんな細胞性免疫の巡礼をしてみよう。
まず、血液中に侵入した菌類(抗原と呼ぶ)は白血球が即座に発見しボコボコにする…が、強い菌や量が多い場合、倒しきれないこともある。
しかし、白血球が抗原を攻撃したことを認識して活動するのがヘルパーT細胞。インターロイキンという物質を放出し、B細胞(後述)やキラーT細胞を活性化させる。なお、このT細胞への活性化を行うことがあるもう一つの細胞が前述の樹状細胞である。
キラーT細胞はヘルパーT細胞からの指令及び情報を受けて出動し、抗原に対して特異的な反応をし、ボコボコにする。白血球よりよっぽど強い。そして、キラーT細胞が一度受けた抗原の情報は永久に記憶される。そのため健康なヒトが同じ種類の菌やウィルスによって風邪を引くことはない。このように細胞が直接抗原を攻撃する免疫機構を細胞性免疫という。
なお、エイズになるとヘルパーT細胞の働きが弱るので免疫機構が弱る。性交には気をつけよう!
9、肺
ヒトを含む多くの陸生生物の呼吸器として名高い器官。空気を取り込んで酸素を吸収し、血液中の二酸化炭素を空気中に放出する、というガス交換を行っている。ちなみに、ここまで紹介した臓器と異なり、肺は筋肉ではない。つまり自律して動けないため肺の周りにある肋骨と、肺の下にある横隔膜の動きによって体積を上下させている。
10、毛細血管と肺胞
毛細血管、は聞いたことある人も多いだろうが、毛細な血管である。ヒトの身体の隅々まで酸素や養分を行き渡らせるために極限まで細い血管が手足の指先などに張り巡らされているのだ。ただし、ここでは肺にある血管を指す。
肺の構造は、鼻や口につながった空気袋の壁に毛細血管がグルグル巻きになっている。そして、肺胞に当たった空気しかガス交換はされない。…めちゃくちゃ効率が悪そうだが安心してほしい。肺は単なる空気袋ではなく、空気袋の一つ一つが膨らんだ形になることで表面積を稼ぐことに成功しているのだ(下画像参照)。
この一つ一つの膨らみのことを肺胞と呼ぶ。中学生物で表面積底上げ三銃士といえば、肺胞、柔毛、根毛、である。
11、気管支
人間の肺は一つではない。左右に一つずつある。アニメ本編でも「左肺」という単語が出てたし。左肺と右肺で大きく構造が変わるところはないが、口から肺へ伸びる気管は左肺と右肺に分岐する。この分岐した気管を気管支という。この気管に気体ではないもの(食べ物とかね)が入ると大きく咳き込んでむせるハメになる。
12、気道粘膜
鼻から肺へ向かう気道にある粘膜。この粘膜で菌などの抗原を搦め捕り、クシャミや鼻水として体外へ押し出す、というのは人間の防衛反応の常套手段。鼻にコショウや細くひねったティッシュを入れるとクシャミが出るのはこの反応によるものであるが、花粉にも同じ反応を示すようになり、花粉が入っただけでクシャミを連発し、鼻水がドリンクバーのように出るようになってしまう現象が花粉症である。
なお、冬になると空気が乾燥するため、気道粘膜も乾燥する。そのため菌を搦め捕りにくくなって喉を痛めたり風邪を引きやすくなったりする。冬は加湿器を使おうね!
2-2、2話
1、フィブリンとGP1b
フィブリンとは、クール系アイドルとしてお馴染みで実家が花屋で、「ふーん、あんたが私のプロデューサー?…悪くないわね」というセリフでも有名な、2014年春開催の第3回シンデレラガール総選挙で1位を取ったあのキャラクター…………ではなく、血管が傷ついた時にその傷口を塞ぐ止血に関わるタンパク質。フィブリノーゲンという物質が凝固因子(代表的な物質名でいうとトロンビン、画像でいうと2枚目で血小板が持ってるナットみたいな奴)が重合してできたタンパク質。なお実際は、血管に損傷がない場合はフィブリノーゲンの状態で存在し、損傷が起きてからフィブリンが生成される。また、作中にはGP1bという結合因子も登場している。あと1枚目の画像の川は一体どこなんだ…?
2、真皮
人間の皮膚は表皮と真皮の2層構造となっている。1μmは1mmの1000分の1の長さ。400μmは表皮と真皮の長さの和に近い。要するにほぼ皮膚。毛細血管は真皮までしか伸びておらず、表皮は真皮を守るためにケラチンというタンパク質を含んでいる。一方、真皮はコラーゲンという繊維質のタンパク質を多く含み、皮膚に強靭さを与えている。また、表皮と真皮では受精卵のうちどの部分か生じるかが異なり、そういう意味で真皮は筋肉に近い。
3、黄色ブドウ球菌(常在菌)
常在菌は人間の皮膚に常在している菌。2018年という公衆衛生が行き届いた美しき先進国NIPPONでも、人間の皮膚には無数の菌がいるのだ。もちろん皮膚の上にいるだけでは侵入できないが、鼻や口などのセキュリティホールから侵入された場合と、今回のように体外に通じる傷口ができるとそこから侵入される場合がある。
黄色ブドウ球菌は、知名度的に最もメジャーな常在菌。解説テロップにあるように様々な疾患の原因となる。
常在菌ということで、皮膚の損傷をきっかけに侵入することが多く、第一次世界大戦では多くの軍人が清潔とは言えない環境下での擦り傷(擦り傷より重い怪我も含めて)からの黄色ブドウ球菌の侵入によって死んだと言われている。なお、1928年にペニシリンという黄色ブドウ球菌への抗生物質*7が発見されたため、第二次世界大戦では第一次世界大戦ほど多くの軍人を殺さなかった菌とされる。ただし、現在はペニシリンに耐性を持つ黄色ブドウ球菌も少なくない。
また、雪印牛乳の食中毒事件の原因菌もこいつ。黄色ブドウ球菌自体は熱すると滅菌されるのだが、黄色ブドウ球菌が産生するエンテロトキシンという毒素は熱しても分解されないため発生した。
4、増殖するにはもってこいの場所
ヒトを含むほぼ全ての哺乳類および鳥類は恒温動物といい、体温を36-38℃程度に保つことができる。魚類や両生類や爬虫類はそれができないため、基本的に外部の温度と体温が同じになる。いかなる環境下でも体温を36-38℃に保つメリット、それは多くのタンパク質の活性に最適な温度だということ。タンパク質は筋肉の構成成分であるが、体内では36-38℃くらいが最も筋肉が動きやすい温度である。また、生命の維持に欠かせない物質の合成分解を触媒*8する酵素もタンパク質である。つまり、体温が常に36-38℃であることはヒトの生命維持に都合がいいのだ。なお、細菌などもタンパク質で構成され、酵素に触媒される化学反応によって生命を維持しているため、細菌にとっても都合がいい環境となってしまっている。そのため、風邪を引くと体温を上げ、体内を滅菌しようとする。
5、血栓
先述のフィブリンと凝固因子によって血小板が作る栓。これによって止血が完了…はしてないが一次止血は終了する。なお、解説テロップ中にもあるように実際の血栓は、フィブリノーゲンの網同士に血小板も結合する形で大きなフィブリンの網を作ることで形成される。また、解説テロップに書かれている「フォンヴィレブランド因子」は血管内皮細胞が損傷を受けると分泌される仕組みになっており、損傷を受けた血管内皮中のコラーゲンに結合するとともに血液中の血小板とも結合し、血栓を作ることに貢献する。
6、かさぶた
本編を見ればわかるように血栓による一次止血からさらに、フィブリンで赤血球などを巻き込んでできる厚めの層、それがかさぶたの正体なのである。ちなみに、食作用で名誉ある自爆攻撃を成し遂げた白血球の死骸が黄色や白の液体として出てくることがあり、それが膿の正体である。
かさぶたは皮膚が再生するまで血を止めており、皮膚が再生すると自然に剥がれるが、どうしても気になって触ったり剥がしたくなるのが人間の性…でもそうするとまた流血するので先述の作用で止血して…の無限ループ、となってしまう。
あれ?かさぶた剥がされたら主人公の赤血球どっか行っちゃうんじゃね?というより、乾燥した時点で赤血球死んでない?てことは主人公死んで打ち切りエンドじゃない?ということは、この記事もここで連載終了じゃない?
2-3、3話
1、インフルエンザウイルス
ウィルスは細菌と異なり、DNAとそれを包むタンパク質しかない。そのため、細胞なのか、ひいては、生物なのか、が未だに議論されている。そのため、大腸菌が約1μmなのに対して、インフルエンザウイルスは0.1μmと細菌と比べても非常に小さい。また、ウィルスは生きた細胞の内部でしか増殖できないという性質もある。
2、成熟樹状細胞
詳しくは1話の6番を…と言いたいところだが、樹状細胞は抗原の取り込み+情報提示以外にもう一つ仕事があり、それがT細胞の活性化である。抗原を取り込んだ樹状細胞はリンパ管内部に移動し、抗原の情報をヘルパーT細胞に伝えるとともに、T細胞の活性化を行う。なお、樹状細胞の末梢部分にあり、抗原を取り込む作用を持つ若い樹状細胞を未熟樹状細胞といい、T細胞を活性化する能力を持つ代わりに抗原を取り込む作用を失っている比較的老いた細胞を成熟樹状細胞と呼ぶ。どの会社でも若い頃は現場立たされるが、昇格すればするほど現場からは遠ざかってしまうみたいなことである。
なお、エフェクターT細胞はキラーT細胞とヘルパーT細胞の総称である。
3、細胞性免疫
1話同様、3話でも細胞性免疫が主体となっている。ただし、マクロファージ(本編を見ればわかるように抗原の殺傷能力の他に、ヘルパーT細胞へ抗原の情報を伝える能力を持つ白血球)や、メモリーT細胞(詳しくは1話の方に書いたが、一度侵入した抗原のことを覚えているキラーT細胞のこと。ちなみに一つのメモリーT細胞は一種類の抗原しか記憶できない)が出演するなど、解説はより詳しくなっている。
ところで、メモリーT細胞がいるということは、過去にもインフルエンザウイルスに感染した、すなわち予防接種のワクチン*9を受けているのであろう。いいことです。
4、体液性免疫
マクロファージや樹状細胞が抗原を認識するとヘルパーT細胞へ抗原の情報が行く。ここまでは細胞性免疫と同じだが、ヘルパーT細胞はB細胞という別な細胞にも情報を伝える(インターロイキンの放出ともいう)。するとB細胞は抗体という抗原に特異的に付着して攻撃するタンパク質を生産するようになる。この免疫系は細胞が直接抗原を攻撃するのではなく、体液中に放出された抗体が抗原を攻撃するので「体液性免疫」と呼ばれる。体液性免疫でも、B細胞が一度受けた抗原の情報を記憶して、同じ抗原にはめっぽう強くなる、というのは細胞性免疫と同じである。
5、くしゃみや咳、体温上昇
くしゃみについては、詳しくは1話の12番参照。体温上昇については詳しくは2話の4番参照。
6、エクリン腺
テロップにもある通り、ヒトが汗をかく理由は、水の蒸発熱に体温を吸収させることによる体温調節および、老廃物や過剰な塩分の排出である。
汗をためて、適宜放出する器官を汗腺と呼ぶが、汗腺には、汗を放出する時に腺細胞が崩壊しないエクリン腺と汗を放出する時に腺細胞が全壊するホロクリン腺、そして汗を放出する時に腺細胞の一部が崩壊するアポクリン腺がある。哺乳類に多いのはアポクリン腺だが、ヒトは例外的にエクリン腺が多い。ただし、ヒトでも脇の下や外耳道、鼻や乳輪、肛門などにはアポクリン腺が存在する。
7、謎のパン工場
3話終盤に出てきた工場。このアニメでは血液が運ぶ栄養分をバケットで表しがちであるため、それを生産する臓器である可能性が高い。
個人的にはこの工場は肝臓(ブドウ糖を脱水縮合させてグリコーゲンにすることで貯蔵し、エネルギー不足の際はグリコーゲンを分解する器官)という説を推したい。
2-4:4話
1、胃
3話でも食欲減衰*10のシーンでチラッと出演している。
作中では、消化の第一段階が行われる、とされているが、実際は唾液も消化液であるため、口こそが食べ物が最初に入る消化器官という説の方がメジャー…なはず。ただし、タンパク質を最初に消化する臓器であることは間違いなく、ペプシンという酵素がペプトンという物質に分解される。また、ペプシンの最適pHを保つため胃からは塩酸も放出されるため、ゲロは常に少し酸っぱい。
そして、胃もタンパク質であるため、胃自体が消化されないように胃の内部には胃粘膜という膜が張られている。
なお、胃ではタンパク質の分解しか行われず、ペプトンも分解の終点ではない。
2、骨髄
骨髄とは骨の内部であり、リン酸カルシウムを多く含む、人体の形を保持する働きがある…と同時に、赤血球、白血球、血小板、全ての血球の生みの親として造血幹細胞を産生する(白血球の場合、分化成熟する器官はリンパ管)。
なお、骨髄のうち血球の生成が盛んな部分は赤色骨髄と呼ばれる。赤色骨髄は年齢とともに減少し、黄色骨髄となってしまう。
3、上腸間膜動脈
ここは上腸間膜動脈かは不明だが、小腸や大腸に分かれる大元の血管の名前が上腸間膜動脈であるため、おそらくそこが聖地だと推定。小腸は消化が終わった三大栄養素*11を血管(脂肪酸&グリセリンのみリンパ管)に吸収させる機関である*12小腸を経た血管は肝臓へ伸びており、その血管を肝門脈という。
4、マスト細胞(肥満細胞)
IgEが過剰に存在するとヒスタミンなどを放出する細胞。IgEはグロブリンという抗体(3話参照)に含まれているタンパク質の一種であり、間接的ではあるが抗原に反応する細胞といえる。ヒスタミンは血管拡張、腺分泌促進、炎症の生成などの作用を持つため、抗原の排出に一役買っているが、アレルギーの原因にもなる。アレルギーについては5話で詳しくやるようだが…。
本編でも言われていたように、名前の由来は「細胞自体が肥満して見えるから」なので体型の肥満とは関係がない。
5、好塩基球
白血球の一種。先述のIgEが付着した抗原に反応して、ヒスタミンなどを放出するため、アレルギー発生の一端を担っている。
6、腸炎ビブリオ
好塩性(好塩基性ではない)細菌の一種。好塩性、つまり塩化ナトリウム存在下でしか生育できないため、海水魚*13中にのみ寄生する。分裂速度は大腸菌の2-3倍と速く、指数関数的に増加するので実際の増殖速度はかなり速い。
体内の細胞膜に穴を開けて溶血(1話参照)させる毒素を放出して体内を攻撃するため、食品中ではなく体内に侵入してから毒素を増やす。
日本ではトップクラスの食中毒原因菌である一方、熱に弱いため魚を生食しない欧米での症例はあまりなかった。また、魚を真水でよく洗う、という対策もある。
7、食道
口と胃をつなぐ管。食べ物の通り道ではあるが、消化液の分泌は行われない。もちろんゲロの通り道でもある。
先述のように胃は胃酸によって溶けないように胃粘膜による防御がなされているが、食道にそんな防御はない。そのため、食べ過ぎ飲み過ぎによってゲロ吐き過ぎ胃から逆流させ過ぎになると食道が溶けて荒れる。それが逆流性食道炎である。
8、アニサキスと好酸球
アニサキスはニュースやDJ YOSHITAKAの曲として話題になった寄生虫。大きさは2-3cmと細菌よりはるかに大きく、きちんと確認すれば肉眼での視認及び除去は可能な一方、ヒトの歯では簡単に噛み砕かれず、酢漬けにしたり胃に到達して胃酸を分泌されても死なないというしたたかな防御力も持つ*14。体内に入ると内側から胃腸に噛みつき、胃壁腸壁を噛み砕くことで、ものすごい腹の痛みを与えるというパワー系の寄生虫。今回のように最悪の場合食い破られ、そのまま死に至ることもある。
好酸球は食作用は弱いが、肥満細胞により活性化されると、寄生虫などに対して強い攻撃能力を示すようになる。また、ヒスタミンを不活性化してアレルギー反応を抑える能力も持つ。
白血球のうち好酸球はたかだか1%前後だが、寄生虫などの外部抗原が侵入すると増加する。裏を返すと、血液検査して好酸球が多かった場合、体内にはそういうヤバい奴がいる。
2-5:5話
1、スギ花粉
花には風媒花と虫媒花がある。花が実を結び種を作り、子孫を残すために欠かせない過程である受粉、おしべから放出された花粉をめしべへ飛ばすアノ受粉において、風に花粉を運ばせる花を風媒花、虫に花粉を運ばせる花を虫媒花と呼ぶ。
虫媒花は虫を引き寄せるために、花弁が派手であったり、甘い匂いや味のする蜜を分泌したりしているが、運ばれる確実性が風媒花より高いため、花粉の生成量は少ない。
一方、風媒花は花弁が発達せず、地味で、デザイン性も皆無、さらに蜜も分泌しないが、運ばれる確実性が低いため多量の花粉を放出する。そしてそれが人間の文明まで飛んでくると花粉症の原因となる。
日本は、戦後すぐに木材を大量に必要としたため、木材として質の良い木である杉を日本全土に大量に植林したが、杉が成長した頃には安価な外国産木材やプラスチックのような代替原料により使い道がなくなり、後には杉山だけが残ったという政策の失敗がある。そのため、日本は花粉症の人が多い。
2、眼球粘膜と涙腺
眼球は俗に言う「目玉」のこと。眼球の表面は粘液に覆われた粘膜が張ってある(触って確かめるのはやめようね)。この粘膜には眼球表面に付着した埃などから眼球を防御する働きがある。また、まばたきも眼球への埃などの付着を防いだり、眼球に付着した埃を除去する効果がある。まばたきは1分間に10回程度起こり、1回のまばたきの速さは0.1秒程度。
なお、粘液によっても流しきれない埃は眼球の上にある涙腺から涙を分泌して洗い流す。
3、網膜
眼球粘膜と、眼球を通してちょうど裏側に位置する膜。眼球に入ってきた光が当たる部分であり、目に映った像が最初に映るという、カメラでいうとフィルムに当たる部分である。そのため網膜がなくなると目が見えなくなる…が、事故や糖尿病などが原因で剥離することはある…。
4、食作用
5話まで出てこなかったのが不思議なくらいな、白血球のメインウェポン。現実的に考えたら白血球がナイフ振り回してるはずがないんだわな。というわけで、白血球は抗原を認識すると、アメーバがエサを食べるように取り込む。これを食作用と呼ぶが、食作用は攻撃だけでなく、ヘルパーT細胞への情報伝達も兼ねている。なお、実際の白血球は食作用を起こすと死ぬ。
5、記憶細胞
詳しくは1話の3番や3話の8番を参照…と言いたいところだが、メモリーT細胞とは名称のみならず、見た目も違うため、メモリーB細胞の方である可能性がある。B細胞は抗体を放出することで抗原を攻撃する細胞。実際、花粉症を含むⅠ型アレルギー*15は抗原(と認識してしまった物質)に抗体が付着すると、抗体に含まれるIgEというタンパク質に反応して、好塩基球(4話の5番参照)がヒスタミンを放出するためにおこる症状であり、体液性免疫が深く関わっている。
6、B細胞
詳しくは3話の4番参照。
7、ヒスタミン
詳しくは4話の4番5番を参照。
8、鼻粘膜とくしゃみ
くしゃみはヒスタミンの登場により、解説が深化しているが、根本的には1話12番で登場したくしゃみと一緒。場所が気道粘膜から鼻粘膜に変わっているが、鼻の穴から見てより手前ということ以外、仕組みはだいたい同じだ。
鼻は口同様呼吸器であるため異物を吸い込みやすい。そこで鼻は鼻粘膜の他に鼻毛を内部の壁から生えさせる、鼻水を出して押し流す、といった方法で異物を押し流す。コショウを吸うとくしゃみが出るのはそのせい。
9、ステロイド
本編では人体に投与された化学薬品…だからロボットで描かれているのだろうが、実際は人体でも近しい物質は分泌されている。ステロイドは遺伝子に作用するため、部位に特異的に効果を持つのではなく、幅広い部位で活躍する抗アレルギー・抗炎症剤である。
ただし、リンパ球の走性*16を抑えるなど、免疫を弱体化させる薬剤でもあるため、飲みすぎたり、体内にウィルスや細菌が侵入している時に飲んだりすると副作用をもたらすこととなってしまう。
2-6:6話
1、骨髄
詳しくは4話の2番を参照しよう!
2、前駆細胞と分化
前駆細胞は、赤血球、白血球、血小板に分化する前の細胞である。なお、アニメ本編に「分化」の解説はない。しろよ。
というわけで、分化とは、ある細胞が働きを持ち、ある器官として働きを持つことである。赤血球、白血球、血小板は働きも構造も全然違うが、同じ前駆細胞から生まれた細胞なのだ。もっと言えば、ヒト*17の細胞は元々たった一つの卵子である。卵子が細胞分裂を経て、様々な働きを持つように器官の構成部分となる。髪の毛も手足も胃も骨も元をたどれば一つの細胞である。それが分化だ。
分化は、細胞中のDNAのうち、どの部分を翻訳するかによって調節されている。そのため、一度分化した体の一部を未分化にすることができ、そこから別の器官に分化させることができる*18、という研究が進んでいる。
3、脱核
先述の分化の一つ(1話1番でも書いたように白血球や一般的なヒトの細胞は核があるので)で、赤血球の分化の中で最後に起きるのが脱核である。核を脱するのが脱核です、ハイ終わり。
4、造血幹細胞
アニメでは前駆細胞の母親のように描かれているが、実際は前駆細胞よりさらに未分化の細胞である。リンパ球は前駆細胞を経ずに分化するため、赤血球、白血球、血小板だけでなく、リンパ球に分化する可能性を秘めている。
5、緑膿菌
緑膿菌は常在菌(2話3番を参照)の一種。敗血病をはじめとする様々な重篤な病気の原因菌であるが、人並みに免疫が働いている人であればその症状が出ることはない。AIDSで免疫力が下がっている場合はヤバい。
今回のように、骨髄に悪い菌が入ると、骨髄が炎症を起こすし、血球の分化生成にも悪影響を及ぼす。これを骨髄炎と呼ぶ。骨髄炎の主な原因は骨折、血行障害である。
6、ナチュラルキラー細胞
ナチュラルキラー細胞は、体液性免疫(3話の4番参照)や細胞性免疫(1話の8番参照)とは異なり、ヘルパーT細胞の情報を受け取ることなく、抗原を攻撃できる細胞。当然だが、前述の2種の免疫機構以上に素早い初期攻撃が可能である。
ヘルパーT細胞は「抗原提示細胞がMHCクラスI分子を抗原に付着させるので、MHCクラスI分子の濃度が高いものを抗原として情報を得る」という機構を取るのに対し、ナチュラルキラー細胞は「MHCクラスI分子の濃度が自己の細胞より低いものを非自己と認識する」という機構を取るという、相補性の関係にある。
2-7:7話
1、腎臓
公言はされていないが、人体において「不用品回収」と言えば腎臓である。詳しくは1話の5番を参照しよう!
2、がん細胞
日本人の死因ランキング1位に君臨し続け、24時間TVや金スマの視聴者にはすっかりお馴染みの病気、それが癌である。癌はウィルスや細菌が起こす様々な病気と異なり、通常の細胞が細胞分裂するときのコピーミスから発生する。通常の細胞より高速かつ際限なく増殖することで腫瘍を作り、様々な臓器の障害を引き起こすほか、本編でもあるように栄養分を多く消費して体内のバランスを崩す。
また、元々が通常の細胞であるため、通常の細胞を攻撃せずにがん細胞だけ攻撃する薬剤の製作が難しく、抗ガン剤には髪が抜けるなどの大きな副作用が伴う。
3、細胞膜
細胞が持つ膜であり、細胞同士の境界線として全ての細胞が持つ。主成分はリン脂質という親水性の高い部分と親油性の高い部分(親水性の低い部分、ともいう)を持つ物質であり、細胞外の水分に親水性を示しながら、細胞外の水分を遮断して境界を引くことができる。
細胞膜は「選択的透過性」という性質を持つ。選択的透過性とは通常の半透性である「膜に細かい孔が開いているので、水分子などの小さい分子は通すが糖などの大きい分子は通さない」という性質と別に、ポンプやチャネルと呼ばれる、特定の物質を選択的に通す孔を持ち、糖及びナトリウムやカリウムのイオンなど細胞に必要な物質を通す性質のことである。
4、体液性免疫
詳しくは3話の4番を参照しよう!
5、笑いとNK細胞
笑うことによる免疫力の増強、というのは近年よく言われる研究結果だ。笑うとNK細胞が活性化され、インターロイキン(3話の4番を参照)の量も増えるのだという。一部の病院では笑うことでガン予防をするセミナーをやっているところがあるとかないとか。
そうそう、笑いといえば9月22日(土)の18:55からTVS系でキングオブコント決勝戦が放送されるぞ!誰が決勝進出したかはわからないが、とにかく笑えるはずなので、みんなも見てNK細胞を活性化しよう!
2-8:8話
1、ブドウ糖とミトコンドリア
一般に脳を活性化できるお菓子として知られるブドウ糖、またの名をグルコース。グルコース分子が多く繋がったものがデンプンであり、摂取したデンプンを消化するとグルコースになり、そのグルコースがエネルギーとなるが、デンプンを摂取するよりグルコースを摂取した方が素早くエネルギー源となるのは言うまでもない。
赤血球がグルコースのみをエネルギー源とする理由が「ミトコンドリアがないから」というのは少し間違いな気もする(細胞には一般にグルコースの状態で糖が届き、細胞単位で呼吸によってエネルギーを作っている機関であるミトコンドリアなしでの呼吸もグルコースから始まっている呼吸だから)が、赤血球はヘモグロビンによる酸素との結合機能以外の機構をほぼ全て捨てている、というのは事実である。
2、静脈弁
詳しくは1話の2番を参照しよう!
3、下大静脈
心臓より下部の老廃物や二酸化炭素を一手に担う静脈。もちろんヒトの身体のなかで最も大きい静脈である。
4、肺循環と体循環
血液循環のうち、心臓→肺→心臓の循環を肺循環、心臓→体→心臓の循環を体循環と呼ぶ。詳しくは後述。
なお、この画像の4隅に描かれているのは擬人化する前の赤血球である。世界観がわからん…。
5、心臓
ご存知、ヒト(ヒトに限らず)の生命維持に最も大事な臓器。ナイフで一突きされると死ぬ。
心臓はヒト(ヒトに限らず)の長い血管の中で唯一のポンプ。心筋という一生疲れない特殊な筋肉によって構成されている。
なお、本編に出てくる心臓の図だが、前から見た心臓の図なので向かって左が右心房(右心室)である。心臓の循環も一方向なので弁が付いているが、これらの弁の名前一つ一つまでは高校生物では習わない。でも僧帽弁は勇者ああああのクイズマジックアカデミーでクイズする回で見たぞ…。
6、右心房
血液循環は文字通り循環なのでどこが起点とかはない。本編では下大静脈を起点としている。まず、大静脈から右心房に血液が入る。
7、三尖弁
右心房と右心室の間にある弁で、右心室から右心房へ逆流する現象を防ぐための弁。3枚の弁からなる。きちんと閉じることができる弁なのが静脈弁にない特徴で、右心室が収縮して血液が送り出されるときは閉じて、右心房が収縮して右心室へ血液が送り出されるときは開く。
8、右心室と静脈血
血管が入ってくる心臓の部位が心房だが、逆に心臓から血液を放出する部位が心室である。テロップの日本語が少しおかしいが、右心室は静脈血で満たされている。静脈血とは二酸化炭素や老廃物を多く含む血液のこと。逆に酸素や栄養分を多く含む血液を動脈血という。一般に動脈血の方が静脈血より鮮やかに赤い。
さて、動脈血は動脈にしか含まれず、静脈血は静脈にしか含まれない、というと実はそれは間違いで…。
9、肺動脈
心臓から肺へ向かう血管。心臓から出ている血管は動脈だが、含んでいる血液は静脈血である。ここにネーミングの矛盾があり、よく中学生物で狙われる。また、「血管のうち最も二酸化炭素を含む部分は?」に対する解答としても登場する。
10、肺胞
詳しくは1話の10番を参照しよう。
11、肺静脈
肺で酸素を得た赤血球が心臓に戻るための血管。心臓へ向かう血管は静脈だが、含んでいる血液は二酸化炭素が少なく、酸素が多い動脈血である。ここにネーミングの矛盾があり、よく中学生物で狙われる。また、「血管のうち最も酸素を含む部分は?」に対する解答としても登場する。
12、左心室と大動脈
肺静脈→左心房→僧帽弁→左心室→大動脈、の経路は思いっきり編集によりカットされている。左心室は全身に血液を送り込むため、右心室以上に心筋が発達しており、心臓の中でもひときわ壁(筋肉)が厚くなっている。なので、血液の流速も速くなる。
大動脈は心臓から体の様々な部位へ伸びて酸素や栄養素を供給する血管であり、もちろんネーミングの通り動脈血が流れている。
なお、余談だが爬虫類は左心室と右心室の仕切りが不完全であり、両生類に至ってはその仕切りが一切ない。そのため、動脈血と静脈血が混ざった状態でガスや栄養素と老廃物の交換を行なっており、効率が悪い。
13、毛細血管
1話の10番でも解説しているが、毛細血管とは毛細な血管である。ヒトの身体の隅々まで酸素や養分を行き渡らせるために極限まで細い血管が手足の指先などに張り巡らされている。血液はここで細胞に酸素や栄養分を渡し、代わりに老廃物や二酸化炭素をもらう。そして、動脈血から静脈血となった血液は大静脈へ合流し、心臓へ向かっていくのである。
2-9:9話
1、T細胞(制御性T細胞は除く)
キラーT細胞(上写真)とヘルパーT細胞(下写真)については1話の8番を参照しよう!
ナイーブT細胞(中写真)については3話の2番を参照しよう!
2、制御性T細胞
T細胞の暴走、T細胞がすなわち自己細胞を攻撃してしまうことを抑える細胞が制御性T細胞である。なお、制御性T細胞がT細胞の暴走を抑える機構は未だよくわかっていないらしい。なんじゃそら。
3、樹状細胞
詳しくは、3話の2番と1話の6番を参照しよう!
4、胸腺とその皮質
心臓付近に位置するリンパ器官。T細胞の分化形成は皮質(外側)で行われ、分化が終わったT細胞は髄質(内部)に貯蔵される。
また、マクロファージや樹状細胞も胸腺にあり、細胞性免疫において重要な器官であると言える。
5、正の選択負の選択
本編にもあったように、T細胞が自己の細胞を攻撃せずに外部から侵入した抗原のみを選別して攻撃できるかを確かめる「正の選択負の選択」も胸腺上皮細胞の大事な役割だ。T細胞は主要組織適合遺伝子複合体(MHCと略す。以下、MHC)という分子を手掛かりに抗原を攻撃する。MHCはMHC分子という糖タンパク質が細胞内にある時のみ発現するDNA領域で、MHC分子は細胞にウィルスやがんが感染すると生成される。MHCが発現すると、細胞膜表面にペプチド*19が生成され、そのペプチドをT細胞が認識すると、その細胞が抗原と認められ、そして攻撃される。
…という風にMHC由来のペプチドを見抜いて攻撃できるかを試すのが正の選択負の選択である。
6、尿管
腎臓と膀胱をつなぐ管。なぜ、そんなところに未分化のT細胞がいるかは不明。
おしっこが黄色い理由は実は赤血球に由来している。1話の3番で話したように、赤血球は古くなると脾臓に破壊されてしまう。赤血球が赤い原因かつ酸素を運べる理由となっている成分といえばヘモグロビンだが、このヘモグロビンは脾臓で赤血球破壊の時に分解されるとビリルビンという日馬富士の武器のような分子になる。このビリルビンは黄色だが、実際に尿として出るのはビリルビンではなく、肝臓でのさらなる分解後に小腸に送り込まれて、腸内細菌による分解を経て生成されたウロビリノーゲンという成分である。
2-10:10話
1、肺胞
詳しくは1話の10番を参照しよう!
2、肺静脈
詳しくは8話の11番を参照しよう!
3、行き止まり
残念だが、血管にこんなところはない(どんなに末端でも心臓への帰り道である静脈を経て循環できる道が確保されているので)
4、単球とマクロファージ
単球は白血球の一種。半数が脾臓に貯蔵されているが、もう半数は血管中を移動し、好中球などより迅速に抗原に移動と攻撃ができる白血球である。また、マクロファージや樹状細胞に分化できるため、それら、特にマクロファージの予備という意味合いも強い。
5、鼻腔
鼻の穴入ってすぐのところ。さわるメイドインワリオの最後のボスゲームの聖地でもある。呼吸器の入り口であり、吸気の加湿によって肺に到達する前に異物を止めやすくしたり、肺胞を乾燥から保護したりするほか、鼻毛によっても異物の混入を止める器官である。また、樹状細胞(1話の6番を参照)もある。
6、黄色ブドウ球菌
詳しくは2話の3番を参照しよう!
ちなみにこれは、キングオブコントの決勝に進出した黄色ブドウ球菌。
黄色ブドウ球菌を含め、多くの菌類細菌類は分裂によって増殖する。家系図を見てもわかるように、分裂は1個体からできる(ヒトのような有性生殖は2個体必要)のが特徴だが、いわゆるコピーなので突然変異が起きない限り画像の黄色ブドウ球菌は全て同じDNAの組成で同じ形質である。
7、コアグラーゼ
まず、フィブリンは2話の1番を参照しよう!
コアグラーゼはフィブリンを形成する酵素であるトロンビンを活性化して、フィブリノーゲンをフィブリンに変え、防御力を高めるという黄色ブドウ球菌に含まれる酵素である。トロンビン、フィブリノーゲンも2話の1番を参照。
(多分続きます)